772 宇宙刑事、驚愕する
とりあえず今日のところは、シドの店に行ったり大事な話し合いをしたりで半端な時間だったし、ケンちゃん達も城まで歩いて少し疲れていたのもあって、体力を回復させるということで彼らを城で休ませ、野次馬勢はいつも通りアリアダンジョンへと飛んだ。
せっかちなゼーレネイマスは明日出発すると言って聞かなかったので、清光さんと虎徹さんは二日分の労役を終わらせると宣言してダンジョン深層に向かい、俺と親父は体術の訓練がてらに骨剣を集めまくった。
一夜明け、ボヤッキー達をアリアダンジョンに送ってからすぐ城へ帰還。
昨日のように会議室に集合し、作戦会議をする。
とは言ってもゼーレネイマスは近江へ攻め込むわけじゃなく、弟子達を鍛えながら流れのままに挙兵するつもりなので、話し合いをするのは野次馬勢の方だ。
俺は変装しなければ連れてってもらえないので、親父に服を貸してもらった。
「そういや親父が余らせてる服って、緋色の袈裟しか無いんだった・・・」
「あ?俺なんかこんなゴワゴワした服で戦ってんだぞ?それくらい我慢しやがれ」
「つーか宇宙刑事でよくね?」
「坊さん姿で戦うくらいなら宇宙刑事の方がマシか・・・。でもまだ体術が育ってないから少し不安なんだよな~」
「オレ達はただの野次馬なんだし最強である必要ねーべ。どうせだから親父さんもギャラバーンで行こうぜ!」
「俺もかよ!まあこの金ピカ格好じゃ目立つし、そっちの方がいい・・・のか?」
「宇宙刑事もアホみたいに目立つから変わらんけどな!」
「アニキ達が何話してるのかさっぱりわかんねー」
「気にしたら負けって気がする」
ケンちゃん達は話について来られないみたいだが、説明するのも面倒だ。
まあ実際に見れば納得するだろ。
「おい、傾奇者。そんな装備で大丈夫か?」
突然虎徹さんが、どこかで聞いたような質問をした。
「俺ですか?いや、別に問題無いと思いますけど・・・」
いや、それは死亡フラグだぞ。『一番いいのを頼む』って言わないと!
「いいや、その程度の防具じゃ死ぬぜ?コイツに着替えろ」
そして、円卓の上にメチャクチャ派手な着物と下駄を置いた。
赤・青・黄・紫とカラフルな模様で、攻めてるな~って印象しかない着物だ。
こりゃいいな!傾奇者のセイヤにピッタリじゃん!
「うおおおおお!スゲー格好良い!!いいんですか?こんなの貰っちゃって」
「小烏丸、強化してやってくれ」
「セイヤ、良い物を貰ったな!強化するからちょっと待ってろ」
というわけで、急いで着物と下駄を強化してやった。
「よし、終わったぞ!今すぐ着替えろ」
「ハ、ハイ!でもこの服って・・・どうやって着ればいいんですか?」
「しゃーねえ、教えてやっか」
そして着替え終わったセイヤが、正真正銘の傾奇者に生まれ変わった。
鏡を出してやると、自分の姿を見たセイヤが満面の笑みになった。
「死ぬほど格好良い!!ありがとうございました!本当に嬉しいです!!」
「セイヤ良かったな!でもその変な靴で戦えるのか?」
「そいつは『下駄』って名前の靴だぞ。確かに歩きくいだろうから、今回は普通の靴を履いた方がいいな」
カコッ カコッ カコッ
「いや、ゲタで戦います!歩く音まで格好良いし、絶対この靴を極めてやる!」
「ハハッ!まあいいんじゃないか?やれるとこまでやってみて、ダメだったら普通の靴に戻せばいい」
よし、これでセイヤも完全体だ!もう心配ないだろう。
「ところでゼーレネイマスってどこから情報を仕入れたんだ?」
「防壁の上を歩いていた兵士を撃ち落とした」
「いやいやいやいや!それって国境で大騒ぎになってるんじゃねえのか?」
「貴様等に迷惑をかけるつもりはない。国境の門から離れた場所にいた男を狙って情報を吐かせ、その後は速やかに処分した故、敵軍には気付かれておらぬ」
「すでに殺ってんのかよ!・・・まあ早いか遅いかの違いか。じゃあ途中までバスで行って、その離れた場所から近江へ侵入しよう」
「うむ」
「あ、清光さん。着替えるなら此処で着替えた方がいいですよ」
「いや、バスから降りた後でいい」
「そうですか?じゃあ俺らもそこでいいか~」
「じゃあそろそろ出発しようぜ!」
「「オーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」」
準備は万端だ。
今から出発しますとミスフィートさんに伝え、城を出て大型バスに乗り込んだ。
************************************************************
近江軍に見られると拙いので、イロモノ軍団を乗せたバスは国境までは行かず、途中下車して森に入り、身を隠しながらゼーレネイマスの後をついて行く。
「この直ぐ先だ」
「んじゃ変装しますか~」
「敵にムービーが流れるとマズイから即キャンセルな!」
「合点承知!」
互いの変身の邪魔にならないよう、十分な距離を空けてスタンバイした。
「常着!」
シュッ シュッ シュパッ!
「赤者!」
ブンッ! ブンッ! ブオンッ!
「氷結!」
ビュン シュバッ!シュバッ!シュバッ!シュバッ!
「決勝!」
プオォォォン! ピィィィーーーン! パァーーーン!
「宇宙刑事」
「宇宙刑事」
「宇宙刑事」
「時空戦士」
「ギャラバーン!」
「シャアリバーン!」
「サイダー!」
「スピルバーン!」
・・・ん?
なんか今、違和感があったな。
えーと、一人、二人、三人、四人。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
・・・ちょっと待て。四人だと!?
宇宙刑事三人の視線が、いるハズのない一人のヒーローに向けられた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「「時空戦士スピルバーンだとおおおおお!?」」
一体なにが起きた!?




