614 ダンジョン30階層のボスはあの有名コンビ
視界が真っ白になるほどの蜘蛛の糸を飛ばして来た『スパイダー男爵』だったが、蜘蛛の糸を刀で斬っても効果が薄いような気がしたので、発想を変えてみた。
「ファイア」
ボシュッ! ボボボボボッ
思った以上にいい燃え方をしてくれて、蜘蛛の糸が消え去った。
燃やされるとは予想外だったのだろう。スパイダー男爵が呆気に取られている。
「残念だったな?その攻撃は通用しないぞ!」
そう言いながら無造作に近寄り刀を一閃。
スチャッ
しかし地面に着地して回避される。
「やるな!流石はスーパーヒーローだ!」
褒めはしたけど攻撃が避けられたことにムカッとしたので連撃で畳み掛ける。
シュシュシュッ シュッ
しかしスウェーバックで攻撃を全て避けられた。
「マジか!強くね!?うおッッッ!!」
ガゴッッ!
いつの間にか左足に蜘蛛の糸が絡みついており、そのまま引っ張られて思いっきり右の拳で殴られた。
続けざまに左の拳が襲い掛かって来たが、それは何とか回避。負けてはいられないと左の蹴りを放つと、スパイダー男爵も右の蹴りを放ってそれを弾かれた。
蜘蛛の糸が切れていたので、堪まらず距離をとる。
「強ぇッッ!」
なんで30階層にこんな強敵がいるんだよ!?
あー、でも体術しかやって来ないから殺傷能力は低いのか。
思いっきり殴られたにしては拳が軽かった気がするし。
しかしアレをどうやって倒す?
タッ
スパイダー男爵が突然目の前に現れた。
「チッ、休ませてもくれねーのか!」
ガンッ バシッ ゴスッ
考える時間すら無いので、とにかく殴り合う。
シュッ パシッ ガンッッ!
攻撃の合間に飛んで来る蜘蛛の糸を手で弾き、左の蹴りを食らわすと、今度は左の壁の上方に蜘蛛の糸を飛ばして瞬間的に壁に貼り付いた。
直後に壁を蹴って飛んで来たので、拳を掻い潜って真上に蹴り上げる。
ドガッッ!
「ヘルファイア!」
巨大な炎がスパーダ―男爵を包んだ。
ドサッ
ボディースーツが半分破れ、黒焦げになった人形がプスプスと煙を上げている。
「・・・あれ?」
早く倒さなきゃ他のみんなが心配なのもあって、一気に決めようとデッカい炎をぶつけてみたんだけど、思いっきり火が弱点だったらしい。
物理戦闘だけなら相当なレベルだけど、そこは30階層の敵。明確な弱点が用意されてたってわけか!火が弱点なのか魔法が弱点なのかは今となっちゃ不明だけど。
さすがに黒焦げの人形は持ち帰ってもしゃーないと思い、スパイダー男爵の残骸はそのまま放置することにした。
「うおっ、何なんだお前は!尻を撫でるんじゃねえ!!」
親父の声が聞こえたのでそちらに目を向けると、やたらと筋骨隆々の化粧の濃いおっさん人形に愛でられていた。
・・・お、オカマ!?
「こらー!お義父さんから離れなさい!」
ボゴッ!
グミがオカマ人形をメイスで殴ると、人形がギギギギっとそちらに顔を向けた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・
オカマ人形がコメカミに青筋を立てて、唇をプルプル震わせている。
ドガーーーーーーーーーーーーーン!
「わわわわわわわっ!!」
ドゴン ドゴン ドゴン
筋骨隆々のオカマ人形が振り下ろす拳は強烈で、石で出来た地面を破壊していく。
「グミ、下がって!!」
タタタタタッ ジャキン!
プシューーーーー! ドオオオオオオオオオオオオオオオン!
カーラの一撃が炸裂し、おっさん人形が煙を噴出しながら地面に倒れた。
「危なかったあ~~~~~!カーラありがとう!」
「助かったぜ・・・。俺は尻を撫でられただけだが」
「このおっさん人形ってさ、もしかして女が嫌いなの!?」
「そうか!オカマだから男に攻撃してこなかったのか!」
なるほど・・・。
食い倒れ野郎は女性に無害で、オカマ人形は男性に無害なのね。
いや、尻を撫でてくるらしいから完全に無害ってわけでもないが・・・。
猫ちゃんの拘りなのか知らんけど、変なとこでバランス取ってきますね!
とまあ現場はどこもカオスだったけど、何だかんだと1時間くらいで、大部屋にいた人形達を壊滅させることが出来た。
「ふーーーーーーーっ!結構手強い人形もいて大変だったな!」
「スパイダー男爵がメチャクチャ強かったですよ!魔法が弱点だったけど」
「へーーーー!小烏丸が苦戦するなんて珍しいね!」
「30階層なのに難易度が高すぎませんこと?」
「それは此方の人数が多いせいじゃない?」
「ソフィア隊はメロンの話しかしてなかったもんね。死ぬほど苦労したなら隊長に言ってたと思うよ」
「これから31階層を目指す人達には、5人くらいのチームで挑ませなきゃ危ないですね。25階層は大人数で攻略した方がお得なんですが」
「カーラ、ダンジョンマップに『80人は危険』と書いておいてくれ!」
「はいはーい。80人っていうか大人数だね」
なんとか大部屋をクリアした俺達一行は、道中に出現するドッキドキ野郎に悲鳴をあげ、食い倒れ野郎に怒りをぶつけ、新種の人形を撃破しながら、31階層を目指して突き進んで行く。
・・・・・
そして、ようやくボスのいる大広場に到達することが出来た。
「しかし此処も人形まみれだな!」
「一番後ろの高い所にいるのがボスかな?」
「豪華な椅子に座ってるし、絶対アレがボスだと思う!」
この世界の人達とは違い、それは俺と親父にとっては馴染みのある奴等だった。
「なあ小烏丸、アレってどう見てもアレだよな?」
「間違いない。『ガチョピン』と『モック』だ!!」
そうか。まさかあの怪獣達と戦う日が来ようとはな。
赤い流星がガチョピン&モックと戦うなんて、意外とファンが喜ぶ絵面かも!




