773 時空戦士スピルバーン
宇宙刑事三人が、いるハズのないヒーローの出現に完全にフリーズした。
理由は一つ、こんなの聞いてないからだ。
数多く存在するメタルヒーローの中でも初期の頃に登場したヒーロー。
その名は『時空戦士スピルバーン』。
宇宙刑事三人の戦いが終わって、それでもしぶとくシリーズは継続されたわけだけど、これはサイダーの次の次くらいの作品だったかな?
このシリーズの全てを網羅しているほどコアなファンじゃないので、俺は正直この作品をほとんど見てなかったと思う。でも上っ面くらいなら知っている。
確か幼馴染の女性と一緒に戦っていたような気がするんだが、今回現れたのはスピルバーンだけ・・・なのかな?とりあえず他にヒーローはいないようだ。
「嘘・・・だろ!?なんでそこにスピルバーンがいるんだよ!!」
タタタタッ
「まさか四人目のヒーローがすでに存在していたとはな・・・」
「違和感はあったんだ。でも赤かったからシャアリバーンかと思って気付くのが遅れてしまった。よく考えたら俺がシャアリバーンなのにそこにいるわけねーし!」
ペタペタペタペタ
サイダーが時空戦士スピルバーンのボディーをペタペタ触っている。
「ほ、本物だ・・・。本物の時空戦士スピルバーンだ!」
本物とはいかに?
「しかし俺達は此処までバスで来たんだぞ?一体どこに乗っていたんだ?」
「ゼーレネイマスは・・・いる!ケンちゃんも・・・いる!セイヤも・・・いる!でもよく見ろ!白い特攻服姿の男がいないぞ!!」
それを聞いたサイダーが固まった。
そしてツルツルボディーを触っていた右手が、目で見えるくらい震え始めた。
「なんてこった・・・。ア、アニキなのか!?」
「スピルバーンだ!」
―――――やっぱり清光さんの声だった。
「今のは清光くんの声だろ!!」
「声を聞いてもまだ信じられねえ・・・。だってアレほど宇宙刑事シャアリバーンになるのを嫌がっていた男がだぞ?自分から所有者登録をしたというのか!?」
「そうか!自ら登録したってことは、アニキもヒーローに目覚めたんだ!!」
「いや、出てしまったものはしょうがないから覚悟を決めただけだ!」
あっ、そうか!清光さんはつい最近バカみたいにガチャをぶん回していた。
バイクへの欲望はMAXだったが、こっち方面はまったく眼中になかったハズ。
それで簡単にゲットしてしまったのか。これはもう無欲の勝利と言えよう。
「あ~~~!そういや清光商店がオープンする程ガチャってたもんな~」
「そういうことなのだろう。宇宙刑事が三人揃ったことで安心してたんだな~。でも実は『メタルヒーロー』としてジャンル分けされていたんだ!」
「スゲーーーーーーーーーー!じゃあもしかして機動刑事ジャパンも出るの!?」
「それは謎のままですね~。女神様がどこまで用意してくれているのか・・・」
「おい!もしかしてサイダー以外のヒーローも狙うつもりじゃないだろうな!?労役中にまた横領をやらかしたら、今度は終身刑になるぞ!」
「くっ!労役が終わるまではマズいか・・・」
ふと見ると、スピルバーンがジッと俺を見つめている。
「やはりシャアリバーンと色がかぶってるな」
ああ!そういや俺も一瞬見間違ったもんな。
「いや!比べたら全然違うぞ!スピルバーンの方が黒成分が多い」
「片方だけパッと見たら間違いそうだが、確かに比べると結構違うな~」
「そうか?」
「その二人が違うって言ってんだからいいんじゃないですか?俺と清光さんは自分の姿が目に入らないわけですし」
「確かにな」
「シャアリバーン!本名呼びは禁止だぞ!」
「いや、そういうお前もアニキって呼ばずにスピルバーンと呼べ!」
「あ、そうか!ところでダイアニャのクリスタルスーツは出なかったのか?あとへレーンのスーツも」
「何だそりゃ?」
「確か、スピルバーンに出てきたヒロインの名前でしたか?」
「正解だ!へレーンは主人公の実の姉ちゃんな!もしゲットしてニーナとシルヴァラに渡したら、時空戦士スピルバーンのメンバー勢揃いだぞ!」
「仲間のスーツまで出るのか?まあ、着せたら面白そうではあるが・・・」
女性用の変身スーツか~!ミスフィート軍の女性達も興味津々だったし、女神様が用意してくれているなら、誰かゲットして喜ぶかもしれんな!
ピピン隊やウチの嫁軍団に、喜んで変身しそうなヤツが何人かいるんだよな~。
「おい。何だその奇抜な格好は?」
ゼーレネイマスが俺達を見ながら眉間に皺を寄せている。
「何なんスかこれ!皆ピカピカしてて意味わかんねーーーーー!!」
「カッケエ・・・・・・」
傾奇者の頭の中は虎徹さん寄りのようだ。
派手な着物に喜んでいたし、目立てばとにかく格好良いらしい。
「お前が変装しろって言ったんだろ」
「まさかその様な姿になるとは想定外だ!人間すらやめておるではないか。中身が誰なのかも分からぬ」
「俺が小烏丸で、銀色が親父。そっちの赤黒が清光さんで、青が虎徹さんだ」
「真っ赤がアニキだったんスね!」
「メチャメチャ格好良い!でもやたらとテカテカしてますね」
「この格好良さがわかるとは見る目があるな!流石は傾奇者だ!」
虎徹さんはセイヤのことがすごく気に入ったみたいだ。
先に出会ってたら、虎徹さんと師弟関係になっていたかもしれんな。
「まあよい。準備が出来たのなら行くぞ!」
「えーと・・・、問題は無さそうだ。んじゃ行きますかね~」
「「おう!!」」
想定外のスピルバーン登場で出発が遅れてしまったが、面白くなってきたな!
とは言っても、近江に入ったら楽しい気分が台無しになるのだろうが。
まあ今回は脇役なので、お助けキャラとして適当に動こう!




