792 メタルヒーローの中の人登場
レミィの買い物も終わり、釣りを再開した俺達は、朝昼晩食っても五日分くらいあるんでねーの?ってくらい魚を大量ゲットした。
ゼーレネイマスのマジックバッグは空けておきたいので、釣った魚はレミィのマジックバッグで持ち運ぶことになった。あと釣り竿も親父からみんなにプレゼントされたので、とりあえずそれもレミィが預かるようだ。
みんなで釣りを楽しむというシチュエーション効果で俺達も焼き魚が食いたくてしょうがなかったので、道路側から見えないようにする為に清光さんが土魔法で無駄に高い壁を作った。
琵琶湖も10倍の大きさなので対岸から見えるなんてことも無いし、釣りをしている間に船が通り掛かることも無かったので、湖の方には壁を作らず、素晴らしい景色を見ながらのお魚大会だ!
「よーし!これでもう正体がバレることも無いだろう。メタルヒーローの諸君、変身解除だ!」
「「おう!!」」
一瞬でバトルスーツが消失し、赤い流星、暴走族、中二病、大バカ殿様という、脱いでも結局目立ちまくる四人衆が近江の地に現れた。
「ええええええええええっ!?突然知らない人が出てきた!!」
レナが驚いて目を大きくしている。
「ピカピカの中の人だよ!」
初めてメタルヒーローの中の人を見たレナが衝撃を受けている。
「いや、えーと、なんか・・・みんな凄い派手ですね・・・」
「改めて紹介するね。左から三河大名の清光さん、遠江守護の虎徹さん、尾張軍師の小烏丸、そして金ぴか衣装が小烏丸のお父さん!」
「・・・はい??」
突然ビッグネームがゾロゾロ出てきたので、ただの村娘でしかないレナには現実と思えないようだ。
「スピルバーン改め清光だ」
「虎徹だぞ!変身したらサイダーな!」
「シャアリバーン改め小烏丸だ。赤い流星とも呼ばれている」
「こいつの父親だ。さっきまでギャラバーンだったのだが、混乱してそうだな」
「あっ、レナです。よろしくお願いします!」
どれが誰なのか絶対理解してないだろな~。
「三河大名とか尾張軍師とか・・・。あ、あの!レミィさんはどういう繋がりなんですか!?」
「尾張ミスフィート軍に所属してる侍大将だよ。赤い流星に連れて来られたの!」
「えーと、ミスフィート軍って聖帝軍と戦ってるんじゃ・・・」
「ん?情報が少し古いのかな?もう近畿を支配してた聖帝軍は滅ぼしたよ」
「あの聖帝軍をですか!?凄いです!!」
へーーーーー!ただの村娘だったのに知ってるもんだな。
そういや近江って京の都と隣接してるから、聖帝の恐ろしさは田舎の村でも噂くらい流れて来るか。
いや、レナの村は京の都の目と鼻の先にあるわけだし当然だな。
その聖帝軍とバチバチやり合っていたミスフィート軍のことまで知っていたってのは、地味に嬉しいかもしれん。
「もう仲間だと思ってるから自己紹介をしたが、国同士の戦争にまで発展しないよう姿を隠していたんだ。だから俺達がちょっとした有名人ってのは内緒だぞ?」
「は、はい!絶対言いません!」
「名前を呼ぶ時はメタルヒーローの名前で呼んでくれ。その辺の事情はそっちの三人にも説明してある」
「了解です!」
とまあ、レナに正体を見せたので自己紹介することになってしまったが、もう仲間だってのに隠しておくのもどうかと思うし、メタルヒーローのままじゃメシが食えんので、いい機会だと思ったわけですよ。
これで心置きなく、いつでも変身解除してメシが食えるぜ!
一段落着いたので、これも勉強と、皆で魚を捌いて下拵えをする。
汁物も欲しかったので、魚を豪快に使った味噌汁、『魚汁』を作ってみよう!
生臭いのが苦手な人もいるかもしれんけど、食える人だけ食えって感じで!まあ、野宿とか楽勝って感じの野性的なメンツなので、たぶん全員喜んで食うだろう。
途中でアリアダンジョン4階層に飛び、ボヤッキー達をガチャ部屋に送ってすぐ戻って来た。ガチャ最終日がんばれよーーーーー!
こうして夕食には少し早い時間だけど、お魚大会が始まった。
「「うんまーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
棒に突き刺した焼き魚に豪快にかぶりつき、全員が雄叫びをあげた。
琵琶湖で焼き魚ってシチュエーションだけで、美味さは倍増だ!
塩焼きにしてあるけど2匹目には醤油をぶっかけたりと、各々好きな様に楽しんでるが、何をやってもまあ美味い!
ズズズ
魚汁もヤバいほどうめえ・・・。
変身解除して正解だったな!これを食わないとか有り得ないだろ!
「美味すぎる!!」
「自分で釣った魚だからかもしれねえけど、本当にうめーな!」
「わかる!食堂で頂いた料理よりも美味しく感じるよ!」
「感動で泣きそう・・・」
こんなの慣れっこですが?とすまし顔だったゼーレネイマスでさえ、鮎の塩焼きの美味さにやられて口端が上がっている。
「いや~、海の魚ばっか食ってたけど、これはこれでメッチャ美味えな!」
「湖を見ながら食うってのが最高だ。今度シルヴァラとニーナも連れて来よう」
「それいいな!ニーナなんかココに住むとか言い出しそうだぞ!」
「ハハッ!ウチのニャルルもまったく同じ反応するだろな~」
「あの猫の子か~。こんな景色を見たら間違いなく喜ぶだろう」
でも連れて来るのは近江が平和になってからかな?
レザルド軍に見つかったら絶対殺し合いになるから落ち着かん。
「ねえねえ師匠!」
セイヤか。
どの師匠だよ?と思ったが俺のことらしい。
「師匠はそっちの青い男だろ!」
「どっちも師匠ですから!あのですね、一つ質問があるんスけど」
「質問?」
「さっきレナに正体を見せたじゃないですか。でもそのマスクを着けたままなのは、何か深い事情でもあるんスか?」
ム。言われてみると確かに俺だけ二段階の変装をしてるな。
別に顔を隠しているわけじゃないのだが。
「深い意味は無いぞ?顔を隠しているつもりも無い」
「「はい!?」」
話を聞いていたケンちゃんやレナまで驚いた。
「この装備が強いからってだけだな」
「なんスかそれ!?ってことは顔を見せてもらっても別に構わないと?」
「ふむ。いいだろう」
魚汁の入ったどんぶりを地面に置き、マスクを脱いだ。
「「な、なんだってーーーーーーーーーー!?」」
何だその反応は!?人の顔見て驚くんじゃねえ!
「メチャクチャ男前じゃないっスか!!」
「エーーーーー!顔を隠す意味がまったく分からない!!」
「だから別に隠してねーっつってるだろ!」
一緒に露天風呂に入ったりしていたケンちゃんやゼーレネイマスは、俺の顔を知っているので別に驚いてはいない。騒いでいるのはセイヤとレナだ。
「そうか!お嫁さん100人超えってのは、メチャメチャ男前だから成し遂げた偉業だったのか・・・。やっと理解したぞ!こんなん300人くらい楽勝だろ!!」
「1000人いけるんじゃない?」
いや、嫁1000人は勘弁して下さい。死ぬ。
っていうか男前男前いうのヤメて!悪い気はしないが恥ずい。
騒がしくてかなわんのでマスクを装着した。
「お前ら分かっただろ?顔を隠しているのは嫁が10000人超えてしまうからだ!」
「これに懲りたら、もうマスクを脱げなんて言うんじゃねえぞ!」
「いや、なに適当なこと言ってるんですか!単位がインフレしてるし!」
何でいっつも俺がオチに使われるんだよ!
ほとんど清光さんと虎徹さんと親父のせいだけど。
くそう!いつか弱みを握ってやるからな!




