152 なんか変なのがいた
皆の写真を飾る額縁が出来上がり、ミケネコ城の廊下に並べて飾って行った。
気合の3回勝負だったから、自分の写真が気に入らない人もいるだろうけど、まあそれは我慢してもらうしかない。
ただ、全員の写真が正面を向いて写ってるのが少しつまらなくも感じた。
変な固定概念に囚われると、つまらん教科書みたいに堅苦しい感じになってしまうから、そういうのって尾張らしくないと思うんだよね。
戦闘シーンみたいな躍動感ある写真のが良かったかもな~。
まあカメラで色々写していればそういうシーンも撮れるだろうから、本人が気に入る写真に定期的に変えていっても良いかもしれない。
なんせ最近カメラは女性達の遊び道具になってしまっていて、楽しそうな写真や変顔写真などが掲示板に貼られていたりするのだ。
紙は無茶苦茶大量にあるけど、あまり無駄遣いしないように!とは言ってある。
それはともかく、尾張に戸籍を作ることを思い付いた。顔写真付きの完璧なやつ。
ちょっとディストピア風に思えるかもだけど、そんなつもりは一切無い。
犯罪防止に役立てたいんだよね。顔バレが嫌だったら他国に行けって話だし。
戸籍を作るメリットは計り知れないぞ。
トラブルの対処がしやすくなるし、知らん顔ならそいつは他国からの流れ者か、もしくは密偵ということになる。要注意人物としてマーク出来るわけだ。
1人1人撮っていたら紙が尽きてしまうから、20人ほど並べて撮ったのを切って使えば、写真の大きさも丁度良い感じになるかな?
忙しいがこれは急いでやった方が良いだろな~。
何も俺が全部やることはないんだ。こういう仕事こそ高い身分の者に任せなきゃいかん。そうだな、内政の授業を受けている誰かに戸籍作りを任せるとしようか。
カメラで遊ぶのが大流行中なので、民衆の写真を撮るカメラマンもすぐに見つかるだろう。
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―――とある日のこと。
街へ用事に出て城に帰って来た時、城門から変な声が聞こえて来た。
「童を匿って欲しいのじゃ~~~!」
「いや、そうは言ってもですね・・・」
ん?
10歳くらいの子供だろうか?長旅でもして来たのか薄汚れている。
隣に女の人が1人立っているが、その人も随分草臥れているな。
「どうした?」
「あっ!小烏丸さん!なんかこの子供が、良く分からないことを言っていまして」
「お願いじゃ!童を助けて欲しいのじゃ!!」
「助けるといっても、一体何から助けるんだ?」
「あのっ!この城の御方でしょうか?」
隣の女の人が話しかけて来た。まあこっちの方が話になりそうだな。
「その通りだ。俺はこの城に住んでいる」
「お願いします!この御方を匿って下さいませ!」
「いきなり匿えと言われても、素性の分からん者を入れるわけにはいかんぞ?」
「くっ、・・・そうですよね。わかりました、この御方は将軍様で御座います」
へ?将軍様??
「将軍様だと!?」
「はい。少し前まで京の城で暮らしていたのですが、聖帝軍に敗れ、前将軍は殺されてしまいました。この御方は前将軍の一人娘であるメルティー様で御座います」
「・・・・・・・・・マジ?」
将軍家の生き残りだと!?
「なるほど・・・。それにしても、なぜ尾張の国に来たのだ?」
「京から脱出し、東へ東へと逃げました。しかしどこも治安が悪く、とても頼る事など出来ませんでした。素性を明かせばその場で捕らえられ、きっと酷い目に遭わされるだろうと思い、ただひたすらに治安の良さそうな国を目指して、此処に辿り着いたので御座います」
すごく納得いった。確かに治安の悪い国の大名なんか頼れんわな。
どう考えても酷い結末しか見えねえもん。
「事情はわかった。しかし将軍様か~」
言われてみると、薄汚れてはいるが、育ちの良さを感じさせる風格がある。
これはミスフィートさんに相談せねばなるまい。
「では、この国の大名であるミスフィート様に事情を説明して来ますので、少しの間此処でお待ち頂きたい」
「お願いします!!」
「頼むのじゃ!!」
なんか急に大変なことになってしまったぞ?
いや、子供と女性の二人を匿うだけなんだけどさ、将軍様ってなぁ~。
トントントン
「入れ」
ミスフィートさんは、いつもの様に書類に目を通していたようだ。
「城門に将軍様が出現しました!匿って欲しいとのことです」
「・・・へ?」
「将軍家が、聖帝軍に敗れたのはご存じですか?」
「それは噂で聞いている。しかし確か1年以上前の話だぞ?」
「その将軍の一人娘であるメルティー様が京の都を脱出し、ずっと逃亡生活を送っていたようなのです。そしてこの尾張まで辿り着き、匿って欲しいと頼って来たわけです」
「なるほど。嘘か誠かわからんが、女性一人匿うくらいなら問題は無いな」
「ああ、侍女と思われる女性も一緒でしたので二人です」
「フム。わかった。城門まで一緒に行こう」
「ありがとうございます」
そしてミスフィートさんと城門まで移動した。
「私が尾張大名のミスフィートだ」
「貴方がミスフィート様で御座いますか!此方の御方が前将軍の一人娘、メルティー様です」
「メルティーじゃ!童達を助けて欲しいのじゃ!」
「なるほど・・・、確かに威厳を感じさせる御子だ。わかった。尾張大名ミスフィートがお助けしよう!遠い京の都から、よくぞ御無事で参られた!」
「おおおおおっ!マリアナ!やったのじゃあああああ!!」
「良かったですね!メルティー様!」
こうしてミケネコ城に、将軍の一人娘が匿われることとなった。
しかし、いきなり将軍家かよ・・・。一体これからどうなるんだ?




