722 クライムバスター銃を試してみる
宇宙刑事サイダーのコンバットスーツの強化が終わり、メカメカしいボディーから手を離す。
本当はもっと早く終わらせることも可能だったんだけど、付与魔法の価値を下げるわけにいかないから、無駄な時間と思いつつもかなり時間を掛けて強化した。
「よし!サイダーの強化が完了しましたよ。最大強化だと一ヶ月近く掛かってしまいますので、強化値++までですけどね~」
代わりにマジックバッグを作ってくれていた虎徹さんが一瞬俺の方を見たが、そのまま作業を続行し、作りかけのマジックバッグを完成させた。
「サンキューーー!これで攻撃を受けた時の衝撃が激減されるハズだよな!?」
「斬撃耐性++、衝撃耐性++、そして魔法耐性++。これだけでほぼ無敵状態になると思いますよ。元々カチカチボディーですしね」
「コンバットスーツの強化はマジで嬉しい!攻撃を受けた時にノックバックしちまうから、その度に距離を詰めるのが地味に大変だったんだ」
「強くなって後悔するほどのバトルマニアなら苦戦ですら楽しめるのかもしれませんけど、俺なら闘いやすくなった方がいいですし、後で自分のコンバットスーツも強化しようと思っています」
「オレは無敵のヒーローを目指してるから、装備が強くなって後悔はしないぞ!」
「ハハッ、喜んでもらえて良かったです。あっ、俺の代わりにマジックバッグを作ってくれてありがとうございました!」
「おう!オレの左側に置いてあるのがマジックバッグ化したリュックだ」
―――――虎徹さんの左側に置いてあるリュックは20を超えていた。
「ぶはッ!アレだけの時間でこんなに大量に作ったんですか!?」
「こんなもん慣れだ。小烏丸なら今くらいの時間でいくつ作れる?」
「ん~~~。三つか急いでも四つくらいかなあ・・・。破裂させるのが怖いから慎重に作ってるんですよ」
「いや、わかるぞ。作るスピードを上げると失敗する可能性も高くなるから、やっぱり数を作って慣れろとしか言えん」
「時空魔法のレベルが上がった時も感覚が狂うので、逆に苦労するんですよね」
「なるほどな~。レベルが上がり切ってしまえば安定するんだけどな」
時空魔法のレベルがカンストしてしまえば、レベルアップによる感覚のズレもなくなるってことか。しかしカンストまではまだ遠いな~。
「結局何だかんだで、レベルMAXになるまでマジックバッグを作り続けるしか無いかな。軍の皆に作ってくれと頼まれてるから、どうせやるんですけど」
「そういや小烏丸ってずっとリュック背負ってるけど、アイテムボックスは使ってないのか?」
「あ、完全に忘れてました・・・」
そうだよ!アイテムボックスが使えるようになれば、リュックいらねーじゃん!
「アイテムボックスは破裂しないから、限界まで空間を広げるだけでいいんで、そんな難しくねえぞ?」
「あ、そうなんですか!?虎徹さんのおかげでマジックバッグ作りに少し余裕ができたので、せっかくだから挑戦してみようかな?」
「夢中になり過ぎるとMPが枯渇して気絶しちまうから、毎日少しずつコツコツと空間を広げていくのをオススメするぞ」
「何日も掛かっちゃう感じですか?」
「アイテムボックス作りだけに集中しても2週間以上掛かった気がする。おかげでオレのアイテムボックスは容量が無限ってくらいデケーぞ!」
「全力で2週間か~。今は一つのことだけに集中してる余裕が無いから、俺の場合一ヶ月以上掛かっちゃうかも・・・」
「急ぐ必要もねーんだから、ゆっくりやればいいんじゃね?」
そっか。一気に作る必要が無いのなら、ゆっくり地道に頑張るか~。
とりあえず今日は疲れたんで、明日から開始しよう。
「お?宇宙刑事の強化は終わったのか?」
先に黒い特攻服の強化が終わって、着心地をチェックするとか言ってダンジョンを攻めていた清光さんが帰って来た。
「今終わったばっかりだぞ!ところで女性陣は?」
「知らん。此処に姿を見せないってことはガチャ部屋じゃねえか?」
「いやいやいやいや!何時間話してんだよ!」
「話のネタは、間違いなく夜のアレコレだと思いますよ・・・」
「おいおい勘弁してくれ!・・・そうか、三河でそういう話がしたくても、シルヴァラの話し相手になる人物ってニーナくらいしかいないのか」
「そこに小烏丸の嫁軍団が登場したわけだもんな。今まで話したかった事を全部ぶち撒けてるくせえ」
「お前ちょっと嫁多過ぎなんだよ!!」
「安心して下さい。それに関しては俺もどうかと思ってますから!」
「もう17時過ぎてるぞ。いい加減話を切り上げさせようぜ」
「だな。ところで小烏丸の親父さんは?」
「暇だって言って魔石集めに行きました。そろそろ帰って来る頃じゃないかな?」
「それじゃあ女性陣を連れ戻しても帰れねえな・・・」
結局帰るのはいつもの時間か~。
「あ、そうだ!ちょっと骨相手にクライムバスター銃を試してもいいですか?」
「ポンコツだぞ?」
「どれほどポンコツなのか知りたいんですよ」
「それはそれで面白そうだな。俺も見に行こう」
というわけで、サイダーと清光さんと一緒に通路に入った。
カタカタカタカタ
「来たな怪物め。くらえ!クライムバスター銃!」
ビビビビビビビ
音はちょっとチャッチイが、赤いレーザービームが飛んでいった。
「マジか!全然効いてねーーーーー!!」
「だからポンコツなんだって!」
「いや、今のビリビリで少しだけ敵が硬直しませんでしたか!?」
「そういや骨の動きが一瞬止まったか?」
軽く痺れさせることが出来るだけでも、コンボを繋げられるかもしれん!
よし、やってみるか!
「クライムバスター銃!」
ビビビビビビビ
「今だ!レーザーソード!」
重っ!
これは親父の言う通り、刀の方が断然いいな~。
でも折角だから、これであの魔王を倒す!
「シャアリバーン、クラッシャー!!」
ドガーーーーーーーーーーーーーーーン!!
蛍光灯のように光る剣が当たった瞬間骨が爆散した。ついでに地面も。
「「うおおおおおーーーーーーーーーー!カッケーーーーーーーーーー!!」」
今のは自分でもメチャメチャ格好良いと思ったのでポーズを決めていると、突然身体の力が抜けて大地に膝を突いた。
「今のでエネルギーが切れた・・・」
「やっぱりか」
「はあ!?宇宙刑事って燃費悪いなオイ!!」
二人に肩を借り、支えてもらいながら部屋に戻って来た。
そして床に大の字に寝そべり回復を待つ。
「む?なんか小烏丸が床に転がってるな」
親父が魔石集めから戻ったようだ。
「少し前に『シャアリバーンクラッシャー』を使ったんだ」
「なるほど!つーか、シャアリバーンの必殺技ってそんな名前だったのか!」
「燃費は悪いが格好良かったのは認めよう」
・・・うん。
30分動けなくなるのはどうかと思うけど、虎徹さんが毎日必殺技を使って帰って来る気持ちがよく分かった。だってメッチャ爽快なんだもん!
よし、明日もやろっと!




