46 ゴンズの最期
―――――ゴンズの私室―――――
「ゴンズ様!大変だ!!反乱軍が攻めて来た!!」
「ああん?騒がしいとは思ったが、あのクソ女か!とっとと撃退しろ!!」
「しかし、もう館の中にまで侵入しています!ゴンズ様も戦闘の準備を!」
「なんだとお!?」
糞が!めんどくせえ。俺様に仕事させるんじゃねえよ屑共が!
そういうのを撃退するのがテメーらの仕事だろうが!
仕方なく愛用の戦斧を手にする。
『ギャアアアア!』
チッ、もうそこまで来てんのか。糞が!思い知らせてやる!
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―――――小烏丸視点―――――
バタン!
「いたか?」
「こっちの部屋にはいません!」
「みんな、不用意にドアの前に立つな!ドアを突き破って槍が飛び出してくる可能性もあるからな!」
「はいッ!」
ドアを蹴破り部屋の中を確認するが、ココもハズレだ。
「後はもう奥の部屋だけだ!私がドアを蹴破る!」
ドガッ!
ミスフィートさんが部屋に突入した。
慌てて後を追う。
「見つけたぞゴンズ!観念して大人しく殺されろ!」
「オラァ!!」
「フンッ!」
横から不意の攻撃が来たが、ミスフィートさんが難なく返り討ちにした。
その隙に、軍の仲間達も部屋の中に侵入する。
「この反乱軍如きが!!俺様に勝てるとでも思っているのか!?」
「もう今までの私達ではないッ!ジャバルグ軍、恐れるに足らず!」
あれがゴンズか。例に漏れず、奴もスキンヘッドなんだな。
デカい戦斧を持っていて、実力の違いを感じさせる風貌だ。
「ゴオオラアアア!!」
ゴンズ渾身の一撃がミスフィートさんに襲いかかる。
だが、彼女はそれを紙一重で躱す。
「遅い!私達も疲れているんでな、そろそろ決着を付けさせてもらうぞ?」
「こんのクソガキャー!!!」
ゴンズの横薙ぎの戦斧が再度ミスフィートさんに迫る。
ガシャン
しかし彼女の刀・毘沙門天が戦斧を持つ右手を斬り落とす。
「あ?・・・ギャアアアアアアアアアア!俺の右手がああああああ!!」
そしてミスフィートさんのアイコンタクトで、カーラ、カトレア、チェリンが一斉に襲い掛かり、ゴンズの息の根を止めたのだった。
「ふーーーっ、私達の勝利だッ!!!」
「「わーーーーーーーーーーーっ!!!」」
これにてゴンズの討伐に成功。
ルーサイアの街は、ジャバルグの手から解放された。
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―――あれから3日経った。
ルーサイアの街は、反乱軍の手によりジャバルグ軍から解放され、奴隷のように働かされていた人々に笑顔が戻った。
しかし長く厳しい圧政からの解放なので、どうしたらいいかと戸惑う人ばかりだ。
これからはミスフィート軍がこの街を統治し、皆に仕事を与えなければならない。
そのことを考えると、解放をするよりもむしろ統治の方が大変かもしれないな。
門の見張りは一時的に民衆に任せ、領主の館に反乱軍のメンバーが集められた。
「これより論功行賞を始める!」
そうなのだ。頑張ったみんなにはご褒美を与えなければならない。
今まではそんな余裕どころか食うことで精一杯だったから、みんな給料すら貰ったことが無いんだってさ。
しかしこれからはその働きによって褒美を与え、忠誠心と向上心を上げて行く必要があるのだ。
この日までに俺はミスフィートさんと相談し、誰にどんな褒美を渡すかなどを話し合った。その話し合いの結果が発表される。
「此度の戦いにより、ルーサイアの街を、ようやくジャバルグ軍の手から解放することが出来た!そこで、奴らを駆逐する為に必死に働いてくれた兵士全員に、金貨30枚を与えよう!全員で30枚じゃないぞ?1人につき金貨30枚だ!!そして特に活躍が目覚ましかった者達には、更に特別な恩賞を与えよう!!」
「「わああああああああああああ!!」」
ミスフィートさんの大盤振る舞いに、場が一気にヒートアップした。
ちなみに金貨1枚は日本円で1万円くらいの価値がある。
尤も今の廃墟みたいな街じゃ、使えるかどうか微妙な所でもあるのだが。
「カーラ!前へ」
「ハッ!」
呼ばれたカーラが数歩前へ出る。
「今回の戦いでキミの活躍は飛び抜けていた。なので戦功第一位とし、金貨を更に20枚、そして服を授ける!」
「服、ですか?」
「最初は武器か服かを本人に選ばせようと思っていたのだ。キミならきっと武器を選択するだろうな。だが皆が現在持っている小烏丸の刀は、十分過ぎるほど敵に通用する事がわかったので、まずは服に決定したのだ」
「確かにこの刀は最強ね!面白いように敵を倒せたもの!」
戦闘で梃子摺るようならば、また報酬も変化したかもだけどね。
有能な兵士を、刀+服で一気に強くしたい気持ちもあるから。
「そういえば、私が突然この服を着始めた理由を言ってなかったな。その理由は二つある。まず見た目が非常に綺麗で可愛らしかった事、もう一つは凄まじい防御力だった事だ」
「アタシが今着ている服よりも凄いの?」
「ハッキリ言って桁違いだな!小烏丸に言われたんだ。総大将は、軍の誰よりも長く生きねばならないと。私は皆を勝利へ導かなければならない!」
「その通りね。隊長が倒れればこの軍は終わる」
「そういう理由で、キミには服を授ける!きっと気に入るぞ?」
カーラの前まで歩いて行き、箱から一着の服を取り出す。
ミスフィートさんと相談し、どれが彼女に似合うか考えて決まったのがコレだ!
[忍装束(女性用)]
:謎の化学繊維で作られた服。付与魔法が込められている。評価S
:斬撃耐性++ 刺突耐性++ 衝撃耐性++ 魔法耐性++ 炎耐性++
熱耐性++ 冷気耐性++ 汚れ耐性++ 精神耐性++
:自動修復(中)サイズ自動調節 防水機能 消臭脱臭機能
すなわち、くノ一の衣装だ。
俺の女性服運は異常だからな、こんなのまで持っているのですよ。
全体的に黒い衣装なのだが、帯などは赤で、服の所々にも赤い模様が入っていて、非常にセンスがいいデザインだ。本物の忍装束と言うよりはコスプレって感じだが、それだけ洗練されていてむしろ格好良い。
カーラの性格だと、フリフリの可愛い服よりも、機能性重視で格好良い服を好みそうな感じがしたのでコレに決めた。軍のみんなの性格や指向など、ミスフィートさんの情報を元にあれこれ悩みながら2人で考えたのだ。
「・・・・・・・・・・・・」
「どうだ?」
「・・・・・・むっちゃ格好良い!アタシはこれを着れるのか!」
よっしゃビンゴだ!
恩賞の場で気に入らん顔されるワケにはイカンから、マジで良かった!




