716 小烏丸vs清光
金カプセル漢気三本勝負。
その一本目。自ら先攻を選択した清光さんのターンは、【服】のカードを引いてしまうという絶体絶命のピンチまで陥ったものの、結局出てきたのは男性用の白いスーツだった。
しかし俺も清光さんも全身全霊でこの勝負に挑んでいるのもあり、宇宙刑事の衣装を回避した清光さんは喜び、俺は悔しがってしまった。
おかげでホイッスルが鳴ってしまい、レッドカードを出されてしまう。
ただ最初だったから、一発レッドは許してもらえたみたいで、イエローカードの罰ゲームとしてカレーライスを食べさせられた。
シルヴァラさんが作ったモノなのかは聞いてないから分からないけど、罰ゲームの割には普通に美味しいカレーだった。
ただレッドカードをくらうと激辛カレーを食わされるらしいので、ここからは罰ゲームにも気を付けて闘わなければならん。
「ふ~、じゃあそろそろガチャりますかね・・・」
「お前ほどの男なら一発で宇宙刑事の衣装を手に入れてしまうのだろうな。もうやる前からわかるぞ。出る確率は100%だ!」
ピキッ
「くッ!俺では明らかに力不足でしょう。それにどう考えても清光さんの方が宇宙刑事の衣装が似合いそうですし」
「いいや!冷静になって考えてみ?お前の親父は宇宙刑事ギャラバーンだ。そう!お前の身体には宇宙刑事の血が流れているんだ!」
ゴフッ!
「い、いや、親父は最近宇宙刑事になったばかりなので、残念ながら俺に宇宙刑事の血は流れていません。親友が宇宙刑事の清光さんと何ら変わりませんよ」
「身体に流れる宇宙刑事の血を信じろ!お前ならきっと出せるハズだ!」
言い返したい気持ちは強かったが、擦り付け合っていてもキリが無いので、デラックスガチャに魔石を入れ始めた。
しかしガチャ前の舌戦って、かなり動揺させられるな・・・。
さっきの俺の口撃も、清光さんに相当なダメージを与えていたのかもしれん。
宇宙刑事の衣装だけは絶対引くわけにはいかんのだけど、金カプセルを引くまで俺のターンが終わらないので、精神集中してガチャを回しまくった。
青 緑 青 赤 青
宇宙刑事の衣装を引くのが嫌すぎて、明らかにいつもより酷い引きになっていることに気付き、両手で頬を叩いて気合を入れ直す。
ガチャコン! キュピピピン!
「「キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
「とうとう勝負の時が来てしまったか・・・」
「完全に宇宙刑事が出た時の音だったな。悔しいがお前がナンバーワンだ!」
くッ、適当なこと言いやがって。金カプセルを引いた音はどれも一緒だ!
恐怖に震える手でカプセルを開ける。
「ぐおおおおお!カードに【服】って書いてあるんですけど!!」
「はい、宇宙刑事おめでとう!」
―――――出てきたのは、赤いセーラー服だった。
「オラアアアアアアッッッ!!そう、俺には女性服の呪いが掛かってるんだよ!」
「クソが!!お前だけ女性服の呪いが掛かってるとか汚ねえぞ!!」
ピピーーーーーーーーーーーーーーーッ!
「二人ともアウト!!」
ホイッスルの音を聞き、またやらかしてしまったことに気付く。
親父が上げた右手に持っているのは、当然ながらレッドカードだ。
「ぎゃあああああーーーーー!やっちまった!!」
「しまった!!呪いにムカついて、ついツッコんじまったじゃねえか!!」
シルヴァラさんがトコトコ歩いて来て、カレーライスの皿を手渡された。
もちろん清光さんにもカレーが手渡される。
「・・・カレーってこんな色でしたっけ?」
「シルヴァラの激辛カレーには、アリアの世界で一番辛いと言われている香辛料が大量に使われているからな」
「カレーというより、もう見た目が完全にマグマじゃないですか!!」
「悪魔の食いもんだって言ったろ?」
「いや、こんなの完食したら集中治療室送りになりませんか?」
「おい審判!聖水の使用はアリか?」
清光さんの質問に、虎徹さんと親父が顔を見合わせた。
「あの溶岩を食って生き残れる確率は?」
「1%くらい」
「さすがにそれでは試合の続行が出来なくなるな」
「しょうがないから聖水の使用を許可するぞ!」
まあ生存確率1%は冗談だと思うけど、とりあえず聖水の使用許可が出たので、即死だけは免れたようだ。
マジックバッグから聖水の入った水筒とコップを二つ取り出して、溢れる寸前まで聖水で満たした。
「これを食わんと勝負の続きもできねえ。しゃあねえから食うか・・・」
「肝心な味の方はどうなんですか?」
「一口でギブアップしたんだぞ?味わう余裕なんかねえよ!」
「ぐぬぬ、まあとりあえず食ってみますか!」
カレー用の大きなスプーンで、ご飯とカレーをバランスのいい配分で掬い取り、口に放り込む。
「「!!」」
味を感じる間もなく、脳天から足の先まで痛みが突き抜けた。
直後に口の中で炎が爆発したような衝撃が発生し、そうこうしている間に額から滝のように汗が流れ始めた。
こ、これはアカンやつ!!
清光さんと同時にコップに手を伸ばし、口の中のマグマをゆすぎながら、胃を助けるために聖水を一気に飲み干す。
「「ゴフェアッッッッッ!!」」
それでも受けたダメージは甚大で、床をゴロゴロ転がりまくった。
清光さんはというと、大名のプライドがあるからなのか、床に片膝をついたまま物凄い形相で耐え続けている。
しばらくゴロゴロ転がっていたが、1分ほど経つと聖水が効いてきたようで、ようやく会話ができる所まで回復した。
「・・・こんなんカレーじゃないやい」
「だろ?肝心な味はどうだった?」
「激痛味でした」
「言いたいことは分かるが、それは味じゃねえ!」
「俺が今食わされたのって、カレーじゃなくてマグマ丼か何かでしょう!」
「美味いか不味いかじゃなく、生きるか死ぬかの料理だからな」
「審判!これ完食とか無理っスーーーーーーーーーー!!」
審判である虎徹さんと親父の話し合いの結果、もう一口食ったら勘弁してもらえることになった。
料理人であるシルヴァラさんの『しょうがないわねえ』という声も聞こえてきたが、あの人、俺と清光さんを殺す気ですか!?
「あと一口ですってよ?」
「完食じゃなくなっただけマシと思うしかねえ。とっとと食うぞ!」
審判の目が光っているので、90%ご飯って配分にすると、もう一杯食わされるに違いないから、さっきのようにバランス配分でカレーを掬って口の中に放り込んだ。
「グオオオオオオオッッッッッ!」
床をゴロゴロ転がりながら、『もう罰ゲームだけはくらっちゃならねえ!』と、次からはメチャメチャ気を付けることを心に誓った。




