812 雨の日は砦の中で発表会
近江はどしゃ降りで今日の遠足は中止となった。
というわけで、もう俺が近江にいる必要は無いのだが・・・。
「でも発表会はちゃんとありますからね」
その一言に、空気が変わった。
「チッ、覚えてやがったか・・・」
「なんだ?自信ねーのか?」
「あるような無いような」
「あれ?スピルバーンも隣で見てたんじゃないの?」
「俺も大魔王も自分の修行で忙しかったからな。マジで見てなかった」
「あ~そっか。人形を作って操作するだけでも大変ですもんね」
俺も昨日弱気な発言をしたが、アレは自信があったから敢えてやったのだ。でもサイダーの様子を見ると、どうやら本当に手応えが無い雰囲気なんだよね。
「ん~、その赤いヤツも昨日自信無さそうな事言ってて驚かせやがったから、宇宙刑事の弱気発言は信用できねえ。とにかくお手並み拝見といこうじゃねえか」
「それはいいんだけど、今日は屋内だから少し砦が壊れちまうぞ?」
「天井が崩れるほどの大技じゃなきゃ大丈夫だ。発表会は想定内だから頑丈に作ってある。少々壊れても直せばいいだけだし、損傷は気にせずやって構わん」
「流石の先読みですね」
「わかった。んじゃ始めっか~!シャアリバーンはそっちに移動してくれ」
「ういっす!」
ケンちゃんやレナ達の方に魔法が飛んでいかない場所まで移動し、サイダーと向かい合った。
「よし、まずは昨日の技の再現だ。しっかりバリアで防げよ?」
「バッチ来い!」
そういやこの『バッチ来い』って、外人に理解不能な日本語だよな~とか考えていると、サイダーの周囲にゴン太郎くんが10体出現した。
「ウルタラ兄弟じゃないのか」
「残念ながらウルタラ兄弟には欠陥があったんだ」
「マジで!?」
どういうこっちゃ?意味が分からん。
「それについては後で説明する。んじゃいくぜ!」
ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン
おお、虎徹さんの並列思考スキルもLv10まで育ってるな。
じゃないと10体の人形を同時に操ることは出来ない。
ファンネルーってのは見た目だけじゃなく、マジで難易度Sの大技なんだよ。
ボンボンボンボンボンボンボンボン
「なにィ!?」
ボシュボシュボシュボシュボシュボシュボシュ バリーーーン!
火の玉をマシンガンのように連射して来やがった!
ボンボンボンボンボンボンボンボン
ボシュボシュボシュボシュボシュボシュボシュボシュボシュ
ボンボンボンボンボンボンボンボン
ボシュボシュボシュボシュボシュボシュ バリーーーン! バリーーーン!
ぐおおおおおおおおおお!
パラパラっと全体に撒いてくるからバリア一つじゃ防げないし、蓄積ダメージで二つ三つ同時に壊されるのかよ!
かなりMPが無きゃ出来ない技だと思うけど、こいつは非常に厄介だ。
サイダーと闘う時はずっと走り回ってなきゃダメだな。視界が悪すぎる!!
「ふぃ~~~、こりゃ疲れるな!」
やっと攻撃が止まったので、バリアを全消去した。
「小っちゃい火の玉を連射してくるとは面白い事するじゃないですか!視界が悪すぎてメッチャ怖かったですよ」
「いや、昨日のシャアリバーンの攻撃も視界最悪だったぞ!ファンネルー戦では動き回らないと一瞬で追い込まれて大ピンチになるかもだ」
「相手のMPが切れるまで耐えるってのも一つの戦法になるんじゃねえか?」
フムフム。
この技はMP消費が激しいし、耐え続けていれば勝機が到来するわけか。
「この戦い、守りに徹していては負けるぞ?」
どうやらゼーレネイマスも今の戦闘を見ていたようで、こっちに歩いて来た。
「どういうことだ?」
「そのバリアというのを周囲に浮かべてみろ」
四方と頭上にバリアを張った。
バリーーーン! バリーーーン! バリーーーン!
その瞬間、大剣でバリアをボコボコに破壊された。
「おい!なんてことすんじゃい!」
「あーーーーーっ!普通に物理攻撃で砕けばいいのか!」
「そうか!発表会だから反撃しなかったけど、命懸けの戦闘なら斬るわな」
「なるほど・・・。立ち止まっていた時点でアウトっつーわけだ」
「そういう事だ」
現実主義の大魔王に思い知らされてしまった。
このメンツ相手に守り勝とうなんてそりゃ無理よな。
「よーし、発表会に戻るぞ!」
「そういえば、まだ技の再現をしただけでしたね」
「ファンネルーをマスターするだけでもキツかっただろうに、新技を作る余裕まであったのか?」
「後輩に負けてらんねーから頑張ったぞ!でもファンネルーほど派手な技じゃねーからさ、自信あるのかと言われると微妙なんだよ」
「派手かどうかはそんなに問題じゃないですよ?」
「うむ。俺達の琴線に触れるかどうかだ」
「ん~、まあとにかく始めるわ!シャアリバーン、ガチョピンファンネルーを一体だけ宙に浮かべて、俺に攻撃してくれ」
「一体でいいんですね?」
ん~、一体しか要求してこないとは、確かに派手な技じゃないのかもな。
ガチョピンを宙に浮かべ、ヒュンヒュンとウォーミングアップした後、左上からサイダー目掛けてファイヤーランスを放った。
ビュオン
なんだ?一瞬ウルタラセブンが見えたような・・・。
キィン! チュドーーーーーン!
「「なんだと!?」」
「ガチョピーーーーーーーーーーン!!」
サイダーが張った銀色のバリアにファイヤーランスが跳ね返され、俺のガチョピンが倒されたんですけど!!
「な、なんてことを・・・」
「リフレクションバリアだと!?」
「魔法を反射したのか!?」
「おお!?意外とみんな良い反応してる!」
「そりゃそうでしょうよ!魔法を反射させるなんてビックリですよ!」
「そうか、その手があったか・・・。これも天晴な技だぞ!」
「よっしゃーーーーーーーーーー!!」
うおおおお!流石は時空先輩だ。
追い詰められた状態からリフレクションバリアかよ・・・。
「一瞬ウルタラセブンが見えた気がしたんですけど」
「正解だ。『新ウルタラバリア』だからな!」
「そういえば、ウルタラ兄弟の欠陥って何なんですか?」
「ああ、ついでだから説明してやるか」
そう言ったサイダーが、周囲にウルタラ兄弟を浮かべた。
「じゃあシャアリバーン、魔法で3体破壊してくれ」
「壊せばいいんですか?」
ファイヤーランスでウルタラ兄弟を3体撃墜した。
「戦闘中に人形を壊されたらこんな状態になるわけだろ?そうなったらオレは人形を補充しなければならない」
まあ、補充しないと弱体化するしな。
「今の攻撃で誰々が破壊されたか分かるか?」
「えーと?タロウとレオと・・・、あと誰だっけ?」
「そういう事だ。真上で壊されたら見えねーし、オレにも分からん」
・・・だから?
「すなわち適当に3体補充すると、ウルタラマンエースが2体いるって恥ずかしい状態になっちまうんだよ!」
ズコッ
「いや、それくらい別にいいんじゃ・・・」
「全然良くねえよ!恥をかくくらいなら、オレはゴン太郎くん10体を選ぶ!」
「製作者としての妥協できない拘りなのだろう。気持ちは分かるぞ」
「まあ分からないではないですけど、細かいなあ・・・」
ウルタラ兄弟の欠陥とか言うから何事かと思ったけど、特撮ヒーローをこよなく愛する虎徹さんらしい拘りだったでござる。
しかしリフレクションバリアか~。これは使えるぞ!




