186 グラスを作ろう
ふーーーーーーーっ!
熱したガラスを膨らませてから、長い棒をクルクル回しながら形を整えて行く。
何度も何度も繰り返し、やっと納得のいくモノが完成。
「よーし!出来たぞ!!」
「「おおおおーーーーー!!」」
我ながら上手く行ったと思う。とはいえ何度か失敗した後なんだけどね。
「後はここにある鉄の箱に入れて、自然と熱が冷めるのを待つだけだ」
「えーと、水で冷やすのは駄目なのですか?」
「ダメだ。ガラスというモノは急激な温度変化に弱いんだよ。今冷ましているグラスに熱湯を入れても割れるし凍らせても割れる。普通に水を注いで中に氷を入れるくらいなら全然大丈夫なんだが、まあ限界があるってことさ」
「なるほど~」
「じゃあ次は・・・、ゴルドさんがやってみて下さい」
「お?ワシか?」
「ココにいる全員にやってもらうつもりだけど、まだ道具が足りてないので年長者から順番にやってもらいます」
そしてドワーフのゴルドさんに、コツを教えながらグラスを作らせた。
最初なので合格は出せない出来だけど、とりあえずグラスの形にはなった。
「うーむ・・・、なかなか難しいもんじゃな」
「とりあえずはこんなもんでしょう。あとは慣れの問題ですよ。じゃあ次!」
1人ずつグラスを作って行ったが、上手い人も下手な人もいた。
何回かやってみて自分には向いていないって人には、他の仕事をやってもらえばいいだけの話なので、とりあえず今は気楽にやってもらいたい。
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「よーし、ちゃんと冷えてるからもう使えるぞ!」
それぞれが作ったグラスを並べて、グラスに水と氷を入れた。
「それでは自分が作ったグラスを手に取り、水を飲んでみてくれ」
全員が水を飲む。
「おおっ!!いつも飲む水より美味いぞ!」
「お主もそう感じたか!?」
「う~~、この歪んだ部分が気になる~」
「自分で作ったグラスだからかもしれないけど、美味しく感じますね!」
まあ自作のグラスってだけでも、美味しく感じるのはあるだろね。
「不思議と透明なグラスで飲むと、水でも美味しく感じるんだよ。なぜなのかは俺にも良くわからんのだけど、唇が触れた感触とか、木と違ってガラスには匂いが無いってのも理由の一つかもな」
「「なるほど!!」」
「今回作った自分のグラスは家に持ち帰ることを許可するぞ。歪みなど気になる部分はあるだろうけど、初めて作った自分の作品だから、それはそれで良い思い出になるだろうしな」
「「やったーーー!!」」
「丁度良い時間だから今日の仕事はこれで終了だ。これからどんどんグラスを作ってもらうつもりだから、少しでも良いグラスが作れるように精進してくれ!」
「「お疲れ様でしたー!!」」
ふ~~、結構疲れたな・・・。
しかし。現場を任せられる人材が誕生するまでは俺が監修せんといかん。ゴルドさんが職人級に育てば、グラス製造部門を任せても良いんだが。
早くガラス職人を育成して、トラネコ健康ランドを作りに行きたいんだけどな~。
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それから一ヶ月経ち、グラス職人達も逞しく成長した。
グラスだけじゃなく、大きなガラスの器なども作らせたりしたぞ。
最初に作る予定だった普通のコップも、型を作って量産しまくった。量産の方はテクニックも何も必要無いので、グラス職人以外の従業員に任せている。
まだ工場が稼働してそれほど経ってないけど、やはりドワーフ達の器用さは流石としか言い様がない。ガラス作り、グラス作り、コップ作り、そして鉱石集めの取り纏め役には全てドワーフを任命した。工場長に任命するのはさすがに早いと思い、今はまだ空席にしてある。
軍の皆の様に実績十分なら即決できるんだけど、稼働して間もないガラス工場をいきなり任せるのもなあ・・・。
とまあ、そんなこんなでやっと俺に余裕が出来たんで、次はトラネコ健康ランドに着手しようと思う。
まずは通信機で、カーラに土地の確保の成否と人材情報を聞く。
「健康ランドを建てる土地の確保はできたか?」
『ちゃんと確保したわよ。あと支配人候補も選出したよ』
「よし!でも支配人は本当に信頼できる人物か?金の持ち逃げや着服をされたら損害が大きいぞ」
『んーーー、たぶん大丈夫よ。セレンと同じで部下のエルフの身内だから』
「なるほど。それなら大丈夫かな?一応ちゃんと話をして、どんな人物でどんな性格なのかをしっかり把握しておけよ?」
『はいな~!』
定期的に売上金の回収をするから、健康ランドが破滅するほどの持ち逃げは出来んけどな。ただ支配人ともなると、着服の方は出来ないこともないからやはり注意は必要だ。
「んじゃ近いうちに、エルフの建設部隊を連れてそっちに行くぞ」
『すごく楽しみだわ~!』
よし、これで準備は整った!
・・・あ、支配人を鍛える為に、教育係のルシオも連れて行く必要があるのか。
セレンに教えた時のノウハウがあるから、やはりルシオが適任だろう。
さて、それじゃあ健康ランド2号店の為に頑張るとしますかね。




