295 方針の決定
ダンジョン産の骨剣が約3000本。
打ち直せば骨剣1本から刀が三振りほど作れるんだけど、今回は骨剣のまま使わなければならない。そう考えると、聖帝軍との戦争が終わったら一旦全部回収しなきゃだな。骨剣は一時的に貸し出す感じにしよう。
「あんだけ集めた骨剣が全て無くなるのは困るんで、後で回収することにします。刀ならば大量のストックがありますので、聖帝軍との戦争が終わったら伊勢の兵達には刀の訓練をさせましょう」
「うむ!骨剣は本当に良質な鉄なので、地味にアレも貴重な資源だ」
「え~と・・・、兵を一旦解散させるのはいいけど、伊勢の守りはどうするの?」
チェリンくん、実に良い質問だ!
「俺達は伊勢国内のことを何も知らないから、これからヒューリックと話し合う必要があるけど、当面は城や砦で防衛に徹してもらうつもりだ。その間にドワーフ達が線路を敷いて機動力を確保。俺は和泉と一緒に武器や服の付与を終わらせる感じかな?聖帝軍がいつ攻めて来るかだけど、最短でも一ヶ月以上はかかるハズだ。なんせ伊勢国境での戦争を聖帝軍の密偵がどこかから見ていたとしても、自国まで帰るのに一ヶ月以上かかるからな。バイクでもあるなら話は別だが」
「あぁ~、そっか!尾張基準で考えちゃ駄目よね!ウチらなら2日でルーサイアまでぶっ飛んで行くけど、普通は歩きだもんね!」
「急いで帰ったとしても密偵が戻った瞬間攻めて来るとも思えないから、二ヶ月くらいの猶予はあるんじゃないかな?俺達の機動力ならば一ヶ月の道のりを2~3日にまで短縮出来るから、ルーサイアに帰還していても伊勢までの援軍が間に合うんだ」
「機関車凄すぎる!!!」
「小烏丸が線路を量産していたのが、今ここで生きるわけだな!」
「本当に凄いことですわ!ミケネコ城から伊勢のお城までほんの数日で行けるなんて、普通じゃ絶対考えられませんわ!」
俺が鼻高々なのは勿論だけど、皆も尾張の凄さがわかり始めたみたいだな。
「よし!では会議はこれくらいで良いな?明日はヒューリックに方針を伝えてから、皆それぞれの城に帰還するとしよう」
「ああ、ヒューリックはルーサイアに連れて行こうと思ってます。骨剣を直に見せて、伊勢の兵士達が皆扱えるのか確認しなければなりません。開戦前に胸当てをいっぱい作ったので、手持ちの骨剣が一つも無いのですよ。なのでしばらく伊勢の兵達を纏めるのは別の者に任せるつもりです。その者に通信機を持たせて、俺が定期的に指示を出す感じになりますね」
「なるほど。確かに骨剣が全てミケネコ城にあるのならばそうするしかないな。わかった、ヒューリックも一緒に連れて帰ろう。それでは皆ご苦労であった!今日はゆっくり寝てくれ!」
というわけで会議は終了!これでやっと一段落だ。
・・・あ。牢に捕虜が入ったまんまやん。でも今から外に出すと、また一から説明しなきゃならんよな?
よし、明日までぶち込んで置こう。悪いが朝まで我慢してくれ!
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一晩ぐっすり寝て、早朝に捕虜を解放した。
っていうか、もう彼らはミスフィート軍の兵士なので、事情を説明しながら美味い物をたらふく食わせて、気分良く伊勢の兵達の所へ送り返した。
当然ながら事の成り行きに驚いてたぞ。
「ヒューリック軍で家老を務めていたレヴィンと申します!」
ヒューリックの代わりに伊勢の兵を纏めるのは、このレヴィンという男のようだ。大体40歳くらいだろうか?乱世を生き抜いて来た風格が伺える。その隣には、この男を連れて来たヒューリックが立っている。
「軍師の小烏丸だ。本来ならば一度直に伊勢の城を確認せねばならないのだが、緊急で聖帝軍と戦う準備をする必要がある。なので俺は尾張の城に一旦戻らなければならない。そしてその準備の為にヒューリックも連れて行くことになった。その間、レヴィンには伊勢の兵達を任せたい」
「承知致しました!しかし兵をどの様に動かして良いものか、自分では判断出来かねます」
マジックバッグから通信機の子機を取り出し、レヴィンに渡した。
「これは?」
「通信機という名の魔道具だ。俺の方から通信するんで、通信機から音が聞こえたら、そのボタンを押してくれ」
「は、はあ?」
その場からスタタタタっと100メートルほど離れ、レヴィンに通信を送った。
『これで良いのだろうか?』
『初めて見る物故、我にもようわからぬ』
ハハッ、変な物を渡されて困惑してるようだ。
「小烏丸だ!聞こえるか?」
『わわっ!どこからか声が聞こえる!?』
『ぬう・・・、この魔道具から聞こえたのか??』
「正解だ。この魔道具は遠くの者と会話をすることが出来るんだ。コレも我が軍の切り札の一つだな」
『なんと!この様な魔道具があるとは!!』
『これは凄いぞ!他国にいる密偵からの報告を、すぐに本国に伝えることが出来るのか・・・』
流石はヒューリックだ。この魔道具の凄さを一瞬で理解しおった。
「まあそういうことだ。この通信機を使って、定期的にレヴィンへの指示を出す」
『なるほど!わかり申した!!』
二人の所へ戻って来た。
「通信が終わったらそのボタンをもう一度押してくれ。そうしないと、どんどん魔石の容量が減ってしまうんだ。いつの間にか魔石の容量が尽きていたりしたら、いざという時に情報を伝えられなくなる」
「それは大変です!えーと、こうですか!?」
レヴィンがボタンを押すと、光っていた小さなランプが消えた。
「今ここの光が消えただろう?これでもう、通信機を放っておいても魔石を消費しなくなるわけだ」
「なるほど!わかり申した。此方から要件を伝えたい時はどうすれば?」
「ああ、今押したボタンを押すんだ。ちょっとやってみてくれ」
プルルルル
「プルルルって音が聞こえるだろう?これは俺の方の通信機から鳴っているんだ。そして俺の方の通信機のボタンを押すと、こうやってまた会話が出来るようになる。そして会話が終わったら、さっきのようにボタンを押して終了だ」
「おおおっ!これは凄い!よし、もう使い方は大丈夫です!」
いや~、何回もやってる説明だけど、教えるのに毎回苦労するな。
まあ相手の驚く顔が楽しくもあるんだけどね。




