211 まさかのお土産
夕方になるとダンジョン探検隊が帰って来た。
「小烏丸ー!今日はお土産を持って帰って来たぞ!」
おや?ミスフィートさんの声だ。お土産って何だろ?
「おかえり~!で、ダンジョンのお土産ですか?」
「そうだ!魔物も見せたいが、床が汚れてしまうからそれは後だ」
ミスフィートさんが、普通のバッグから大きな何かを取り出した。
「どうだ、凄いだろう!」
「うおおおおおおお!卵やん!!しかもデケーーー!」
「ただ不思議なことに、なぜかマジックバッグに入らなかったのだ」
「ああっ!マジックバッグに生き物は入れられないのですよ」
「そうだったのか!というか、卵って生き物だったのか」
「そりゃもちろん生きてますよ。死んでたら雛になりませんし」
卵が欲しいとは言ってたけど、思ってた以上の大物が来おったわ!
「11階層のボスがコカトリスだったのだ。そいつを倒した後、広場に卵が落ちているのを発見してな。毎回手に入るかはわからないが持ち帰ってみたのだ!」
「コカトリス!?それって豪華羽毛布団の素材じゃないですか!コカトリスが毎回手に入るならば、それだけでもお宝クラスですよ!!」
「やはり布団の素材だったか!どこかで見た名前だと思ってずっと考えていたのだが、ついさっき思い出したのだ!もちろん倒したコカトリスも持ち帰ったので、羽を毟れば羽毛布団が作れるな!」
「布団にするならば大きな布も必要になりますね。毎日羽毛布団が一つ作れるなんて最高じゃないですか!」
尾張ダンジョン最高やん!
鶏肉に卵に羽毛布団だろ?無限に手に入るコカトリス素材ってマジでやべえな!
「この卵はどうする?」
「ああ、和泉に渡しましょう。これがあればプリンが作れます!」
「プリン??」
「無茶苦茶美味いお菓子です!とにかく卵を使うお菓子は数多くありますので、和泉に任せておけばどんどん新作が誕生しますよ」
「それは楽しみだな!よし、早速厨房に届けよう!」
2人で厨房へ向かった。
ミスフィートさんはデカい卵を抱えているので、俺がドアマンとなった。
・・・・・
「和泉ーーー!ミスフィートさんが、すごいお土産を持ち帰って来たぞ!」
「え、何?お土産??」
「これで美味いお菓子を頼む!」
「あーーーーーーーーーーーっ!卵じゃないの!!!」
「プリンを作ってくれ。その大きさなら結構な量が作れるだろう?」
まさかの卵ゲットに和泉も驚いたようだけど、その大きさを見て何の卵なのか考え込んでいる。
「これって何の卵なの?ダチョウの卵とか?」
「コカトリスだ!」
「コカトリス?何それ」
「魔物だな。ダンジョンの11階ボスらしいぞ」
「んーーー、魔物の卵って食べても大丈夫なのかしら?」
「どうだろなー?魔物の肉は普通に食べられてるんだし大丈夫じゃね?生卵で食うのはさすがに怖いけど」
「なるほど・・・、わかったわ。じゃあ今日はプリンね!」
「プリンという名前がすでに美味そうだな!期待しているぞ」
・・・・・
夕食はスパゲッティだ。
和泉特製のミートソースが上に乗っかっていたのだが、こういう細かい部分でもミンサーが使われているんだなーと感心した。
いきなり麺製造機とミンサーが活躍するとは、作った俺としても感無量である。
「すごく美味しかったーーー!!」
「麺ってこんなに美味しいのね~~」
「最初見た時は何かと思ったけど、こんな料理があったなんて・・・」
わかるぞ!俺も久々に食ったが無茶苦茶美味かった!
「さあさあ、みなさんお待ちかねのお菓子よ。今日は『プリン』です!」
それぞれのテーブルにプリンが出される。
「わぁ~~~!プルプルしてる!!」
「これは間違いなく美味しいわ・・・。見ただけでわかる!」
「ミスフィートさん、たぶん食ったら驚きますよ」
「もうすでに驚いている!こんなの美味しいに決まっておろう!」
そして皆がプリンを口に入れた時、辺りは静まり返った。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「「おいしーーーーーーーーーーーーー!!!」」
ですよねー!
「ね、ねえ!おかわりはないの!?」
「うう、もう無くなってしまったわ・・・」
「足りないですわーーー!!」
みんなの気持ちは非常に良く分かる。でも太りますよ?
「そうなるだろうと思って、今日は第二段を用意してまーす!」
皆のテーブルに第二段が並べられた。
「わぁ~~~!今度のは真っ白!!」
「さっきのプリンと似てるけど色が違うわね」
「でも美味しいに決まってるわ!」
「コッチはさっきのと少し違って、牛乳プリンです!さあ召し上がれ!」
口に入れると、さっきのプリンと比べてスッキリした味わいだった。
「ほお~~~!こっちの牛乳プリンも美味いな!!!」
「私は最初の黄色い方が好きかな?でもこっちも美味しい!」
「イズミの料理の多彩さって凄すぎない!?もうこれは革命だよ!」
「厨房には和泉が作った料理のレシピノートがあるらしい。それを見ながら作れば、誰もが同じ料理を作れるんだぞ。もちろん料理のレベルを上げなきゃ同じ味は出せないけどな」
料理班の連中はどんどん育ってるのだろうな。
将来その中の誰かが料理の店なんかを出したりして、伝説の料理人と呼ばれたりするのかもしれない。
ただ現状では俺の調味料だけが頼りなので、この世界の素材からちゃんと調味料を作り出す必要がある。そうなって、ようやく尾張全体に食の革命を起こせるんだ。
しかし三河では、もうすでにその段階まで行っている。尾張もとっとと追いつかなきゃな~。
「プリンがこれほど美味しいとなると、毎日コカトリスを狩らなきゃいかんぞ!」
「明日あたりカーラ達が帰って来ますよね?ミスフィートさんも毎日は大変でしょうから、たまには彼女達に任せても良いんじゃないですか?」
「そうだな~。まだ手に負えない魔物が出て来る感じじゃないし、万が一危険な魔物が出現しても、カーラ達ならば不慮の事態にも対応出来よう」
俺も気にはなってるんだけど、今はやることいっぱいなんだよね。
それが落ち着いたら、またダンジョンに特攻しよう。




