755 ピピン隊と男性陣によるガチャ大会
忙しいのもあって最近は全てを見届けなくなったんだけど、溜まってた運が炸裂する最初のガチャだけは見逃せないと思ってる。
まあビギナーズラックでレアが引きやすいってだけで、必ず欲しいモノが出るとは限らないんだけどね~。
俺なんかがいい例で、一発目に赤いカプセルを引いたのに、中身は一目見ただけでわかる女性物の巫女装束だったのだ。
ミスフィートさんのお気に入りの服になったのだから大当たりではあるんだけど、俺が着られるわけじゃないからハズレとも言えるのだ。
まあそれでも大チャンスであることは間違いないので、皆の雄姿を見届けようと、ボヤッキー達と一緒にガチャ部屋に移動した。
「なにこれ?」
「変な物がいっぱい並んでるわね」
初めてガチャを見た人達は大体こんな感じなのだ。
「それが噂のガチャだ!」
「「な、なんだってーーーーーーーーーー!?」」
「そこにガチャの説明が書いてあるから、とりあえず最後まで読んでみ」
【魔石ガチャ】
レジェンドガチャ=魔石(大)専用ガチャ
デラックスガチャ=魔石(中)1個、もしくは魔石(小)10個
ノーマルガチャ =魔石(小)1個
【各種属性ガチャ】
火=火の魔石(中)1個、もしくは火の魔石(小)10個
水=水の魔石(中)1個、もしくは水の魔石(小)10個
風=風の魔石(中)1個、もしくは風の魔石(小)10個
土=土の魔石(中)1個、もしくは土の魔石(小)10個
闇=闇の魔石(中)1個、もしくは闇の魔石(小)10個
【カプセルの色によりレア度が変化】
青<緑<赤<銀<金<虹
【レベル制限あり】
必要レベル:40
制作者:女神シャルロット
みんな説明書を凝視したまま固まっている。
経験者ならどういう意味か一目で分かるんだけど、最初は内容を理解するのに時間が掛かるのだ。
そして最初の質問は大体みんな一緒だ。
「レジェンドガチャって、この魔石じゃダメ?」
「1階層の魔物を倒して手に入るのは魔石(小)だ。あの凶悪ゴブリンを倒しても魔石(中)が手に入るだけなので、残念ながらレジェンドガチャは回せない」
「ボスを倒せば魔石(大)が手に入るとか!?」
「正解だ!しかし残念ながら、ボスって数年に一度しか湧かないんだよ。しかも深層のボスともなるとこっちが全滅するほど強いヤツもいるので、魔石(大)を手に入れるのは本当に命懸けの大勝負となる。何にしても今このダンジョンに倒せるボスはいないので、それ以外のガチャしか回せないと思っといてくれ」
というか、デラックスガチャとノーマルガチャの二択なんだけどね。
属性ガチャを回すのもアリだけど、属性装備を手に入れたところで俺らには使い道が無いので、狙いはデラックスガチャだと説明した。
「ルシオの服とか、この前小烏丸さんが変身した凄い服も、デラックスガチャから出たのですか!?」
「正解だ。宇宙刑事シャアリバーンの衣装は金カプセルから出たんだぞ!でもってルシオの服は赤いカプセルから出たのかな?すなわち凄い服ともなるとレアを引く必要があるけど、格好良い服ならば赤いカプセルが引ければチャンス到来だ!」
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」
「ただし半分の確率で女性服が出るからそこは祈るしかないな。しかし女性服が出た場合でも女性にプレゼントしたら喜ばれるし、ピピン隊が手に入れた男性服と交換するって手もあるから、ガッカリすることはないからな!」
「女性服が出たとしてもガッカリなんかしませんとも!色っぽい服をドロシーちゃんにプレゼントするのが俺の目標ですから!」
「ドロシーちゃん・・・、ああ、ボヤッキーの嫁さんか!」
「ま、まだ嫁ではないです!小烏丸さんの結婚式を見て、将来を誓い合うところまではいきましたけど!」
バシッ
「そこまでいったらもう決まったようなもんだろ!でも確かにココで素敵な服をプレゼントすれば確実か!精一杯頑張るといい」
「私も、ルミナに似合う美しい服を手に入れるのが目標です!」
「好きな女性の為に服を手に入れようとする心意気は天晴だ!じゃあガチャの必勝法をおしえてやる。絶対に適当に回すなよ?精神を研ぎ澄ませ、集中力を限界まで高めろ!そして欲に囚われるな!」
「集中力はわかりますが、狙ってる物があるのに欲に囚われるなってのは難しくないですか?」
「難しいが可能だ。欲しいものは欲しい。だがガチャを回す時だけは一旦忘れろ。集中してガチャと全力で向き合え!気迫が勝れば、ガチャの方から心の奥底に眠る願いを汲み取ってくれるんだ」
みんな初心者なのでモヤっとしか伝わってないだろうけど、俺が言いたい事は何となく分かったみたいでウンウン頷いている。
しかしこの時、俺の助言を聞いていたのは男連中だけではなかった。
ピピン隊も本気でガチャに挑もうと、すでに精神を研ぎ澄ませていたのだ。
「わたしからやっていい?」
「いいよ!ピピンってこういうの得意そう!」
「考え過ぎちゃダメよ?小烏丸が言ったように精神集中するの!」
「頭を空っぽにすればいいのかな?」
「じゃあ大丈夫だ!ピピンなんていつも頭空っぽだし」
「なにおう!」
相変わらずワーワー騒ぎながら、ピピンがデラックスガチャの前に立った。
「その投入口に魔石を10個入れるとレバーが光るんで、その状態になったら精神集中の邪魔をしないよう全員静かにな!あとはレバーを回すだけだ」
「「了解!!」」
魔石を10個投入したピピンが動かなくなった。
「「・・・・・・・・・・・・・・・」」
気迫も何も感じないが、アレって精神集中してるんだろか?
ピピンって普段から何考えてるか分からないとこあるからな~。
ガチャコン! キュピン!
派手な音が鳴ったので、全員がビクッとした。
「なんか鳴った!!」
「当たりだ!今のは銀カプセルの音だぞ」
「銀?・・・おおっ!赤よりもレアだ!」
ピピンがカプセルを開けて中を確認する。
「カードに【服】って書いてある!」
その直後、カプセルを持っていたピピンの手の平の上に、美しくも豪華な衣装が出現した。
それを見たピピンの瞳がキラキラと輝いた。
「ルシオ!これ結婚式の衣装だよ!やったーーーーーーーーーー!!」
「「おおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
結婚式を前にしてウェディングドレスを引き当てるとは、ピピンやるじゃん!
他の人のこともあるし、急かすのもアレだから口には出さんけど。
ただ、すごく嬉しそうにしているピピンの表情を見て、ルシオが顔を真っ赤にしていたのが印象的だった。




