712 ナターシャとフローラの再会
目覚めてすぐ、玉座の間の奥にあるキモい人形がいっぱい詰め込まれた部屋の隣の空き部屋に、通信機の親機を設置しに行った。
なぜココなのかというと、皆の居住スペースの近くだと騒音問題で苦情が来まくるに決まってるからだ。防音部屋にするつもりではあるけど、あの音量だと廊下まで漏れ聞こえる可能性が結構高いしな~。
玉座の間の奥ならば少なくとも睡眠妨害にはならないので、キモい部屋の隣ではあるけど、やっぱココしかないでしょう!
今日は時間が無いので防音にする作業は出来ないけど、誰かに耳栓を渡して電話番についてもらおうと思ってる。
格好良くオペレーターって呼んでもいいんだけど、なんかしっくり来なかったので俺は電話番と呼ぶ!通信機でのやり取りなんだけどさ。
通信機なんて便利な物が手に入ったらすぐにでも使いたくなるだろうから、もう今日から城が騒がしくなるだろうな~。
運良くチェリンが歩いてるのを見つけたので、暇そうな人を見つけて3時間交代で電話番につかせてくれと頼んでおいた。
彼女はあの騒音のヤバさをよく知っているので、『了解。玉座の間には近寄らないようにする』と言って立ち去った。
そうこうしている間に出発の時間となり、いつもの様に虎徹さんの転移でアリアダンジョンに飛び、ミスフィートさん達を放流してすぐ流星城へと戻って来た。
「おかえり!」
「よく考えたら俺が行く必要全く無かったけど、ただいま~」
「すぐ出発するんでしょ?久しぶりにフローラと会えるのね!」
「じゃあ虎徹さん、最初はレイリア城でお願いします!」
「おっけー!じゃあ手を繋いでくれ。転移!」
その瞬間景色が変わり、懐かしのレイリア城が目に映った。
「うおおおお!一瞬にしてレイリア城だ!!」
「本当だ!すごく懐かしいわ!転移って凄いわね~」
「元々住んでた城だから問題無いと思うけど、一応しっかり景色を記憶しておけ」
「あーそっか!ちゃんとセーブしておかんとな」
「ゲームかよ!!」
とはいえこの景色はいつも見ていたわけだから、記憶するまでもなかった。
「たぶんセーブ完了です。仲間と話がしたいのでちょっと城内に寄っていきたいのですが、いいですか?」
「オレはこの辺ブラブラしてるわ。待たせていると思って急ぐ必要はないぞ。魔石を受け取っているし、依頼主を待ってるのも仕事だ」
「ありがとうございます!んじゃナターシャ、久々のレイリア城だ!」
「フローラとミリー、元気にやってるかな~?」
さっきから此方をガン見していた門兵に挨拶すると、当然ながら顔パスで城内に入れてくれた。
そして城に入った所で、フローラとミリーにばったり出くわした。
「・・・え?」
「ウソ!?小烏丸とナターシャだ!!」
「よう!二人とも久しぶりだな!」
「フローラ!逢いたかったよーーーーー!!」
「ナターシャじゃない!!」
ナターシャとフローラが抱きしめ合い、俺はミリーの突進を受け止めた。
「元気だったか?」
「うえーーーーーん!突然現れるなんて思わなかったよ!」
「ハハッ、どうしてナターシャと二人で来たと思う?」
「そういえば、なんか変な組み合わせだね?」
ミリーがコテッと頭を横に倒して考えてるが、さっぱり分からないもよう。
「じゃあ答えを言おう!なんと流星城での夜伽がすべて終わったのだ。すなわち今日から、レイリア城や尾張の城主達との夜伽がスタートしたんだ!」
「うぇえええええええええーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
ミリーは驚いた。そりゃあもう驚いた。
そして向こうを見ると、ナターシャとフローラが抱き合ったままだった。
尊いです。
やっぱり二人同時がいいです。もう四連戦で死んでも本望です。
「でも、どうして小烏丸と二人でレイリア城に?」
「こっちで夜伽をする為に来たの!」
「夜伽って・・・、ええええええええええ!?もしかして作戦が成功したの?」
「あーそっか!そこから説明しなきゃダメなのか~」
詳細を聞く為に、ミリーが俺から離れてナターシャ達の方に行った。
なんかフローラが作戦とか言ってるし、嫁会議の何らかが関係してそうだ。
こうなると俺は話の中心でありながらも部外者で、俺とミスフィートさんが結ばれてからの一連の流れをナターシャが説明しているのを、黙って後ろで顔を真っ赤にしながら聞いていた。
うん。恥ずかしくて今すぐ逃亡したいです!
「・・・というわけで、後回しにされちゃった人達は二日連続で夜伽していいって許可が出たの!」
「すごいじゃない!」
「やったーーーーーーーーーー!」
「でね、フローラやミリー達に合わせようと思って夜伽を先延ばしにしていたら私も二日制にしてもらえたんだけど、リタとリナからすごい秘策を聞いちゃった」
「秘策?」
「私とフローラが二人同時に小烏丸と夜伽をすることで、日数を倍に増やせるらしいのよ!次のお嫁さんに迷惑が掛からないでしょ?」
「「はい!?」」
「え?どういうこと?」
「二日連続で夜伽ができるということは、二人で四日ってことになるわよね?でも二人同時に挑むことで、四夜連続で夜伽することが可能ってわけ!」
「・・・確かに、次のお嫁さんに迷惑は掛からないわね」
「いやいやいや!ナターシャに全部見られちゃうじゃない!」
「それだけが問題なのよね~」
フオオオオオーーーーー!とうとうこの話が始まってしまったぞ!!
あとはフローラの決断次第か。
ナターシャは、すでにその気になっているような気がする。
「決めた。ナターシャ、一緒に夜伽するわよ!」
「ウソ!!やるの!?」
「だって四日よ?この機を逃すなんてもったいないわ!」
「まあ確かにそうなんだけどさ・・・」
「エエエエエ!!二人とも本気なの?わたしは普通がいいな~」
「普通が一番よ。でもナターシャになら別に見られても構わないかなって」
「ん~~~、フローラがそう言うのなら一緒にやろっか!」
「じゃあ決まり!!」
その瞬間、俺は小さくガッツポーズをした。
間違いなく夜は一睡も出来ないし、四連戦の夜伽が終わった頃には生きる屍となっていることだろう。
でもいいんだ。今は楽しみの方が完全に上回っているのだから!
しかし俺も精神統一して闘いに備える必要があるかもしれんな・・・。




