821 試作2号機に乗って死にかける
皆の期待を一身に背負い、レジェンドガチャに挑戦したパメラだったが、結果はまさかの超絶大当たり。
虹カプセルから出てきたのは『空飛ぶバイク』だった。
しかしそこで終わらないのが真のギャンブラー。勝利の美酒に酔いしれるのではなく、今が攻め時と貪欲に大勝ちを狙うのだ!
ラスト1個の特大魔石を投入し、それはきっとあると心から信じ、俺は連チャンを狙った。
結果は銀!
カードにアクセサリーと書かれているのを見た時はショックだったが、MPが30%も増えるとんでもない指輪をゲットした。
いや~、ガチャでこれほど興奮したのは、初めてガチャを回した時以来かもしれないな。やはり連チャンはあったのだ!虹が続いたわけではないけど、レア→レアと続いたのだから大成功だろう。
こうしてレジェンド祭りも無事終わり、空飛ぶバイクに乗ってみようって話になったんだけど、初心者が夜に駆けるなど無謀すぎて冗談抜きで死んでしまうので、翌日早起きして試運転することになった。
もちろんガチャを見ていた殆どの人が興味津々だったので、ダンジョン疲れで深い眠りについていた子供達とマリアナ以外の全員がゴーレム場に集まった。
もう一度バイクを鑑定してみる。
[バイク(試作2号機)]
:空飛ぶバイク。評価SSS
:素材は不明。
:衝撃耐性++ 魔法耐性++ 炎耐性++ 熱耐性++ 冷気耐性++
:自動修復(強) 防水機能 雷耐性++ 汚れ耐性+++
「説明不足にもほどがあるだろ!!」
「マニュアルがあったとしても相当難しそうなのに、ぶっつけ本番で飛べとか鬼すぎるな」
「少なくともバイクを運転したことがないと、こんなん絶対無理じゃね?」
「操作を誤って空から落ちたら死ぬのではないか?」
「いくら何でも怖すぎじゃん!」
「どうするの?」
「こがにゃんにゃら大丈夫にゃ!」
「小烏丸ならいざとなったら転移が使えるし、人柱になってもらうしかないわね」
さすがにこれは、時空魔法が使える俺か虎徹さんが乗るしかないだろな~。
つーか北海道組のバイクなんだから、俺がやるしかない。
「人柱?上等だ!」
試作2号機に跨った。
足の置き場がいつものバイクと全然違っているので、いきなり大混乱だ。
ステップが無いどころか平らで、しかも操縦に深く関わっている感じなんだよ。
車のアクセルペダルというか、エレクトーンのペダルのような長方形に右足を乗せると、つま先部分を沈み込ませたり浮かせたり出来る事が分かった。当然何に使うのかさっぱり分からん!とりあえずコレは放っておこう。
ハンドルは普通のバイクと一緒かな?
ブレーキレバーは普通にあるが、クラッチは無いっぽい。
スターターがあったのでポチってみた。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ん?静かすぎるけど、もうこれでエンジンかかってるのか?
「あっ!魔石入れるの忘れてた!」
「何悩んでるのかと思ったら魔石かよ」
「たぶん給油口んとこでね?」
虎徹さんの言う通りの位置にそれっぽいのがあったので、奮発してデカい魔石をぶち込んだ。っていうか空から落ちるの嫌だから、小さい魔石じゃ怖すぎる。
再びスターターをポチッ。
ヴォン!
「「おおっ!!」」
起動しましたよ!って知らせるような感じで良い音が鳴った。
でもって今は、小さく『フィーーン』『フィーーン』と未来チックな音が聞こえるんだけど、かなり静かになった。
「なんか鳴ってるけど、これなら気にならない感じかな」
「未来マシーンって感じだな」
「UFOじゃん!」
「さてさて、どうやって浮かせるんだろ?」
右足のペダルをグニャグニャやってたら、内側に小さな正方形があるのを発見したので、それを右足でぶっ叩いてみた。
ドシューーーーーーーーーー!
その瞬間、バイクの下から土埃が舞い、真上にぶっ飛んだ!
「うおおおおおあああぁぁぁーーーーーーーーーー!!」
驚いて急ブレーキをかけると、試作2号機の上昇は止まったが、俺の身体が空中に投げ出された。
「どわああああああああああーーーーーーーーーー!!」
おいマジか!死ぬ!これマジで死ぬ!
「転移!」
シュッ
慌てて試作2号機の上に転移し、何とか事なきを得た。
ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ
驚きすぎて心臓がバックンバックンいってる。
「冗談じゃねえぞ・・・。これ俺と虎徹さん以外の人が運転したら死ぬだろ」
女神様!こんなん絶対マニュアル必要ですってば!!
せめてシートベルトでも無いと死人続出ですぞーーーーー!
そう考えてからシート周りを確認してみる。
・・・ありました。シートベルト。
俺の不注意じゃないかーーーい!女神様スミマセンでした!
いや、でもやっぱりマニュアルは必要だと思いますよ?
しかし無いモノはしょうがないので、命懸けで色々やってみる事にした。
アクセルを少し開けてみると、なぜか真上に進んだ。
そこで右足のペダルが上を向いている事に気付く。
「そうか!高度を変えるペダルだったんだ!」
だからいきなり真上にぶっ飛んだんだ・・・。内側の謎の正方形を強くぶっ叩いたのも失敗だったくせえ。もっと慎重にいこう。
高度を変えながらアクセルを回し、なんとか真っ直ぐ前に進めるようになった。
そしてかなりの速度が出ることが分かった。
やたらと格好良いカウルが良い仕事をしてくれていて風は問題無いが、雨が降ったらどんな感じなんだろな・・・。地上を走るのとは違うと思うんで、雨天の日も試運転してみた方がいいだろう。
ようやく思った通りに操縦出来るようになってきたので、ゴーレム場目指してバイクを走らせた。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
うん。
空にいると、自分の居場所がさっぱり分からなくなりますな。
でも俺にはミスフィートさんの居場所が何となく分かるという特技があるので、彼女の温もりと息づかいを感じ取り、ゴーレム場に戻って来ることが出来た。
高度と速度を下げ、何とか着陸に成功。
「おい!お前空中に投げ出されたよな!?」
「大丈夫だったのか?」
「転移が無ければ即死だった」
「「ぶはっ!!」」
「マジかよこがっち!そんなの怖くて乗れねーじゃん!」
「ウチもこのバイクは危にゃい気がするにゃ」
「ニャルルが危険を感じるなんて、本当に危険だよ!」
「小烏丸の後ろに乗るのはダメ?」
二人乗りか~。それならまあ・・・。
「もう少し離陸と着陸の訓練をしてからならいいぞ!今はまだ二人乗りでも危ない気がする」
「バイク操作には自信あるんだが、俺でもヤバそうか?」
「転移持ちじゃないとオススメできませんね。バイクに乗るのが上手いとか関係なしに、足のペダルが意味不明なせいで死にかけましたから」
「オレと二人乗りすりゃ大丈夫じゃね?1回乗ったらもう満足だから、ちょっとだけ貸してくれ。10分でいいから!」
「虎徹さんが一緒ならいいですよ。では分かったことを教えます」
「感謝するぞ!」
足のペダル操作なんかを教えた後、死にたくなかったらシートベルトを着用した方がいいと伝え、二人を空へ送り出した。
結局、清光さんが前で虎徹さんが後ろになり、いきなり凄い速度で斜め前方にふっ飛んでいったけど、シートベルトを着用していたおかげで空中に投げ出されずに済んだようで、良い笑顔で帰って来た。
「空を走るのも悪くねーな!俺はどちらかと言えば地上を走る方が好きだが」
「シートベルト超重要じゃん!アレ着けてなきゃ余裕で死ねる」
「着陸でミスっても死にそうだから、気合入れて訓練しないとな~」
よし、とりあえずバイクマニアを満足させたんで、あとはウチの嫁軍団とゆっくり空のタンデムを楽しめそうだ。
ただ俺のテクに不安がありすぎるから、後ろに乗せるのは、もう少し上手くなるまで待ってもらおう。




