744 ライオウにマジックバッグを渡す
年配者でも抵抗が無さそうな、落ち着いた渋い色合いをしたマジックバッグをライオウに手渡した。
大きな借りがある相手というわけでもないのにコレを渡す理由は、ミスフィート軍の印象を良くする為でもある。
単純に、物をくれる人ってのは『良い人』という印象になるもんなのだ。それが国宝級のアイテムともなれば、面倒な頼み事をしても聞いてくれるかもだしな。
「やる」
突然バッグを貰ったライオウが、何とも言えない顔をしている。
「鞄・・・よな?どういうことだ?なぜその辺の店で買えるような品物を他国の大名に渡す?確かに出来の良い鞄だとは思うが。何か深い意味でもあるのか?」
ライオウが普通の武将なら友達感覚でくれたのだろうって考えるだろうけど、甲斐・信濃を支配する大名だからな。不思議に思うのも無理はない。
「そいつは確かに鞄で正解だが、その辺の店に売ってる鞄と一緒にしてもらっては困るな。なんせゴーレムを持ち運ぶ事が出来る鞄なのだから」
「なんだと!?」
「名称は『マジックバッグ』だ。ただそいつを使えるようにするには所有者登録を行う必要がある。そう難しく考えなくていいぞ?指先をチョンと切ってマジックバッグに触れるだけだ」
「所有者登録?」
「うむ。例えばそのマジックバッグにゴーレムを入れてあったとしても、所有者しか取り出すことが出来ないんだ。もちろん所有者しか収納することが出来ない」
「ほうほう!」
「実際に使ってみればすぐ理解できるからまずはやってみ。そいつが怪しいアイテムじゃないってのは鑑定すればわかる。所有者登録する方法は、マジックバッグに血を一滴染み込ませるだけでいい」
「おお、鑑定は嘘をつかんし間違いなく本物だな!なるほど・・・登録者以外は使用不可と書いてある」
ライオウがナイフで指先を切って、マジックバッグに触れた。
「じゃあ俺と同じようにマジックバッグを背負ってくれ」
「実はお主も鞄を背負っておったのか!奇怪な服の一部と思っとったわ」
「奇怪言うなし。んじゃ、そこにある大きな机に触れて『収納』とか『入れ』とか願ってみ」
「ほう!鞄を背負ったまま手で触れるだけでいいのか」
「マジックバッグな!」
ライオウが机に触れて3秒後、その机がパッと消えた。
「消えた!」
「今の一瞬で背中のマジックバッグに収納されたんだ」
「・・・ん?それにしては全然重くなっとらんのだが?」
「そこがマジックバッグの凄い所なんだよ。例えゴーレムを収納しようが、空っぽの鞄を背負った状態のまま重さが変わらんのだ」
「本当に凄いではないか!!で、机はどうやって出すんだ?」
「置きたい場所をイメージしながら『出ろ』って意識するだけでいい。でも遠くには出せないからな」
次の瞬間、机が元あった場所に出現した。
「何なんだこの便利な鞄は!?おっと、マジックバッグだったか」
「マジで生活が一変するぞ?」
「だろうな!しかしなぜこの様な宝を儂にくれたんだ!?」
「ぶっちゃけて言うと尾張の印象を良くしたいって考えもあるんだが、尾張大名と三河大名もマジックバッグを所持しているからだ。ライオウもそいつを所持することでゴーレムの輸送面でも三国が対等となる」
「そこまでぶっちゃけなくとも良い!しかし対等の条件にする為という理由ならば納得いった。そうか、本当に感謝するぞ!」
ライオウの喜ぶ顔を見ていると、プレゼントして良かったって思える。
まあでもこんなん貰ったらそりゃ喜ぶわな。
でも実は、大盤振る舞いした理由はもう一つあったりする。
信濃と美濃が隣接しているから、もし何か揉め事があった時に穏便に処理できると思ったからなのだ。
それに俺は、京の都から陸奥まで線路を繋げようとしているのだからな。
事故が発生することもあるだろうし、人の行き来で問題が発生する可能性も大いに考えられる。
三河だけじゃなく、甲斐・越後・陸奥とも仲良くしなければならないわけです。
尾張が大国だからこそ、むしろ俺達の方から気を使わねばならんのよ。
機嫌の良いライオウに連れられて格納庫に移動。
しかしライオウ機ってやっぱ大名専用の特別感があって格好良いよな~。
金色に輝くゴーレムを見て、ドワーフ達も大興奮だ!
甲斐大名専用機という最高峰のゴーレムを見たドワーフ達が満足したようだったので、ライオウにゴーレムを収納させてみた。
身長が4メートルちょいあるゴーレムが本当に鞄の中に入ったので、ライオウも大興奮だ。パッと消えたことに不安を感じたのか、何度か出し入れしてたけどな。
マジックバッグが空っぽの状態なら10体以上のゴーレムを収納することが出来ると説明したら、更に衝撃を受けていたぞ!
実際はこんなに使い勝手のいいマジックバッグをゴーレムの輸送だけに使用するなんてことは無いだろうから、常に半分は埋まってる状態だろうけど。
まあ好きに使うといいさ。
いいもんやったんだから急いで線路を作ってくれよな!信濃だけじゃなく越後と陸奥も広大な土地なんで、どこも時間が掛かるのは承知の上なんだが。
ライオウと謁見するイベントは終わったので、ハーディス城を出てセイローガの街のゴーレム工房へと向かった。
道行く人にこの街一番のゴーレム工房を訪ねて、ようやく噂の工房に到着。
こっちの店の方が立派だが、俺と旅のメンバーが最初に入った工房を思い出した。
「ゴーレムが大量じゃ!」
「年甲斐もなくワクワクするのう!」
「小烏殿が自腹で買ってくれるんよな!?値段はいくらのヤツまでいいんだ?」
「ハハッ!この店にあるゴーレムならどれを選んでも構わんぜ?ただゴーレムってのは大きければいいってもんじゃないんだ。身長4メートルが理想の大きさだ」
「ほほお、そういうもんなのか」
「とりあえずは見た目じゃ!それから店主と相談じゃな」
「試乗は出来るのか!?」
「それは店主に聞いてみなきゃわからん。でもたぶん大丈夫だ」
ドワーフ達がゴーレムを指差しながらワイワイやってる姿を見て、俺も楽しくなってきた。
こりゃきっと美濃でゴーレムが大流行するぞ!




