802 ニャルルのアレで城が大騒ぎになる
録画ボタンをポチっと押すとランプが赤く光った。
小さな画面に風景が映っているので、被写体を枠内に収めるのは簡単だな。
しかしこんな高性能魔道具、神様じゃないと作るの不可能だろ・・・。
「セレスティーナ、この小窓にニャルル達が映ってるだろ?今小窓に映ってる風景がそのまま魔石に記憶されるんだ」
「ほうほうほうほう!確か声も記憶されるんだよな?」
「うむ。今も俺とセレスティーナの会話が記憶されている」
「それって何時間くらい録画出来るんだろな?」
「残り時間みたいなのは表示されていませんね。自分で調べるしかないのかも」
「ガチャの景品って全部スゲーんだけど、マジで説明不足だよな~」
「鑑定の説明文が、一行で纏めようとしている感ありますよね」
「「それな!」」
「あっ!その魔道具初めて見るかも!ガチャで手に入れたの!?」
声のした方を見ると、ソフィアがいた。
「ああっ!姿が見えなかったから五人だと勘違いしてたけど、そういや引率のソフィアもいたんだった!今までどこに行ってたんだよ!!」
操作に慣れてきたので、ソフィアの顔をアップにしてみる。
「いや~、前回服があまり手に入らなかったからギリギリまで粘ってたの。そっちの五人は初めてのガチャだから時間が掛かると思ってさ~。毛皮がいっぱい欲しかったからずっとシルバーウルフ狩ってた」
「なるほど。あまり他人の結果とか気にしないタイプなんだな」
「そんな事ないわよ。結果は知りたいけど過程は見なくてもいいかなってだけ」
「いやいやいや!そこが面白いんじゃないか!」
ドライな考え方をしていたので、おっぱいだけドアップにしてやった。
「えーと、次はソフィアさんの番ってことでいいのかな?」
「いいんじゃね?あたいらは一回ガチャってるしな」
「スロット打ちたいにゃ」
「今はガチャに集中するべきじゃろ。まだ始まったばかりぞな」
「気持ちは分かるがな!」
停止ボタンを押して録画を終了させた。
「よし、こんなもんだろ。んじゃ今録画したヤツを再生してみよう!」
アイテムボックスから箱を取り出し、映写機を置いて壁に向けてみる。
これで合ってるのか分からんけど、説明書も無いし色々試してみるしかない。
再生ボタンをポチッ。
『セレスティーナ、この小窓にニャルル達が映ってるだろ?今小窓に映ってる風景がそのまま魔石に記憶されるんだ』
『ほうほうほうほう!確か声も記憶されるんだよな?』
おお!今撮った映像が壁に映し出されたぞ!
「よっしゃ!録画に成功してるっぽい」
「「おおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーー!」」
「本当に風景と音声が記憶されているじゃないか!」
「これは凄いのう!」
俺と三河の二人で会話しているが、画面にはゴマちゃん達が映っている。
『あっ!その魔道具初めて見るかも!ガチャで手に入れたの!?』
そしてここでソフィアが登場。
少し話をした後、おっぱいがドアップになった。
「ちょっと!なんで私の胸しか映ってないのよ!!」
「ソフィアがガチャの結果だけわかればいいとか言ったからだ!」
「もう、早く消してよこれ!」
「ほほう・・・」
セレスティーナの声を聞き、俺は大変なミスをやらかした事に気が付いた。
健全な方向にって考えてたのに、懲罰でソフィアの胸をドアップにしてしまったのだ・・・。いかんですぞ!彼女に気付かれたかもしれねえ。
再生が終わったようで、映像が勝手に止まった。
「と、とにかくこんな感じだ!凄い魔道具だろう?」
「大当たりじゃん!」
「カメラよりこっちの方が断然凄いかも!」
「ウチのスロットくらい当たりにゃね!」
「皆良い物を手に入れたが、童はキセルが一番良いと思ったな。しかし始まったばかりじゃ。どんどんガチャを回さねば夕食までに帰れぬぞ?」
「えーと、次は私でいいのよね」
「おう!」
清光さんと虎徹さんが入口の方へ歩き出した。
「んじゃオレ達は労役に戻るわ」
「頑張れよ~」
「そっちも頑張って下さい!」
というわけで、ガチャが再開された。
結構時間が掛かっているので、ここからはサクサクいかねばなるまい。
ただ映写機をマジックバッグに入れるセレスティーナの口端が上がっていたのが非常に気になった。
映写機の危険な使い方に気付いてしまったのかもしれねえ・・・。
嫌な予感しかしないが、彼女がゲットした物だし、放っておくしかないだろう。
・・・・・
ガチャタイムは2時間にも及んだが、ソフィアとシャイナが服をゲットしてたし、かなり良い結果だったんじゃないだろうか?
一つ驚いたのが、『にゃんか良いのが出る気しにゃいにゃ』とか言って、ニャルルがノーマルガチャをぶん回し始めた事だ。
あの猫、絶対ガチャの達人だろ!運が尽きた事に気付いて、ノーマルガチャで回復させる戦法に切り替えたんだぞ!?
初めてのガチャでなぜそこに気が付くのか・・・。
まあとにかく、こうしてアリアダンジョンツアーの初日が終わり、全員ホクホク顔で流星城に帰還した。
真っ直ぐ食堂に向かい、それぞれがいつものテーブルに着いた。
基本的にほとんどの人が自分の座席で食事をするのだ。流れでそういう感じになったってだけで、自分の席って決まってるわけじゃないんだけどね。
そして俺のすぐ後ろのテーブルに着いたニャルルが、マジックバッグからスロットマシンを取り出した。
テーブルの上に置いたから、アレじゃあメシなんか食えないだろう。
「「なにそれーーーーーーーーーーーーーーー!?」」
当然ながら、高さが1メートル程もあるスロットマシンなんて非常に目立つわけで、何人かがニャルルの周りに集まって来た。
「おいニャルル、それじゃあメシ食えんだろ?」
「今日は寿司しか食わにゃいにゃ!」
「なるほど、それもまた一興か。でも大当たり図柄でも揃えない限り、満腹になるまで結構大変だと思うぞ?」
「がんばるにゃ!」
「ねえねえ、これって何なの?」
「今日ニャルルが引き当てたガチャの景品だ」
集まった人達に、これがどういう物なのか説明した。
「お寿司が出てくるの!?すごいじゃない!!」
「始めるにゃ」
今日はカレーライスだったので、食堂はスパイシーな香りに包まれていたが、ニャルルは一人もくもくとスロットを打ち続けている。
何だかんだで俺も気になってしょうがなかったので、ニャルルの近くに椅子を運んでそこでカレーを食いながらスロットを見ていた。
そして150Gほど回した頃だろうか?
『キタキター』という声と共に、液晶画面の右から左に魚群が流れていった。
ああ!ニャルルがレインボーを当てた時に見えた魚群ってコレだったのか!!
「にゃんかすごい演出にゃ!」
「チャンス到来だ!もしかしたら大当たりするかもしれねえ!777狙ってみ!」
「やってみるにゃ!」
ニャルルが左リールを止めると、目押しが成功したようで7が止まった。
続けて真ん中リールにも7が出現。
「うにゃあああ!すごく緊張するにゃ!」
「ニャルルならやれる!魚マスターの意地を見せてみろ!」
そしてニャルルが右リールを止めると、待望の777が揃った。
『大当たり~~~~~♪』
テテーテーテテテテ チャーチャーチャーチャーーーーーーーーーー!
スロットから大当たりって声が聞こえ、ファンファーレが鳴り響いた。
そして軽快で楽しい曲が流れ始める。
「「777が揃ったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
ギャラリー達も大興奮だ。
「揃ったにゃーーーーーーーーーーーーーーー!これどうすればいいにゃ?」
「わからん。とりあえずレバーを叩いてみ」
「うにゃ」
液晶画面は賑やかだが、説明みたいな示唆は何も無かった。
でもニャルルがリールを三つ止めるとホタテが揃った。
「簡単に揃ったにゃ」
「たぶん大当たり中は図柄が揃いまくるぞ!ひたすら寿司を食いまくれ!」
「食うにゃ!」
ボーナス中は魔石を投入しなくても良さそうだったので、おしぼりで手とレバーと停止ボタンを拭かせてから、後はニャルルの好きなようにさせた。
でもイチイチ拭くのがめんどいから、寿司は箸で食った方が良さそうだ。
とりあえず腹ペコのニャルルが優先だけど、出てくる寿司の数次第では、ギャラリー達にご祝儀の寿司を振舞ってもいいかもしれんな。
しかしまあ、なんつー面白いスロットを手に入れてしまったのだろう。
こりゃあ城内はしばらく大騒ぎだぞ!




