53 時は動き出す
料理班に調味料を渡したその日から、軍の食事が格段に美味くなった。
まあ、そりゃそうだよな。今まで塩味しか存在しなかったのだから。
そして、軍のみんなの熱い要望により、ドライヤーと冷蔵庫を量産することになった。ココまで好評だと作る方も嬉しくなり、むっちゃ気合が入るってもんよ!
冷凍庫の方はダンジョンの魔石が必要なので、清光さん、虎徹さんと話をつけなきゃ無理だから、今回は諦めてもらう。
冷蔵庫は、小型のをいっぱい作るか、魔石を何個も使って出力を上げた大型にするかで悩むところだ。あー、でも厨房に小さい冷蔵庫がいっぱいってのも変だよな?やっぱ大型冷蔵庫を作ることにしよう。
・・・・・
ダンジョンで腐るほど剣を集めといて本当に良かった。
このペースで魔道具を作ると、鉄の消費が結構激しい。
まだまだ余裕はあるけれど、いずれは鉱山をジャバルグ軍から奪い取る必要があるな。それと鍛冶が出来る人員が欲しい。やっぱ俺一人ってのはキツイよ。
とりあえず巨大冷蔵庫とドライヤー5個が完成した。
こんだけドライヤーがあれば、奪い合いにならずに済むだろう。
ミスフィートさんにドライヤーを一つお届けしてから、冷蔵庫を設置しに厨房へ向かった。
厨房には料理班が何人かいたので、冷蔵庫を設置する場所を空けてもらった。
「よし!これですぐにでも使えるぞ」
「大きいわねー!これなら大量のお肉を冷やせるわ!」
「んで冷気が弱くなったら、この横にある扉を開いて、中に入ってる魔石を全て新品と交換して下さい。冷蔵庫に使用するのは、この水属性の魔石ね」
「わかったわ。みんなにもそう伝えておくわね」
「あ、そうだ!一つだけ面白い料理を教えとこうかな?」
「面白い料理!何かしら?」
「この肉の塊を使わせてもらいますね。・・・で、えーと、まずは鍋に肉の塊を入れます。そして醤油をドボドボと入れます」
マジックバッグから清酒を3本取り出す。
「これはお酒なんだけど、このお酒を少し入れてっと、これで準備完了!」
「料理にお酒を使うのね!?」
「あとは1時間ほど、弱火でコトコト煮込んだら完成です」
「それだけでいいの?」
「俺も出来を確認したいので、このまま1時間待ちましょう」
・・・・・
「よし、完成だ!」
鍋から肉の塊を取り出し、お手製の包丁で薄くスライスしていく。
そして味見。
「おおーーー、うめえ!フローラも食べてみ!」
「頂くわ」
フローラが肉を一枚取って口に入れる。
「美味しい!すごく美味しいよこれ!」
「これはチャーシューっていう名称なんだ。残った醤油は勿体ないので、別の料理にでも使い回して下さい。肉の旨味が出ているので、普通の醤油より更に美味かったりしますよ。油がすごいけどね」
「残ったお醤油で、このチャーシューを更に作るのもアリよね?」
「ん-、いや、醤油が煮詰まってしまうから、連発するのは難しいかも?チャーシューを作る時は、たぶん一回で大量に作った方が上手くいくと思う」
「なるほど・・・、まあ色々試してみるわね。とりあえず、今日はこのままチャーシューを作りまくるわ!」
「野菜と一緒に食卓に出せば、絶対みんな喜ぶと思いますよ!」
ってことで、今日の夕食にはチャーシューが出てくるのが確定した。
いやー、久々のチャーシューはマジで美味かった。そうだ!今度ドラゴンチャーシューを作ってみよう。どう考えても美味いに決まっている!
部屋に戻ろうと歩いていたら、大きな声が聞こえてきた。
「門でジャバルグの兵が暴れてるんだ!助けてくれ!」
「なに!?わかった、すぐに向かう!」
・・・とうとう平和な時間も終わりか。
「ミスフィートさん、俺も行きます!」
「ああ、一緒に来てくれ!」
急いで門に来てみると、すでに何人もの死体が転がっており、スキンヘッドとモヒカンが5人暴れていた。
「あの腐れ外道共が!!ミスフィートさん、皆殺しで構わないですよね?」
「当然だ!生かして帰すな!」
「オラオラ!!雑魚共がなぜ俺らの邪魔をしやがる!」
「見張りはどこに行ったんだ?あ?」
「吐かねえとテメーもぶっ殺、ゲハッ!!」
「あん?何が、ってガッ!?」
外道を2人瞬殺した。
ミスフィートさんも2人殺ったようだ。
「なっ!キサマら!こ、こんなことをして、タダで済むとでも思ってんのか!?」
「で?お前は此処へ何をしに来た?」
「何をって、街の巡回に決まってんだろうが!」
「あー、すなわち街単位での巡回任務か。この感じだとジャバルグはまだ異変に気付いていないようだな」
「キサマっ!ジャバルグ様を呼び捨てにしやがったな!?」
「もうこれ以上、大した情報は聞けなさそうですね」
「だな」
「がひィッ!!」
必要な情報は聞けたので、最後の1人はミスフィートさんがサクッと始末した。
「そこの2人、悪いがこの腐れ外道共の死体を処分しといてくれ。街の住民は皆で丁重に葬ろう」
住民を埋葬し、領主の館に戻ってきた。
「巡回が来るのでは、我々が門を見張らないと駄目だな」
「軍の人数は増えてるんですか?」
「仕事の無い住民が200人ほど兵士に志願して来た。だが、まだ全然戦いの素人で、今はとてもじゃないが戦力にはならない」
「じゃあ戦争になっても、我々だけで動いた方が良さそうですね」
「そうだな。3ヶ月も訓練すれば、それなりにはなるだろうが」
こればっかりは、急いでどうこう出来る話じゃないもんな。
しかし巡回が来るとなると、いずれはジャバルグに察知されるだろう。
それまでに少しでも戦力を増大しなければならない。
となると、領地がこの街だけじゃダメだ。どんどん攻めて領地の拡大をして行く必要がある。
束の間の平和もこれまでだな。尾張を奪取するまで突っ走る時が来たのだ。




