279 防衛戦
急いで防壁まで辿り着いたのだが、どうやらまだ敵の攻撃は始まっていないようだった。
「間に合ったか!」
「戦闘音は聞こえないわね」
敵の様子を探る為に防壁の上へ登ってみる。
「ぶはっ!本当に大軍じゃねえか!」
「あっ、小烏丸様!待ってました!!」
「戦闘が始まってなくて良かったよ。壁を壊されてたら守るのも大変だからな」
「うわぁ~、・・・何人いるのよ?ジャバルグと対峙した時より多くない?」
「えーとな、そういう時は指でこうやって輪を作るんだ。そして輪の中に何人いるか数えて、輪の中に100人いたとすると、輪が10個で大体1000人だ。すごく大雑把だけどな!遠くにいる人は小さく見えるし」
「なるほど!!」
カーラと一緒に敵兵を数えてみる。
「うーむ・・・、なんか10000人以上いねえか?」
「・・・いるかもしれない」
こりゃあ、ちょっと厳しいですよ?こっちは3000しかいないんだぞ!まあ防壁の上から攻撃できるから、兵数の差は覆せるかもしれんけどさ。
あと、ビームライフルの先制攻撃で1000人ほど削れるハズだ。美濃との小競り合いで一度見せているから、それを見られていたら対策されている可能性が無くもないけど。
とにかくまだ敵さんの準備も整ってないようなので、防壁の上に守備兵をずらっと並べた。
・・・・・
『我は伊勢大名のヒューリックである!聖帝様の命を受けて尾張に宣戦布告する!』
おお!?デカい声で宣戦布告されたぞ!向こうにも拡声器あんのかな?もしくは声を増幅する魔法とかがあるのかもしれん。
しかしやはり伊勢の軍だったのか。聖帝の命を受けたってことは、聖帝軍に従属しているとみて良さそうだ。
『降伏するならば命まではとらん!速やかに門を開けて尾張を明け渡すがよい!』
あの伊勢大名ヒューリックってのは、案外話の分かる男かもしれんな。ジャバルグならば『お前ら全員皆殺しだ!』って問答無用で攻めて来るだろうから。
とにかく交渉を持ち掛けて来たからには、こっちも返事をしないとな。
マジックバッグから拡声器を取り出す。
「尾張軍師の小烏丸だ!ヒューリック殿は慈悲深い御仁であると見受けられるが、戦いもせず降伏などするわけにはいかない!それに我々は聖帝軍に勝つつもりでいる!もし攻撃をしてくるならば、我らも反撃に転じて伊勢に攻め込むことになるが、その覚悟はあるのか?先に言っておくが、我らは聖帝軍よりも強いぞ?致命的損害を受けて、伊勢を獲られてもよい覚悟があるならば攻めて来るがいい。お相手致そう!」
周りの味方が、みんなキラキラとした目で俺を見ている。
味方の鼓舞にもなったかな?
『ほう、言うじゃないか!此方も引くわけには行かぬのでな。ならば開戦だ!!』
向こうにも引けぬ事情があるのなら、戦争もやむなしか。
わかったよ、ならば殺し合おうじゃないか。
「みんな聞いたな?戦争の始まりだ!とりあえず援軍が来るまでは防衛戦に徹するぞ!そして本隊が合流したら、今度はこっちが攻める番だ!」
「「オーーーーーッ!!!」」
ビームライフルの調整をしていると、敵軍が前へ出て来た。
出て来たのは全員フルアーマーだ。アレは間違いなく弓・魔法対策だな。
まだ距離があるので、強化弓といえどあの鎧を貫くのは厳しい。
「まだ弓は撃つなよ?もっと引き付けなきゃ、強化弓といえど効果が薄い」
「ん??なんか鎧の後ろに大きいのが見えない?」
「なんだろう?攻城兵器か?」
ここからじゃ後ろまでは見えないが、前面が全て鉄の戦車っぽい乗り物?だ。三河や尾張じゃ機関車が走ってるが、他国にも乗り物とかあるんかねえ?
まあ何にしても、さすがに対策も無しに防壁攻めはしないか。
問題はアレが近距離攻撃なのか遠距離攻撃なのかだが・・・。
鎧兵がジリジリと前進してるな。遠距離攻撃だとしても射程距離は短そうだ。
「よくわからんけど、おめおめとアレに攻撃されるワケにゃいかんな。魔法部隊!近付いて来たら一斉に魔法をぶつけるから準備してくれ!」
「「了解!」」
効果が無かったらビームライフルをぶっ放すしかないが、あの攻城兵器を破壊する為だけに使うのは勿体ないんだよな~。
フルパワーで一発撃ったらエネルギー補給に6時間かかるから、出来れば敵軍の密集した所にぶち込みたい。だが防壁を破壊されちゃ堪らんから、攻城兵器を放っておくわけにもいかない。
ジッと攻城兵器を眺めてるんだが、速度はあまり出なさそうな感じだ。
もし機関車並みの機動力ならば、俺なら鎧兵なんか並べずにそのまま防壁に突っ込ませる。
あと大砲の筒みたいのも無いから、遠距離攻撃ってのも考えにくいな。十中八九、アレを突撃させて防壁を壊すのだと思う。なんか前が尖がってるし。
破壊強化を付与した突進型兵器と見て間違い無かろう。
ある程度接近した所で攻城兵器が止まって、鎧兵が道を開けた。
まだちょっと距離があるが、攻撃するなら今しかない。
「魔法部隊!あの攻城兵器に一斉攻撃だ!」
ついでに俺も一旦ビームライフルを地面に置いて、赤い弓を構える。
「放てーッ!!」
攻城兵器に向かって、エルフ達の魔法が一斉に放たれた。




