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811 大魔王と暴走族がまさかの参戦

 いつもの発表会で突然戦闘が始まったので、『なんでコイツら毎朝お人形遊びなんかしてんだ?』と、普段はそれほど興味無さげに遠足の準備をしていた近江メンバー全員が、今回ばかりは俺達のいる方をガン見していた。


 俺達は別に喧嘩していたわけじゃないと説明しようとしたら、ケンちゃんでもセイヤでもレミィでもなく、まさかのゼーレネイマスがこっちに歩いて来た。



「貴様、今の戦闘で人形から魔法を発動させたな!?」


 ほう?ゼーレネイマスですら驚くような偉業達成であったか。


「その通りだ。成功するまで苦労したが、やれば出来るもんだな!」

「やはりそうか・・・。魔法から魔法を発動させるなど考えた事も無かった」

「あ~、言われてみると人形って魔法でもあるのか!シャアリバーンがやった技って、一つの大きな殻を破ったのかもしれねーな!」

「なるほど!怪獣が炎を吐いた事にただ興奮していたが、魔法から魔法を発動させたと考えると魔法界の革命なのかもしれん」


 自分では魔法から魔法を発動させた感が無いのでピンと来ないけど、そう考えるとすごく変な事をやらかしたんだな~。


「実に面白い!これ以上魔法に成長は無いと思っておったが、深淵への扉を開いてくれた事に感謝するぞ!」


 そう言った直後、ゼーレネイマスが空中にクリスタルのような氷を浮かべた。

 ただそれは完成形じゃないらしく、何やら氷を削って加工しようとしている。


「大魔王もやる気なのか!くそッ、こうなったら俺も負けてらんねえぞ!」


 そう言った清光さんも、空中に鉄の塊のような物を浮かべた。

 ゼーレネイマスと同じように、まずは鉄を加工するようだ。


「いやいやいやいや!魔法を発動させるだけなら石ころでもいいんじゃ?」

「馬鹿言ってんじゃねえ!ガチョピンやウルタラマンが飛んでるのを見た後で、そんな手抜きの石ころから魔法を撃ったら、完全に負けだろうが!」



 なるほど。

 プライドの問題だったのか・・・。


 どうやらゼーレネイマスも清光さんも、空中に人形を浮かべて、その人形から魔法を発動させるのが目標みたいだな。


 一手間余計な作業を加えているので実戦向きでは無いのだが、俺と虎徹さんがビジュアル重視だったばかりに、面白い方向に発展しましたぞ!


 虎徹さんも焦り始めたのか、ゴン太郎くんを宙に浮かべて、魔法を発動させようとウンウン唸り始めた。



「なんでみんな朝からお人形作りしてんのよ!!」

「ねえねえ!人形ってアタシでも作れる?」

「えーと・・・、火水土の魔法が使えて、しかも極めているのが条件かな?」

「アタシ風なんだけど!」

「風は見えないから、ちょっと無理かも」

「大丈夫です!私なんて光ですし、よわよわのヒールしか使えません!」

「治癒魔法は育てたいところだね~。でもまずは刀を極めてから!」


「「は、はい!」」


「ヤバい、危険な流れだ。俺らも巻き込まれそうな予感」

「すでに毎日土魔法の修行してるっつーの!ところでそろそろ出発しねえのか?」



 そうだよ、人形作りなんか歩きながらでも出来るだろ!



「おいゼーレネイマス、いい加減出発した方がいいんじゃないか?」


 工作に集中していた大魔王がこっちに視線を向けた。


「・・・む!?そうであった。よし、出発するぞ!」

「おっと!人形作りなんて遠足しながらでも出来るわな」

「だな!」

「んじゃ俺は帰ります。まあ精々頑張って下さい」

「余裕ぶりやがって・・・。絶対お前らに追いついてやる!」

「わははは!でも今日はオレもピンチだから、マジで気合入れねーとな」

「期待してますよ!ではドロン」



 アリアダンジョンに転移した。



 いや~、とうとうあの二人にも伝染しちまったな。女の子達は刀の修行があるからいつも通りだろうけど、ケンちゃんとセイヤは絶対巻き込まれるだろ。


 あ、セイヤはすでに土魔法の修行中だったか。


 まあでも、ただ毎日遠足してるだけじゃスタミナくらいしか鍛えられないし、そんな時でも魔法の訓練をするのは効率的でいいと思うぞ。


 俺と虎徹さんは常に新技の事を考えてるから、マジでヘトヘトになるけどな!

 でも今回は追いつくだけで地獄だぞ~?新技までは無理かもな。


 さてと、マジックバッグ作りを開始すっか。






 ************************************************************






 いつものように、サイダーとスピルバーンと三人で近江に転移した。



「うわっ、どしゃ降りじゃねえか!」

「やっぱりか!」



 サイダーが上空にデカいバリアを張ってくれた。

 なるほど、傘としても使えるとはこりゃ便利だ。


 ただ、目の前に見える清光ハウスが砦のように巨大だった。



「なんで今日は砦並みにデカいんですか?」

「昨日の午後から雨が降り出してよ、どんどん雨が強くなっていったんで明日の遠足は無理だと思って、修行できるように砦にしておいた」

「案の定だったな~」

「いい読みですね!これなら退屈せずに過ごせるんじゃないですか?」


 ガシャン


 入り口の扉を開けて砦の中に入った。


「もう全員起きてるとは思うが」

「大魔王が気合入れて修行してたし、訓練場にいるんでね?」

「しかしまあ、城並みに防御力がありそうな砦だな・・・」


 土魔法特化ってのもあるだろうけど、やっぱこの人化けモンだわ。


 ギイーーーーーッ


 通路の奥の両開きの扉を開くと、体育館のような広い場所に出た。



「お、勢揃いじゃん」

「おーい、ゼーレネイマス!さすがに今日は休みか?」


 ケンちゃんに何らかの指導をしていた大魔王がこっちを向いた。


「この土砂降りではな・・・。空模様からしても雨が止む事は無いだろう。仕方あるまい。今日は訓練の日とする」

「そうか。んじゃ俺もここにいる必要は無いな」

「別に無理して進まなくてもいいし、たまにはこういう日があってもいいだろ」

「近江勢の修行を見るのも少し面白そうではあるけどな」



 大雨で休日になるとは予想外だったぞ!


 この大魔王一行ってなぜか規律に厳しく無駄なく行動してるけど、実はまだ挙兵すらしていない状況だから一週間休もうが何も問題無かったりする。もっと気楽に適当な感じでいいと思うんだけどね~。


 んじゃ今日もマジックバッグ作りを頑張りますか!


 ・・・ん?何か忘れてないかって?


 安心して下さい。発表会はちゃんとやりますぞ!

 

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