153 第15代将軍メルティー
「マリアナ!すごい城なのじゃ!童はこのようなすごい城は初めてなのじゃ!」
「本当に素晴らしいお城ですね!メルティー様」
とりあえず二人を部屋に案内することになったのだが、本当に将軍ならば適当な部屋に住まわせるわけにもいかんので、玉座の間の奥にある王室ゾーンに連れて行く。
大名の部屋の近くによくわからん人を住まわせるのは少々危険ではあるのだけれど、何かあっても聖水があるし、そもそもミスフィートさんに隙など無い。
こんなヌルい考えじゃ、簡単に足を掬われてしまうのはわかってる。でもこの子に備わっている威厳が本当に将軍っぽいんだよなあ。
「ミスフィートさん、この部屋なら問題無さそうです」
「そうだな。ただ家具も最低限しかないので、色々と用意する必要があるだろう」
「確かにそうですね。後程俺が用意しましょう」
「では、任せたぞ」
ミスフィートさんや俺の部屋と同じゾーンではあるけど、メルティーの部屋は少し離れた場所にした。他国の刺客の可能性もゼロではないからな。
おっと、頭の中でもメルティー様と呼んでおいた方が良いか。じゃないと、いつかミスって呼び捨てにしてしまうかもしれない。
「メルティー様、マリアナ、今日から御二人にはこの部屋を使ってもらいます」
「おおお!マリアナと一緒ならば安心じゃ!」
「まあ、とても素晴らしいお部屋です!」
「突然でしたので、今は最低限の家具しか無いことをご容赦下さい。とりあえず長旅の汚れを落とす必要があるので、御二人をお風呂に案内します」
「おおおおっ!お風呂に入れるのじゃ!」
「気を使って頂き、本当に有難う御座います!」
客人用のお風呂を使えるようにしておいて良かった。
お風呂に向かう途中でユリが歩いていたのを発見し、身分の高い大事な客人だとだけ説明し、お風呂の使用法などの説明を頼んだ。
「じゃあユリ、お風呂が終わったら俺の部屋に御二人を連れて来てくれ。いきなり色々頼んですまんな」
「大事な客人なのでしょ?任せといて!」
お風呂はユリに任せて、俺は一旦部屋に戻った。
さて、まずは寝床を用意する必要があるのだけども、将軍を毛皮で寝かせるのってどうなんだ?
俺の読みではメルティー様が将軍なのは事実だと思う。理由は威厳とかそういうの以外にも色々あって、特に引っかかったのはマリアナの言葉遣いだ。演技の可能性もあるけど、アレはきっと本物だろう。
あっ!ひょっとして清光さんならわかるかな?
プルルルル
『小烏丸よな?まあそれ以外考えられんのだが、どうした?』
「お久しぶりです!毎度お馴染み、小烏丸です。一つ聞きたいことがあって通信しました。現在の将軍の名前はご存じですか?」
『将軍?確か将軍家は1年程前に滅亡したハズだが、何でそんなことを聞く?』
「えーと理由はこの後話しますが、とりあえず名前を知りたいのです」
『フム。殺された第14代将軍の名はアルテリアだ』
「なるほど。そのアルテリアに子供はいましたか?」
『娘が1人いたな。確か名前は・・・、メルティー?メルティーヌだったか?』
「実はですね、そのメルティーを名乗る子供が尾張にいるのですよ」
『なんだと!?』
「年は10歳前後。京から逃げて来たみたいで、先程尾張で匿いました」
『10歳前後か・・・、確かにそれくらいの年齢だった気がするな』
「顔はご存じですか?」
『いや、見たことはない。ニーナも知らんだろうな』
「そうですか・・・、でも間違い無さそうですね。子供なのに威厳があるのですよ。そして侍女が1人付いて来たのですが、学のある丁寧な言葉遣いでした」
『演技ではない感じか。と言っても、将軍の真似事をする意味も無いわな』
「そうなんですよ!堕ちた将軍を偽る意味ってまったく無いですよね?」
『逆に殺されるリスクがあるだけだ。十中八九本物とみて良いだろう』
「わかりました。情報ありがとうございました!」
『変な争いに巻き込まれないよう、注意しろよ?』
「そうですね、そういう心配もあるのか・・・」
『まあ、言いふらさなきゃ大丈夫だろ。あーそうそう!近いうちに三河に来てくれ!虎徹から聞いたぞ、カメラを手に入れたってな!』
「ああ!そうなんですよ!ただ今尾張で大流行中です。騒動が落ち着いたらそっちに行きますね」
『だな。じゃあ近いうち頼むわ!じゃあな!』
清光さんに相談して良かった。これで本物だという確信が持てたぞ。
そうか・・・、本物ならば豪華羽毛布団でも献上すっかな?
いつかどこかで使う場面が来るだろうとは思ってたけど、たぶん1番の使い道は今この時だ!後は、それらしい服も献上して着替えさせるか・・・。しかしそうなると、侍女とはいえマリアナもそれらしい服装にせんとな。
将軍の娘となると、やっぱ洋服じゃなくて着物だよな?
そうだ!今こそ使うに使えなかった十二単の出番じゃん!
侍女のマリアナには晴れ着でも渡すか。アレならば見劣りしないだろう。
1年も逃亡生活を続けていたならば、きっと腹も減っているだろう。
いきなり贅沢させるのもどうかと思うが、最初くらい美味いモン食わせてやっか!
ドラゴンは城の全員にご馳走するつもりだから、海鮮づくしってとこかな?
トントントン
そんなことを考えていたら、ドアをノックする音が聞こえた。
ようやくお風呂が終わったようだ。
この作品を面白いと思ってくれた方、画面下部の評価ボタンで評価して貰えると
作者のモチベーションアップに繋がりますので、是非とも評価をよろしくです。




