表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

196/896

196 お菓子

 今日は和泉の紹介をする為に、ミスフィートさんの部屋に来た。



「彼女の名は和泉、俺と同郷の者です。トラネコで拾って来ました」

「小烏丸の同郷か!私はミスフィートだ。宜しくな」

「拾って来たとは酷いじゃない!えーと、和泉です!初めまして」


 この国の大名が相手でも、変に緊張とかはしていないみたいだな。


「それでですね、和泉を料理班に入れたいと思ってるのですよ」

「料理班に?」

「ここ最近の料理、すごく美味しくなったと思いませんか?」

「そう、それだ!昨日の肉料理なんてフワフワで感動したぞ!」

「一昨日から和泉が料理班に参加してまして、あの美味しい料理の考案をしているのは和泉なんですよ。和泉、例のモノを出してくれ!」



 和泉が、手に持っていた箱をミスフィートさんの机の上に置いた。

 そして箱を開けて中身を取り出し、ミスフィートさんに話しかける。



「ミスフィートさんは甘い物って好きですか?」

「んーー、甘い物などほとんど食べたことが無いから、好きとも嫌いとも言えんな」

「えーとですねえ、これは『クレープ』と言うお菓子です!本当はケーキが作りたかったんだけど、卵も牛乳もバターも無い状態で作れるお菓子となると、すごく限られてしまうんですよね~」


 卵な~、確かに卵があれば色々な料理やお菓子が作れるだろう。


 しかし鶏なんぞ一度も見たことが無い。たとえ空を飛んでる鳥の卵を発見したとしても、1個2個じゃ話にならんのよね。どこかに巨大な鳥がいて大きな卵でも手に入るならば、探す価値があるのかもだけど。


「さあ召し上がれ!」


 ミスフィートさんがクレープを手に取り、かぷっと噛り付いた。


「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」


「美味いッ!!なんて甘い食べ物なんだ!!!」


 思えば果物や砂糖があるのだから、クレープくらいならば俺でも作れたな。

 しかし俺の頭の中に、お菓子を作るという発想が無かった。


 甘い物が嫌いとかではないんだけど、甘味に無頓着というか・・・、うん、存在を忘れていた感じだ。和泉の出現で尾張の食事情が激変するかもしれんな、コレは。


「この、中に入っている赤くてドロッとした物は何なのだ?」

「名前は知らないですけど、赤い果物で作ったジャムですよ。他の果物でもジャムを作ったので、これとは違った味のクレープも作れます!」

「素晴らしいじゃないか!そっちの味も食べてみたいぞ!」

「じゃあ今から厨房に行って作りますか?他の子達もまだ食べてないから、この後みんなの分も作る予定だったんです」

「行く!是非作る所も見てみたい!」



 ・・・なんか、お菓子でミスフィートさんのテンションが有頂天だ。

 女の子のお菓子にかける情熱は、やっぱ凄まじいモノがあるな。


 そしてハイテンションになった二人と一緒に厨房まで移動した。




 ・・・・・




「「おいし~~~~~!!!あま~~~~~い!!!」」



 うおおお、大絶賛だ・・・。

 女の子達はコレを求めていたんだな。気の利かない俺を許してくれ!



「こんなに喜んでもらえるのならば、他のお菓子も作りたいわね~」

「他にもあるの!?」

「ん~~~、問題なのは卵も牛乳もバターも無いということかしら・・・」

「お菓子を作るのに、その三つが無いのって致命的じゃないか?」

「すごく妥協すれば出来なくはないけど、それなりの味にしかならないわね」


 それらを使わないお菓子って何があったっけ?


「ああ、そうだ!ゼリーなら今の三つは必要ないよな?」

「必要無いわね。でもゼラチンが必要よ?」

「んー、それなら何とかなるんじゃね?確か動物の皮とか骨から抽出するハズだ」

「あっ、それは聞いたことあるような気がするけど、私には良く分からないなあ」


 あとは魚の鱗からも取れるんだったかな?まあ、煮凝りみたいなもんだし。

 長時間コトコト煮てから、濾過して不純物を取り除けばいいって何かで見たぞ。


「何となく出来そうな気がするから、ゼラチンは俺に任せとけ」

「期待してるからね!あと牛も捕まえて来て!」

「牛なんか見たことねえぞ!乳が出るならどんな動物でも良さそうな気はするけど・・・、そうだ!和泉が乳を出せば解」


 ビシッ!


「ぐおおおお!」


 思いっきり脛を蹴られた。せめて最後まで言わせろや!

 あ、そうだ!清光さんに聞いてみっかな?三河になら牛乳とかあるかもしれんし。

 和泉のこともまだ報告してないから、後で通信してみるか。


 和泉がどんどんクレープを焼いているのだが、女性達もどんどん食堂に集まって来るので、まるで終わりが見えない無限ループに突入していた。


「なんかすげー人数増えてるし!こりゃあ和泉一人じゃ厳しいな。手伝ってやろう」

「うぅ、お願いするわ・・・」


 鉄板を増量し、俺もクレープを3枚ずつ焼き始めた。


「ナターシャやフローラ達にも、作り方を教えてマスターしてもらった方が良いぞ。間違いなくクレープは当分の間フィーバーし続けるだろ」

「そうね~、これは簡単に作れるから、料理班の誰もが作れるようにしよう!」



 俺もクレープを貰って食べてみたけど、久々のお菓子はむっちゃ美味かった!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ