720 とうとう三人の宇宙刑事が揃った
宇宙刑事シャアリバーンの赤者常着の披露も終わり、これでようやく敗者の責任を果たしたと言えるだろう。
いや、金カプセル漢気三本勝負だったわけだから俺が勝者なのか。
何にしてもクッソ恥ずかしいのは事実だし、とても勝者だとは思えないけどな!
しかし親父や虎徹さんも嘆いていたが、自分の変身シーンが見られないってのが残念でしょうがない。ファンの子達だけ大満足ってどうなのよ!?
「ファンの子達だけが変身シーンを見ることができる仕様って酷くね?すっげーモヤモヤする!!」
「わかるぜ!あのスベった感も最悪だしな」
「いやホント、自分の変身シーンだけ見られないなんて酷すぎる!」
やはり親父も虎徹さんも、この仕様に嘆いていたようだ。
「それはそうと記念撮影するんだろ?親父と虎徹さんも変身しねーと」
「やはり俺も宇宙刑事にならんとダメか・・・」
「小烏丸の親父さんからお先にどうぞ!」
「仲間が増えたのは嬉しいが、俺が恥をかき続ける事実は変わらねえのな!」
親父と場所を変わるために皆の方へ移動すると、嫁軍団から顔やボディーを触られまくった。
「硬くて冷んやりしているな!」
「アハハハハハハハ!すごくツルッツルだ!なんか少し羨ましいんですけど!」
「これも服と呼べるのでしょうか?硬いから着心地も悪そうですね」
「あははははは!艶々していてすごく面白いですわーーーーー!」
「小烏丸だけズルいっス!ウチもこれ欲しいっス!!」
「それはそうと、赤い流星の衣装はどこへ行っちゃったのよ?」
和泉の一言に、赤い流星の服どころかマスクまで着用していたのを思い出した。
「なあ和泉、自分じゃ見えんのだけどヘルメットも無くなっているのか?」
「うん。普通の宇宙刑事シャアリバーンになってるよ」
「普通のシャアリバーンって、街中とかで出会えるような人じゃないからな!」
「それにしても防御力が高そうだな。動きにくそうでもあるが・・・」
「あ、そういえば付与魔法で強化しないとな~」
「おーい、そろそろ変身するぞー!」
親父から苦情が入ったので、向こうに集中した。
「常着!」
シュッ シュッ シュパッ!
その瞬間、大バカ殿様の姿が宇宙刑事ギャラバーンになった。
「宇宙刑事」
シュッ シュッ ジャキン!
「ギャラバーン!!」
そしてやはり自分の名前を叫んだタイミングでナレーションが流れ始め、そのままムービーが始まった。
しかしまあ、大バカ殿様の姿から宇宙刑事ギャラバーンになるってのが、あまりにも斬新で圧倒的過ぎる。そして俺の場合、赤い流星から宇宙刑事シャアリバーンになるんだろ?そんなの面白いに決まってるじゃん!
格好良いムービーに夢中になっていると、いつものようにギャラバーンのぼやき声が聞こえ、現実世界に戻って来た。
グミやチェリンなんかは何度も見ているので大人しかったが、宇宙刑事初心者のミスフィートさん達は親父の変身ムービーに感動し、感想を言い合っている。
パシッ
親父と虎徹さんがタッチを交わして場所を変わった。
「氷結!」
ビュン シュバッ!シュバッ!シュバッ!シュバッ!
シャアリバーンと同様、虎徹さんは僅か1ミリ秒で宇宙刑事サイダーに変身。
その瞬間脳内に音楽が流れ始め、『ピー』『ポー』『パー』『ポー』『プー』『ポー』『ピー』という謎の効果音と共に、サイダーの左足、右膝、腰、右の手の甲、左腕、右肩、胸と、ドアップで身体の部位が映し出される。
「宇宙刑事」
ジャキン! ビューン! ビュオーーーン!
「サイダー!」
ファンファンファンファンファーーーン!
決めゼリフと共に、宇宙刑事サイダーの顔がアップになった。
やっぱギャラバーンよりも、サイダーの演出の方が派手になってるな。
そのままナレーションが流れてムービーに突入し、宇宙刑事サイダーによるぼやきによって現実世界に戻って来る一連の流れをこなした。
そして親父と一緒にサイダーの側まで歩いていき、三人でハイタッチを交わした。
「やっぱ自分の変身ムービーだけ見られないのはダメだよな!?」
「うむ。この仕様だけは納得いかん」
「俺もシャアリバーンのムービーが見たかったな~」
「お前らの気持ちも分かるが、ギャラリー達にもマイナス面はあるんだぜ?」
清光さんの気になる発言に、宇宙刑事三人がそっちを見た。
「三人揃ってこっち見んじゃねえ!」
なんて我儘な人だ。アナタが気になること言うから見たんでしょうが!
「えーとな、俺達は同じ部屋にいたってだけで、強制的に三人分の変身ムービーを見させられたんだぞ?最初は面白いからいいが、こんなん10回も見させられたら絶対飽きるだろ。キャンセルとかできねーのか?」
キャンセル?・・・出来ますな。
スベった感に堪え切れなくなって、自分でぼやきキャンセルしてるわけだし。
(こっちでキャンセル出来るのは内緒にしよう)
(賛成だ。俺達だけ不幸なのが気に入らん。しばらく放置するぞ)
(変身ムービーをキャンセルするなんて普通ありえないだろ!絶対却下)
宇宙刑事会談により、清光さんの申し出は却下された。
「新人なのでさっぱり分かりません。最後まで見るしかないんじゃないですか?」
「そういう仕様なのだろう。ムービーを心ゆくまで楽しんでくれ」
「変身シーンが一番の見所なのに、これを見ないなんてファン失格だぞ!」
「いや、ファンではない。くそッ、キャンセルできねーのか・・・」
「それよりアニキ、記念撮影だ!ポーズを決めるから100枚頼むぜ!」
「いや、100枚は多過ぎでしょ。1枚で十分ですって!」
「気に入らなくて撮り直しになっても困る。3枚くらいがいいんじゃねえか?」
「じゃあ10枚くらいにしとくか~」
そして、色々な格好良いポーズを決めながら、宇宙刑事撮影会が始まった。
虎徹さんを満足させなければならないので、俺と親父の意志は反映されず、虎徹さんの指示通りにポーズを決め、30分程でようやく納得の一枚が撮れた。
「大満足だ!次回は四人並んだ写真が撮れるといいな!」
その虎徹さんの一言に、清光さんがギョッとした。
「宇宙刑事は三人しかいねーだろ!俺は無関係だからな!」
「そんなことはない。確かに宇宙刑事は三人だが、メタルヒーローは他にもいっぱいいるぞ?大獣特捜ジャスピヨンとかな」
「時空戦士スピルバーンとか、清光さんにピッタリじゃないですか?」
「悪くないけど、その二人は宇宙刑事シャアリバーンと少し似てるから、機動刑事ジャパンがいいと思うぞ!」
「「それだ!!」」
「おいヤメろ!せっかく宇宙刑事を回避したのに、まだそんな罠が仕掛けられていたらガチャが回せなくなるじゃねえか!!」
今回は上手いこと回避したみたいだけど、メタルヒーローはまだまだいるのだ!
一人だけ逃れようったって、そうはいきませんぞ?
さて・・・、俺は俺で宇宙刑事シャアリバーンの衣装をゲットしてしまったわけだし、もうこうなったら使いこなしてやるぜ!




