751 城内は大盛り上がり
久々に開催された論功行賞は、ほとんどの人が昇格したってのと、俺と親父による最後の余興もあって、大変盛り上がったまま終了した。
しかし城主達は、昇格した兵士達の名前が書いた紙をそれぞれの城門前に貼り出さなければならないので、とりあえず転移で送り届けた。
でもこの後流星城でバカ騒ぎしたい人も多かったので、そういう人達は結果発表の紙を公表してすぐ流星城へと連れ帰った。
明日の夜までに送り届けなきゃならないのでちょっと大変だけど、この二日間ばかりはパシリとして精一杯頑張りますよ!
玉座の間は基本的に身分上位者しか常在することが許されない仕様なので、部下達とバカ騒ぎしたい者達が集まるのは広い食堂となる。
論功行賞が終わった直後から宴会が始まるのは想定内だったので、まだ全然夕食の時間ではないけれど大量の料理と酒を用意してあり、明日の夜まで食べ放題飲み放題なのだ!
この日ばかりは料理班だって一緒に騒ぎたいので、自分らで勝手に焼いて食ってくれって感じで、ドラゴンの肉やアリアダンジョンの海鮮物がメイン食材となり、厨房側に山積みにされている。
用意してあるタレをつけて食うだけなんだけど、これがまた美味いのよ!
料理班には普段からお世話になりっぱなしなので、文句をつける奴はたぶん一人もいないだろう。
京の都ダンジョン産の野菜や果物もたっぷり用意してあるので、シャイナなんかはひたすら『焼きトウモロコシ』を食ってるんじゃないかな?
親父も大好物の『しいたけのバター焼き』ばっかり食ってそうだな。
俺も後で皆とバカ騒ぎしよっと!
ただその前に、流星城の城門周辺の壁に昇格者の名前が書かれた紙が貼り出されているハズなので、兵士達の喜ぶ姿を見るため城門へと向かう。
・・・・・
「うおおおおおおおおお!!とうとう足軽組頭に昇格したぞ!!」
「俺もだ!!城内に一室が与えられるんだよな?どうすりゃいいんだ?」
「知らん。誰でもいいから武将を見掛けたら聞いてみよう」
「お前らすごいな!本当におめでとう!」
「ありがとな!!」
「小烏丸様がいなくなった後、ルシオ様の下で必死に頑張ったからな!出世するなら今しかないと思ってさ、最後まで頑張って良かったよ!」
「3回くらい死にかけたけどな!」
「やっぱり聖帝が恐怖を撒き散らかした時が一番ヤバかったな~」
「アレは死んだと思った」
「敵兵が目の前にいるのに、怖くて体が動かせなかったからな・・・」
「ただ足軽組頭まで出世すると、どの城に配属されるかが問題になってくるぞ?流星城に配属されれば最高なんだが」
「住み心地なら尾張が最高だけど、出世を望むなら最前線の方がいいのかな?」
「そりゃあまあ、出世したいなら最前線よ!」
「お、お前ら根性あるな。だから出世できたのか・・・」
城の外に出ようとしたら足軽らが話している声が聞こえて来て、姿を見せにくくなってしまった。
軍師部隊にいた足軽達は、足軽の中でも武力に秀でた者達が集められた精鋭揃いだったので、生き残った時点で出世して当然という実績がある。
ただ流星城の部屋数にも限りがあるので、半数以上が一国を任された家老達の下に配属されることになるだろう。最前線の城だった場合それなりに危険だし苦労もするだろうけど、ただの足軽より圧倒的に好待遇なので頑張ってもほしいものだ。
ん~、大勢の兵士達が大騒ぎしている中に突入するのは勇気がいるな。
なんとなくシャアリバーンの格好のままだから、俺だってバレないかもしれないけど、どちらにしても悪目立ちするからな~。とりあえず今はこっそり様子を見ているだけにしておこう。
食堂に移動した。
「おっ!すでに祝勝会をしている最中だったか!」
ルシオ、ボヤッキー、ヴォルフ、ヒューリック、ジルという男性陣の出世頭達が、食堂に入ってすぐのいつもの席に勢揃いしていた。
俺の声を聞き、全員が振り向く。
「小烏丸さん!送迎お疲れ様です!」
「うはははは!宇宙なんたらの格好のままでしたか!」
「七輪で焼く肉はメチャメチャ美味いっスね!小烏丸さんもこっちで一緒に食っていきませんか?」
「いや、そのマスク・・・口が開いていないではないですか!」
「その状態でも食べられるのですか?
そういや、宇宙刑事のままじゃメシが食えんですぞ!?
「いや、たぶんこのまま食うのは無理だな。ちょっと解除するわ」
変身を解除し、いつもの赤い流星の姿に戻った。
「えええええっ!?一瞬でいつもの姿に戻った!!」
「あの衣装ってどういう仕組みなんですか!?その服の上に着てたとか?」
「いや、こっちのマスクの方が横幅があるだろ?宇宙刑事の服と完全に入れ替わってるんだよ。正直、仕組みは俺にもさっぱりわからん」
「意味わかんねーーーーーーーーーー!!」
ガチャの大当たりではよくあること。気にしたら負けだ。
「それはそうと、皆昇格おめでとう!ルシオは俺と一緒で、身分的にはこれ以上成長しないけどな」
「「ありがとうございます!!!」」
「でもオリハルコンの刀を貰えて嬉しかったです!一国を任されなかったのが僕としては良かったです。自由に動けた方が仕事がしやすいですから」
「わかるぞ!一国一城の主ってのも素晴らしい夢だとは思うけど、軍師や参謀はあっちこっちで仕事をせにゃならんから、じっくり国を発展させる余裕がない!」
「なるほど・・・、軍を動かす華やかさしか見てなかったけど、だからこそ一つの仕事に没頭することも出来ないんスね~」
そうなのよ。尾張だけの頃は没頭している余裕があったんだけど、ここまで領地が広がるともう無理だ。
これからは各地を視察して助言をするって感じになるだろな。
っていうか俺の場合夜伽が大変でして・・・。
「あーーーーーっ!小烏丸がいた!」
ん?
「ピピン隊じゃないか。昇格おめでとう!」
「「ありがとーーーーー!」」
「そう、昇格したの!だから教科書作りは他の人に回して!」
あ、そうか。
こいつらって生意気にも部将になったんだもんな~。
ルシオを見るとプルプル震えていた。
「だが断る!」
「えーーーーー!なんでさ!?」
「本当に重要な仕事だからだ。重要だからこそお前らに任せたんだよ」
「そんなに重要なの?」
「当たり前だ!子供達の将来がかかってるんだぞ?授業中に教科書がバラバラにでもなったら勉強どころじゃなくなってしまうだろ?」
「ん~、まあ言ってる意味はわかるけど・・・」
「でも別に私達じゃなくたっていいんじゃない?」
「もう少しで終わるんだろ?」
「うん」
「せっかくなんだから最後までやり切ってみ。子供達が授業を受けている姿を見た時に、『自分達が作った教科書なんだぞ』って誇らしい気持ちになるから」
「「なるほど!!」」
ようやく納得してくれたようで、ピピン隊は自分らのテーブルに戻ってくれた。
完成が近かったから、『まあいいや』ってなっただけだろうけどな。
さて、ルシオの完全回復までもう少しってとこかな?
俺もいつまでも彼女らを抑えておけんから、あとは自分で何とかするんだぞ!




