607 メロン騒動
ダンジョン入り口の赤い流星ハウスで寝ようとしていた所で、ゆさゆさと起こされてしまったわけだが、俺の眠りを妨げた犯人は行方不明のソフィアだった。
再会した直後に『おっぱいをどうぞ!』とか言う変態だったことに少し面食らったが、彼女達はなんと31階層大自然フロアからメロンを持ち帰っていたのだ!
とはいえ毒見もせずに彼女らに食わせるわけにもいかないので、まず俺がメロンを味見してみた所、糖度が限界突破した最高のメロンだということが判明。
ダンジョン31階層までの攻略のご褒美として『メロン食べ放題』を約束していたので、ソフィア達は俺の寝室で早速メロンを試食してみることに。
もちろんダンジョン攻略直後のメロンの美味さは格別で、彼女達は持ち帰ったメロンを一瞬で食べ尽くしたのだった。
「死ぬほど美味しかった!果物の女王と呼ばれるだけのことはあるわ!」
「今まで食べた果物の中で一番好きかも!!」
「こんな大きいメロンを一気に二つも食べちゃったよ!」
「地味にお腹空いてたもんね~」
「あの~、私まだメロンを食べたいんですけど?」
「どうせ夕方まで城に帰れないんだし、全部収穫して来ない?」
「そうね・・・。果物の王様の方も気になるけど、とりあえず今日はメロンを根こそぎ収穫しようか!でも私達には食べ放題の権利があるから、食べたくなったらその場で好きなだけ食べちゃっていいからね~!」
「「やったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
眠くてウトウトしていると、キャッキャと騒いでた彼女達の話が纏まったようで、メロンの甘ったるい匂いだけを残して階段を降りて行ってしまった。
結局どうなったのかよく分からんけど、とりあえず俺は寝よう。
「おやすみ・・・」
************************************************************
目が覚めた。
その瞬間目に飛び込んできたのは、部屋に山積みになったメロンだ。
なるほど。31階層組の中にマジックバッグ持ちがいないから、わざわざ此処まで何度も往復してくれたんだな。
山積みのメロンをマジックバッグに回収していると、大きなシートを持ったソフィア達が階段を上がって来た。
「あっ、小烏丸が起きてる!」
「おはよう!部屋がメロンまみれだけど、ここまで運ぶのって結構大変だったろ。あれ?そのシートって俺のだよな?」
「小烏丸が出してくれたんじゃない!寝ぼけてたの?」
「まったく記憶にねえ・・・。寝ながら臨機応変にシートを選択して渡すとは、俺も結構すごいな!」
「自画自賛とはお馬鹿ねえ。えーと、これで最後だから回収お願いね!」
「かなりの量だな!これだけあれば、城の皆に食べさせてやることが出来るぞ!」
一人半分までは無理かもだけど、4分の1の大きさならいけるだろ。
「ワタシはもういらな~い」
「うん。夕食を食べるのも無理!」
「またおトイレ行きたくなってきた・・・」
「いやいやいやいや、食い放題とはいえ何個食ったんだよ!?」
「4個?」
「私は5個食べたような気がする!」
「みんな4個か5個くらい食べてたと思う!!」
「マジかよ!!よくそんなに食えたな!?」
「小烏丸、私達は何日も寝泊りしながらダンジョンを攻略してたのよ?お風呂にも入れなかったし、食べなきゃやってられないのよ!」
そういやそうだった。
彼女達はメロンの大食いで、溜まりまくっていたストレスを解消したのだろう。
「本当にありがとうな!俺も31階層まで範囲を広げておきたいとこだけど、ダンジョンマップありでも一日で攻略は無理だよな?」
「無理だと思うわ。下手したらダンジョンに二日泊まることになるかも?」
「ワタシも二日かかると思う!」
「あの鎧軍団の階層だけで半日やられるんじゃない?」
「あーーー!あそこはキツかったね~」
「鎧軍団とかマジかよ!?」
一日で10階層分駆け抜けるには魔物で梃子摺ってるようじゃダメなんだよ。ダンジョンが拡大し、更にそんな階層があるならば、二泊で考えた方がいいだろうな。
しかし俺には、夜伽という連日の大仕事が控えてるわけで・・・。
こりゃあ他の皆に任せるしかないのかもしれん。
しかしマジックバッグ持ちが一人はいないと収穫が大変なんだよな~。
帰ったらミスフィートさんと相談してみるか・・・。
メロンを全て回収すると同時に、ボヤッキー達を含めたダンジョンチームが帰って来たので、今日もホクホク顔で城に帰還した。
************************************************************
城に到着してすぐにソフィア達を連れて食堂に駆け込み、和泉ら料理班に果物の女王を披露した。
もちろん城の皆に食べさせる前に、料理班が一足お先に試食をする。
「うんまあああああああああああああああああああああ!!」
「「おいしーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
メロンを見た瞬間から大興奮していた和泉だったが、思った通り大好物の果物だったみたいだな。他の料理班も初めてのメロンに大喜びだ!
ただソフィア隊は、何日も風呂に入れなかったのが気になってしょうがなかったようで、料理班の試食を見届けてすぐに大浴場へ駆け込んだ。
そしていつものように美味しい夕食に舌鼓を打ったわけだけど、31階層のことで話があったので、俺はミスフィートさんと同じテーブルに着いていた。
「美味すぎる!!流石は果物の女王だけのことはあるな!」
「でしょう?あれだけの果物を手に入れても和泉の顔色が冴えなかった理由は、21階層までの間にこの果物が見つからなかったせいなんです」
「なるほどな。実際に食してみると、その話にも納得だ!」
「ただ31階層の大自然フロアにあるのはメロンだけじゃないハズ!それを探すために俺も31階層を目指したい所なんですが、ソフィア達が言うには難易度が結構上がってるみたいでして・・・」
「やはり更に広くなっているのか?」
「広いし厄介な魔物もいるしで、攻略するのにダンジョンに二泊する必要があるみたいです。俺には連日の夜伽があるから、ちょっと無理そうなんですよね・・・」
まさかダンジョンで致すわけにもいかんしな~。
「当然私はすぐにでも向かうが、小烏丸もマジックバッグ持ちだから、31階層の探索に必要な人材だ。順番待ちをしている嫁候補には悪いが、二日ほど延期させてもらうしかないな」
「延期ってアリなの!?俺は順番とかよく知らないので、ミスフィートさんから通達してもらっていいですか?今日は大丈夫ですので、明日の予定だった人にですね」
「明日って私の番じゃない!!」
―――――突如話に割って入った人物。
それは、大浴場でツヤツヤになって戻って来たソフィアだった。




