135 残った仕事を全部終わらせる
俺が地面に置いたブツを見て、三河の二人が驚愕する。
「こ、これは・・・」
「「便器じゃねえか!!」」
秘蔵の品とは、もちろん温水洗浄機能付きトイレである。
この日の為に、ルルに頼んで便器を一つ作ってもらったのだ。
「俺は水生成機とお湯生成機を作れるのですよ?すなわち、当然コイツも作ることが可能なのです。そう、温水洗浄機能付きトイレをね!!」
「「最高じゃねえか!!!」」
「しかし小烏丸印のトイレはその先まで行きました。日本では普通の機能なのですけどね。清光さん、便器に座ってみて下さい」
「な、なんだと!?城門で便器に座れとは、何という羞恥プレイだ・・・」
「わははははは!アニキ頑張れ!」
清光さんがしぶしぶ便器に座った。
「こ、これは!!!」
「気が付きましたか?そう、これから冬が到来します。ということは、石の便座に直接座った時、その冷たさで便意が引っ込むことが想定されますよね?」
二人はウンウン頷いている。
「そこで俺は便座に熱生成機を仕込みました。もちろん尻が火傷しないように最適な温度に調整済みです。そして尻を洗浄するシャワーも最適な温度のぬるま湯です!」
「「完璧じゃねえか!!」」
「ノンノンノン」
人差し指を立てて横に振る。これで完璧とは心外だなあ。
「清光さんから見て右側にボタンが三つ並んでいますよね?1番上は女性用の洗浄機能、2番目は尻の洗浄機能、そして3番目。三つの矢印が斜め上に向かって書かれたボタンを押してみて下さい」
「尻がビショビショにならんだろな?」
「大丈夫です。さあどうぞ!」
ビュオーーーーーーーーー!
「おおおおおおっ!!温風機能まで付いてるのか!!」
「あと、左側のボタンを押すと水がジャーっと流れますんで。ちなみに渡すのは便器その物ではなく、現在使われている便器に部品を取り付けていく感じになります。ミケネコ城と同じタイプならば楽に取り付けられるのですが・・・」
「三河と遠江の城の便器は、この城のヤツとまったく同じだ」
「ならば何も問題無いですね。三河に10台分、遠江にも10台分用意してます!」
「素晴らしいな!アニキ、取引材料としては文句なしだろ。もう今すぐにでもその最強便器を使いたいくらいだぞ!」
「うむ。俺達の求めるモノがわかっている小烏丸の眼力、見事としか言い様がない!取引は成立だ!」
よしッ!これでダンジョン・ペアチケットGETだぜ!
「で、いつダンジョンに行く?」
「えーと、ミスフィートさんに報告が必要ですし、一緒に連れて行く兵士にも準備させる必要がありますので、2日後、迎えに来てもらっていいですか?」
「2日後だな?わかった」
「えーと、今すぐにでもお風呂セットと温水洗浄機能付きトイレを取り付けに行けますけど、そっちは問題無いですか?」
「それは大丈夫だ。んじゃ早速行くか」
「いつでもOKです」
転移には手を繋ぐ必要があるので、3人で手を繋ぐ。
「じゃあ行くぞ。転移!」
一瞬で景色が変わり、三河の玉座の間に到着した。
「おお、ホント一瞬ですね!んじゃ大浴場から始めますので案内して下さい」
「わかった。こっちだ」
「あっ、ちょっと待った!その前にストーブを全部出します」
「おお、完全に忘れていた。よし!これで今年の冬は天国だ!」
今日1日で遠江まで全部やるのは死ぬほど大変だけど、気合でやるしかない!
これをやり遂げれば、今度こそ二人への借りを全て清算出来るんだからな。
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「よっしゃーーーーー!これで全部終わった!!」
「お疲れい!!いや~、小烏丸がいると身の回りがどんどん便利になって行くな!一家に一台欲しいくらいだぞ」
「それ、ミスフィートさんにも同じこと言われましたよ!」
「オレも付与魔法欲しかったんだけど結局手に入らなくてさ。アニキの土魔法にしてもそうなんだけど、人の魔法って羨ましく感じるよな」
いやホントだよ。ダンジョン行ったらまた加護が増えたりしないかな?
「そうですねー。転移魔法とか無茶苦茶羨ましいですよ。あ、そうそう!この便器には女性専用の機能も付いていますので、押すボタンを間違えないようにして下さいね。ミスるとタマに直撃して悶絶します」
「わはははははは!それ昔くらった記憶があるぞ!しかし女性専用の機能付きとは、ホント至れり尽くせりだな。水洗トイレってだけでもスゲーのに」
「けど空気中の水分が無くなるのが、俺が作る魔道具の弱点ですね。常に窓を開けた状態でストーブを稼働させっぱなしにするのが楽で良いですよ」
「なるほど。了解した!さて、そろそろ尾張に送るぞ~」
「お願いします」
やっと全ての仕事を終わらせ尾張に帰ることができた。
まずはミスフィートさんに報告だ。んでその後ルシオ探しか。
・・・・・
「・・・そうか。小烏丸が一ヶ月もいなくなるのは寂しいが、服を仕入れに行くのならば仕方あるまい。そこで聖水の補給もできるのだろう?」
「というか、聖水はそこでしか手に入らないのです。この日の為にデッカい箱を用意しましたので、限界まで持って帰りますよ!ああ、少ないですが手持ちの聖水を渡しておきますね」
聖水の入った箱を床に置いた。これでもうスッカラカンだ。
「もし俺がいない間に敵が攻め込んで来たら、通信機ですぐに連絡して下さい。遠いダンジョンに行くので、通信機が繋がるかどうかわかりませんけど」
「アレからまったく音沙汰無しだから、まあ大丈夫だとは思うが・・・」
「念の為にコイツを渡して置きます」
ミスフィートさんにビームライフルを手渡す。
「おお!これは本当に助かるけど、危険なダンジョンに行くのだろう?小烏丸は大丈夫なのか?」
「今はダンジョンボスがいないので俺は大丈夫です。ただこのビームライフルは、一度ぶっ放すとMP補給に6時間かかるので、そこだけ注意して下さい」
「了解した!突然敵が攻めて来てもコレがあれば何とかなりそうだ。感謝する!」
「では、今回はルシオもダンジョンへ連れて行く予定なので、彼と話をしてきます」
「わかった。でもいいなあ・・・、私もダンジョンに行ってみたかったぞ」
「今はまだ大名と軍師が同時に尾張を離れるのは不安ですからねえ。今度チャンスがあったら一緒に行きましょう!」
「そうだな、その時が来るのを期待して待ってるぞ!」
さあて、次はルシオを捕まえて身辺整理させないとな・・・。




