179 出張組を送り届ける
当然ながら売店は大繁盛だ。
原価そのままの値段で販売しているから、残念ながら売り上げはゼロだけどね。
気晴らしを兼ねて売店の様子を見に行ったりしながら、大量の服の強化に励む。
しかし1着の強化で金貨10枚を受け取ることになってるので、実はこの仕事が終わった頃には大金持ちだったりする。
手に入れた資金を使ってまた三河へ買い出しに行くのはもう確定なんだけど、三河に金を落としまくってたら尾張の発展に繋がらないのがネックか。早いとこガラス工場を作って、三河に輸出できるようにせんとダメだな。
ガラス以外にも、三河の人達ですら欲しがるような特産物が欲しいな・・・。三河国民が欲しがりそうな物といったら、俺が作った魔道具くらいしか思いつかないけど。日用雑貨にしても農作物にしても、質の高いモノを作る必要があるんだ。
とにかくジャバルグが脳筋だったばかりに、尾張の民には知識人がおらん。
これはもう学校を作るべきかな?しかしまだ職につくのも大変な状態だから、学校があっても学校に通う余裕が無いか・・・。国民が豊かになるのを待ってたら何年かかるかわかったもんじゃないが、最低1年は様子見が良いだろな~。
よし決めた!まずは学校じゃなくてガラス工場だ。
間違いなく成功する事業で国民の生活を豊かにし、軌道に乗ったら学校の建設を始めることにしよう。ファッション系は俺が手を出さなくとも女の子達が絡めば勝手に育つ。まあ、ガラス工場の前にミルドナーガとシェルフィーユの館の改造が待っているんだけどな!
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数日経ち、今日は出張組を送り届ける日だ。
運転手はボヤッキー。俺は補助席に座って備える。
今回は領主の館の改造があるので、いつも悪いとは思うけどルルも連れて行く。
俺が動く度に毎回ルルを頼ってしまうので、ルルの巻き添えエルフをもう一人連れて行くことにした。名前はライム、ジャバルグとの決戦でも活躍した土魔法使いだ。ルルの代理が務まるほど成長してくれることを願う。
バスの座席が満席なので、落ち着かないとは思うけど中央の通路の所に補助席を出して2人に座ってもらう。
「ボヤッキー、乗客は多いが落ち着いて運転してくれ」
「はぁ~~~~、無茶苦茶緊張します・・・」
「あまり意識しないことだ。ただ、バスが重くなっているので、いつもより速度が出にくいからそこだけ注意な」
「なるほど、了解です!」
そうしてバスがゆっくりと走り出す。
最初は緊張してるせいか運転する挙動が怪しかったが、少し経つと吹っ切れたようで走ってるうちに安定してきた。
この分なら大丈夫そうだと判断し、俺は隣で服の強化を開始。
途中にある砦で一泊し、次の日トラネコ城に到着した。
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「よーし、トラネコ城に到着だ!ここで降りる人には動物乗り物を渡すので、バスを降りたら一人ずつ証明書を見せてくれ」
「「はーい!」」
順番に動物乗り物を渡していった後、所持数の多いカーラとカトレアの分は城の中で全て受け渡した。
「ミルドナーガとシェルフィーユの館を改造してからまた戻って来るんで、次にルーサイアに帰る人達の選別を頼む。館の改造が終わったら連絡するから、その時までに帰る準備をさせといてくれ」
「わかったわ。今回は色々ありがとね!久々にルーサイアに帰れて楽しかったわ」
「ありがとうございました。トラネコにも健康ランドが出来るのを楽しみにしています」
「館の改造をした後、ルーサイアにガラス工場を作る予定なんで、それが終わったらトラネコ健康ランドの建設に入るか。土地を確保しといてくれよ?」
「それは任せて!」
あ、パラゾンにも作らなきゃだから、トラネコ・ミルドナーガ・シェルフィーユ・パラゾンで、5号店まで作ることになりそうだな。ドワーフの街にも欲しいってなったら6号店やん。こりゃあ民間人の力も必要か・・・。
「あとトラネコにもいずれガラス工場を作ると思うんで、その為の土地も頼むわ。ガラス工場は尾張の国の一大産業となる予定だ。間違いなく三河やそれ以外の近隣国からも買い手が来る」
「それは素晴らしいですね!職が欲しい民衆が絶対に喜びます」
「あ、すまん!もう一つあった。ガラス工場が軌道に乗った後は、たぶん数年先になるけど学校を作る予定もあるんで、その土地も頼む」
この二人が内政の授業に参加した時、学校の話をしたのだ。
基本的には子供を通わせる学び舎だが、知識が欲しいならば大人でも入学可能にするのが良いだろうな。
「小烏丸って凄いわね・・・。そこまで未来を見ているなんて」
「言ったろ?尾張を三河以上の国にするって。それには脳筋じゃダメなんだよ。知識が無いと国はいつまで経っても発展なんかしない。しかしいきなり学校なんか作っても、生活に余裕が無きゃ勉強なんかやってられないからな。だからまずは健康ランドとガラス工場が優先だ」
「なるほど・・・、民の目線で考えるのですね。とても参考になります」
なんかむず痒いな・・・。俺の考えっていうよりは日本を知っているからこその発想なんで、凄いのは俺なんかじゃなくて元の世界の文明を発展させた人々だ。
もう今更、俺が別世界の人間だって打ち明ける気はないけど。
「じゃあそろそろ出発しようか。バスで皆が待ってる」
「そうね。次の帰還者のことは任せといて!」
「送迎、引き続き頑張って下さい」
ってことでもう一頑張りだ。
まずミルドナーガに行って何人かを下車させ、次にシェルフィーユに向かって領主の館を改造。そしてまたミルドナーガに行って館の改造か。
あ、エルフ達の道路工事もそろそろ終わる頃じゃね?
うーむ、みんな乗れるかなあ・・・?




