816 バトルロイヤル
清光さんとゼーレネイマスが、ファンネルーを習得するために毎日頑張っているわけだが、今は先駆者である俺と虎徹さんが有利な状況だ。
正直俺はこのアドバンテージを生かそうと考えていたのだが、対戦ルールを虎徹さんと二人で話し合っているうちに考えが変わった。
同じ条件で戦わないと、勝っても嬉しくない事に気付いたのだ。
というわけで戦闘訓練するのは止め、あの二人がファンネルーとリフレクションシールドをマスターするまでは、人形を今以上の性能にするに留める。
もちろん新技を編み出すとまた差が開いてしまうので、発表会もしばらく中止する事になった。
俺も虎徹さんも疲れていたので、歯止めをかけるにはいい機会だったかも?
そしてようやく天気も良くなり遠足が再開された。発表会のプレッシャーが無くなったので、俺と虎徹さんはお人形遊びしてるだけって感じだが。
ただ清光さんとゼーレネイマスの人形はほとんど完成していたようなもんだったから、それから間もなく空に10体浮かぶようになり、人形から魔法を撃てるようになるまで数日程度しか掛からなかった。
「しかしリフレクションシールドの完成までは少し時間が掛かるだろう。こっちは時空魔法の使い手じゃないんでな」
「うむ。あの技を再現するには一工夫いる」
「だがファンネルーはマスターした!そこの二人、俺と勝負しろ!」
「お、やるんか!?受けて立つぞ!」
「勝負するのはいいですけど、こっちは使いますよ?」
「ガンガン使って構わん。リフレクションシールド有りと無しの差を知る為に、今の段階で一度勝負してみたいんだ」
「一理あるな。面白い、吾輩も参加しよう」
「参加人数は四人か。シャアリバーンと決めたルールで問題無いよな?」
「説明してくれ」
普通なら一対一の勝負を二回やって、その勝者二人で決勝戦をするのだろうけど、ファンネルー戦はMPをバカ食いするのだ。そのやり方ではMPが尽きて決勝戦は不戦敗なんて感じになってしまうだろう。
そこで考えたのが、バトルロイヤルだ。
見える全てが敵なので、一瞬でも気を抜いたら矢を射られて負ける戦場のようなヒリついた空気を味わう事ができるのですよ!
場合によっては一対三って状況にもなってしまうが、三人に狙われた時点で強者だと思われたって事だから、それで負けたとしても誇らしいんじゃないかな?
ちなみに『バトルロワイヤル』は、ロイヤルとロワイアルが混ざった誤字だと思われるので気を付けろ!バトルロワイアルにしても、英語とフランス語が混ざっておかしな事になってるしな。気にしたら負けなんだろうけど。
とにかくバトルロイヤルって言っとけば間違いないから!
んでもって、身体に一発でも攻撃をもらったら負けって事にした。
剣で斬られても魔法が直撃してもアウトだ。
仲間内で遊んでて怪我しちゃ馬鹿みたいだからな。
メタルヒーロー達はレーザーソードを光らせないで使用すること。
ゼーレネイマスには骨剣で戦ってもらう。
それくらいの攻撃力ならばメタルヒーロー達のコンバットスーツを破壊できないだろうし、ゼーレネイマスの強化された鎧も傷付けられないハズだ。
そして最後にもう一つ。
二人生き残って膠着状態になったら同時優勝ってことにした。
MPが枯渇したら何も出来なくなってしまうからだ。
年一回の武術大会でもあるまいし、最優秀選手を決める必要が無いのですよ。
MPが枯渇して一日を無駄にする方が辛いのだ!
「バトルロイヤルか!熱そうだな!」
「即ち複数人での乱戦なのだな?面白い!」
「攻撃をくらったら全員に見えるよう、白い球を浮かべてくれ」
「説明はこんなもんかな?」
話を聞いて目をキラキラさせていたケンちゃん達に、今からバトルロイヤルを始めるから魔法が飛んで来て危ないぞと伝えたのだが、こんなの絶対見逃せないと言うので、魔法が飛んで来ても回避できる位置まで離れてもらった。
激戦になるのは確実だし、見たい気持ちもすごく分かる。
まあ、怪我しても自己責任ってことで。
ただ森の中じゃ狭すぎるので、もう普通に遠足コースでやることになった。
レザルド軍の兵士が通り掛かるかもしれんけど、超絶バトルしてんのに近寄ってくる方が悪いってことで問題無しだ。
「始めましょうか」
「コインが地面に落ちた瞬間スタートな!」
「いや、コインちょっとデカすぎだろ!」
「どうでもいい。とっとと始めろ」
「んじゃいくぜ!」
サイダーが、直径15㎝くらいのデカコインを真上にぶん投げた。
ゴイーーーン!
土魔法で固められた地面にコインが落ちて銅鑼みたいな音が鳴った瞬間、40体もの人形が空に浮かんだ。
・・・・・
ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン
ビュオン バリン!
ドスドスドスドスッ バリン! バリン! グシャッ バリン!
「チッ!」
戦場はもうメチャクチャだった。
40体ものファンネルーが飛び交ってる時点で、全てを目で追うのが厳しい。
見るだけじゃなく感じなければ、正直対処不能なのだ。
少しでも立ち止まれば四方八方から攻撃されてお陀仏なので、常に走りながらその辺に浮かんでいる盾をビームソードでぶった斬って破壊し、誰彼構わず視界に入った敵に攻撃し続ける!
ブィーーーーーン!
うおッ!スピルバーンのバイクが!
空中にシールドを何枚も張り、階段のようにして空に駆け上がっていく。
バリーーーン!
ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン
「もらったぞ、サイダー!」
ビュオン
チュドーーーン!
くそッ!ゴン太郎くんが邪魔をする!
タタタッ タタタッ
「うお、犬が!」
「フェンリルだ!」
ビュオン ビュオン ビュオン
ファイヤーランスで破壊を試みたが、全てフェンリルに回避された。
その瞬間真横に現れたミニチュアバイクを、レーザーソードでぶった斬る。
ガギン チュドーーーン!
つーか、一瞬でも気を抜いたら即死って状況なのに、なぜ未だに一人も脱落してねーんだよ!?やっぱこの人達ハンパねーな!
―――――そんなことを考えた瞬間だった。
ゴン太郎くんから放たれたファイヤーランスと、フェンリルから放たれたアイスランスが俺に向かって飛んで来ているのが見えた。
「拙い!いや、そうか!」
キィン! キィン!
近くを飛んでいたガチョピンをリフレクションシールドに変化させ、二本の槍を真横に反射させた。
「ぐあああああーーーーーッ!」
ファイヤーランスが盾を貫き、二発目のアイスランスがスピルバーンに直撃。
しかしその直後、スピルバーンのバイクのヘッドライトから放たれていた二本の短剣が、いつの間にか地面スレスレに張られていたウルタラバリアで反射。
「ぐおおおおおッッッ!」
一瞬にして、スピルバーンと大魔王が脱落した。
「ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアッ」
「あとはサイダーを倒すのみ!」
「一対一で負けるかよ!!」
でもやはりタイマン勝負になると二人とも隙が無くて膠着状態に入り、スピルバーンの『それまで!』の声で、サイダーとの同時優勝が決まった。
「「うおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
戦ってる俺達ですら『アレでよく死ななかったな』って思うほどの激戦だったので、ギャラリー達の興奮も凄まじかった。
「いや~面白かった!久々に燃えたな!」
「うむ。命を懸けた殺し合いでは無いが、戦以上に楽しめたぞ!」
「何とか生き残ったぜ・・・」
「瞬きする余裕すら無かった。ちょっと過激過ぎません?」
「40体ものファンネルーが飛び交ってると、マジで脳が焼き切れそうになる」
「並列思考のスキルが無いと無理だなこれ」
「とにかく俺と大魔王がやられたのはリフレクションシールドによる攻撃だった。やはり一刻も早くマスターする必要があるだろう」
「再戦はあの技を再現した後だ。しばし待つといい」
「二人とも頑張れ!」
しかし、時空魔法ナシでリフレクションシールド作るの大変そうでね?
清光さんの土魔法の場合、魔法を反射できる鉱石を探し出す感じになるのか。
でも大魔王の氷魔法で魔法を反射させる事なんて可能なのか?
・・・あっ!
魔王であるレムとセレスティーナが使ってた固有結界があるじゃん!
なるほど、大魔王なら余裕で再現出来そうだな。
次回のバトルロイヤルが恐怖しかないんですけど!!
はぁ、頑張るしかねーか・・・。




