199 機関車が完成
ドワーフ達にレールを見せた後、レールのサンプルと写真を渡して、注意点などを細かく指導した。
バイクを運転しながらレールを敷くルートに目印を付けて行き、後はもう全てドワーフ達に任せることにして、俺は動力部の製作に入った。
とはいえ俺にはバスを作った経験があるので、頭を悩ませること無く簡単に作ることが出来た。俺にとっての難関はエンジン以外の部分なんだよね。
とりあえず動力部を組み込んだトロッコを作り、軽く試運転してみる。
・・・・・
「うおおおおおお!漕がなくても勝手に走っとるぞ!!」
「これは凄いのう~」
「よし、どうやら上手く行ったようだな!後は停止ボタンがきちんと作動するかどうかだ」
例え不具合が起きてもブレーキをかけて止まれるよう、安全にはすごく気を使った設計だ。ガラス工場から出発して、採掘現場の終着点にピッタリ止まることが出来れば大成功かな?
終着点から距離を計算し、予め目印になる標識を少し手前に立てておいた。
「標識だ。コイツが見えたら停止ボタンを押す!」
このボタンは急ブレーキではなく、エンジンだけを停止させるのだ。
そしてブレーキを踏みながら、自分で止まる位置を調整していく。
ピッタリと、止まりたい位置に停車出来れば大成功。
でももし早く止まりすぎた場合でも、エンジンを起動させてアクセルを踏めば前に進むことが出来るので、それほど操作が難しいわけではない。
「よーーーし、大成功だ!我ながら完璧なブレーキングだったな」
「上手いもんじゃのう!!」
「でも止まるのを忘れたら酷いことにならんか?これ」
「ぶっちゃけて言うが、トロッコが大破して死ぬかもしれん」
「「駄目じゃねえか!!!」」
「まあそこは、とりあえずレールを余分に伸ばして対処かなあ。完全にブレーキを踏み忘れたとかじゃなければ大丈夫だ。運転しながら寝てたらアウトなんで、原則として最低二人で乗ることを徹底しよう」
このルートのトロッコは、終点が山奥の採掘場だからなあ・・・。
機関車でココに来ることはないので線路は一本のままの予定。帰りはトロッコを反対向きにセットして、来た道を戻って行く感じになる。機関車と違って所詮はトロッコだから、そういう身軽で雑な使い方が出来るのだ。
その後、運転手を交代しながらガラス工場に帰還した。
新しいトロッコはこのまま採掘班に使ってもらう。
くれぐれも気を付けて運転するように念を押して、俺は機関車の製作に戻った。
しかしドワーフ達がめっちゃ目をキラキラさせていたんで、今日はもう仕事というより遊んでるような感じになりそうだな。普段頑張ってくれてるから、それはまあ別に構わないんだけどさ。
ただ、遊びに夢中になって事故るんじゃねえぞ?
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それから一ヶ月後、この世界初の機関車が尾張に誕生した。
正規品の動力部が完成した時に清光さん虎徹さんにそれぞれ手渡したので、三河と遠江でもそろそろ機関車が完成している頃かもしれんな。
あっ!向こうが先に完成させていたら世界初の称号を取られてしまう!
まあそれはいいんだけど、どっちみちレールの方はそんなに早く作れないから、機関車でトラネコに行ったりするのは、まだ出来ない。
そうだ!エンジンの礼として、牧場までのルートを優先して先に作ってもらっている所なので、行けばすぐにでも牛乳が手に入るかもしれん!
プルルルル
『あいよ』
「どうも小烏丸です!ようやく尾張に機関車が誕生しましたよ!」
『早えなオイ!ああ、でもバスを作ったノウハウがあるもんな~』
「まあそうですね~、『どれくらいの強度なら大丈夫か』なんてのはバスの経験が生かされてますね」
『そうそう!走っててぶっ壊れたじゃ話にならんからな。俺が苦労してるのはまさにそこだ!』
「えーと早速牛乳を買いに行きたいのですが、牧場までの線路は出来てますか?」
『牧場までのレールならば完成しているぞ。だがまだ標識も何もない状態だから、場所がわからんと止まる時に危険だな。俺も尾張の機関車に乗って道案内してやるよ』
「それは助かります!分岐器の切り替えも必要でしょうから、一緒に来てくれるなら話が早い!」
『ああ、それもあったな。俺の方はいつでも行けるんで、そっちの用意が出来たらいつものように虎徹に通信頼むわ』
「了解です!たぶん行くのは明日になると思います」
『オーケイだ』
よし!後は何人連れて行くかだな。と言っても牛乳を買いに牧場に行くだけだから、ほとんど機関車のお披露目がメインって感じだけど。
しかし清光さんの機関車はまだ未完成だったか。ならば、たぶん虎徹さんもまだだろう。尾張の機関車がこの世界初って言い張れるのは地味に大きいぞ!
なんにしても最初はミスフィートさんに報告だ。
トントントン
「入れ」
ガチャ
「やっと機関車が完成しました!」
「おおっ!とうとう出来たか!」
「それでですね、早速明日にでも三河の牧場に牛乳を買いに行こうと思うのですよ」
「ああ、そうだったな。最初の目的は牛乳だったか」
「たかが牛乳を買いに行くために、やたらと大掛かりなことになっちゃいましたね!それでですね、折角なので機関車に興味がある人をみんな乗せて行こうかなと」
「んーーー、それってほとんど全員が興味あるんじゃないか??」
確かに、全員が機関車に乗りたいって言いそうな気がする・・・。
「やっぱみんなは無理か・・・、エルフもドワーフも興味津々だからなあ」
「こちらで連れて行く人を厳選した方がいいだろうな。当然私も行くぞ!」
「そうですね。ミスフィートさんと和泉は確定として、後は、今もレールを必死に作ってくれているドワーフ達にしようかな?機関車の素晴らしさを体験すれば、更にやる気が出るだろうし」
「良いんじゃないか?でもまだトラネコまでのレールを作ってる最中だから、明日連れて行くのは、ドワーフの街にいる作業員以外のドワーフになるのではないか?」
「確かに現場にいる作業員は拾いに行くのが大変ですねえ・・・。牛乳のために作業を中断させるのもなんですから、そっちは次回ですかね」
とりあえずは街にいるドワーフ達と、ガラス工場勤務のドワーフだな。
それ以外の乗客は、城の女の子達に適当に声を掛けよう。




