129 ウォータースライダー
ミケネコ城に帰還して2週間。
毎日付与を頑張って、ようやく清光さんの特攻服が完成した。
やっぱり頑張れば2週間で完成するほどになってたか・・・。指輪ドーピングの効果マジで半端ねえわ。
けど、すぐに三河に連絡を入れるようなことはしない。
馬鹿正直にすぐ報告をしてしまうと付与魔法の価値が下がってしまうので、一刻も早くダンジョンに行きたい気持ちを抑えつつ、決められた期日を待つ。
「これは駆け引きなのだよ!」
・・・ん?今のは赤い流星じゃない人のセリフだったかもしれん。
とまあ、ようやく俺にも余裕ができたので、ずっと作ろうと思っていたウォータースライダーを作ることにした。
・・・・・
モノが大きいので、作業部屋で作るのは無理。
仕方がないので、若干日差しがキツかったけど、城の脇にある原っぱで作った。
「よーーーし!とりあえずは完成だ」
けど、みんな裸で滑るわけだから、絶対に怪我しないように要チェックせんといかんよな・・・。
これは滑り台じゃなくウォータースライダーなので、上から生成した水が常時流れるように魔道具化してある。これで摩擦での怪我はしないハズだ。
最初は錆びる可能性を考慮して、チタンやステンレス製にしようか考えたんだ。でも探知機を持って野山を駆け回るのも辛いし、そもそも俺には精製技術が無い。
土魔法使いならば分離が可能なのかもしれんけど、ウチのエルフに科学知識を叩き込むのも大変だ。
なので作戦を変更し、鉄で作ってからペンキでコーティングすることに決定した。
実は、ダンジョンで1年経過したくらいのある日、デラックスガチャから、赤い塗料の入った巨大な箱が出たのだ。なぜか赤色ばかりが3箱もだ!
塗料としか書かれてないから、これがペンキなのかどうかは正直よくわからんのだけど、試し塗りではコーティングとして十分使えそうに思えた。
・・・しかし、俺が赤い流星だから大量の赤い塗料が出たのか!?
大方、巨大ロボットを作って赤く塗れとの神の思し召しなのだろうけど、そうはいかんですよ!!
塗料が渇いた後、その場で水の出を確認し、ようやくウォータースライダーが完成した。ちなみに、ぬるま湯が上から流れて来るという完璧設計だ!
・・・・・
今日は大掛かりな工事なので、脱衣所にデカデカと工事中の貼り紙をしておいた。いくら何でも、アレに気付かないなんてことはあるまい!
「よし!大体この辺りがベストポジションだな」
プールの横まで歩いて行き、マジックバッグから巨大なウォータースライダーを取り出す。そして絶対に倒壊事故が発生しないように固定作業を開始した。
浴槽から上がってすぐ階段を駆け上がり、プールの手前側にドボーンと行けるような配置だ。ただ、プールの手前側が危険地帯になってしまうので、『泳ぐ人は奥で』って新ルールを作らなきゃだな~。
真っ赤なのでかなり目立ってしまってるが、錆びたら格好悪いし怪我の原因にもなるから、コーティングした塗料の耐久性が高いことを願うばかりだ。
「まずは俺が滑ってみて、怪我の心配がないか試さんといかんよな・・・」
脱衣所に行って服を脱いで来た。
そして階段を登ったところで考える。
フルチンでウォータースライダーを滑る赤い流星とか、ファンに絶対見せられん姿じゃないか。
・・・と思ったけど、服もヘルメットも脱いで来たから今回は大丈夫だ!
「あーーーーーーーー!!小烏丸が、また面白いことしてるッス!!!」
「わああああ~~~!何あれ!?すごく大きいのが出来てるよ!!」
「何かしら?今回のは特に意味が分からないわね・・・」
くっ、出たな!?ルーシー、ピピン、エレンの三馬鹿トリオ!!
3人は何も考えることなく階段を上がって来た。
「工事中の貼り紙をしてあったハズだが!?しかも特大の!!」
「あ~、貼ってあったっスねえ」
「うん、見たよ?」
「アレがある時は面白いってことよね?」
「ちがーーーう!!いや、違わないけど、入って来るなって意味だ!」
「でも、もう手遅れっス!」
「なんか水が流れてるよ?」
「結構高いわね~」
俺のセリフをまるで気にもしてない態度に、言い聞かせるのは完全に諦めた。
「あ~、もうしゃーねえなあ、今滑って実験しようとしてた所なんだが・・・。じゃあまずは俺が行くから、とりあえず3人はココで待ってること!安全が確認できたら許可を出すから、その後一人ずつ滑ってみてくれ」
「「は~~~い!」」
返事だけは良いヤツらよ・・・。
しかし人に見られてるとなると、途端に滑り辛くなったな・・・。なんせフルチンスライダーだ。まあ、下から見られるよりはマシと思うしかねえか。
普通に足を前に伸ばした状態で台に座り、一気に下まで滑り降りた。
ザパーーーーン!
うおおおーーーー!久々だからちょっと怖ェし!
・・・うむ。どこも怪我はしていないようだ。
痛いとかそういうのはまったく無かった。これなら上で待ってる3人に許可を出しても大丈夫だろう。
「なんか凄い速度で滑って行ったっス!!」
「うわ~~~~!コレ絶対面白いよ!!」
「いや、ちょっと待って!!私達もアレをやるわけ?正直怖いんだけど!」
「よし!一人ずつ滑って来ていいぞーーー!!」
「やったーーー!ワタシが行っていい!?」
「構わないっスよ~」
「くっ、私は最後でいいわ・・・」
どうやらピピンから滑るようだ。
ぶつからないように、少し離れて見ることにした。
「とおっ!」
ピピンが躊躇無く滑って来る。
ザパーーーーン!
「あーーーっはっはっはっは!!なにこれ!すごく面白いよ!!」
「・・・・・・・・・」
―――その衝撃に、俺は全く声を発することが出来なかった。
いや、うん。下からのアングル超やばくね?裸の女の子が上から大接近よ?
・・・俺は、恐ろしいモノを作ってしまったのかもしれない。
ザブーーーーン!
「にゃははははははは!!これは楽しいっス!!!」
サバーーーーン!
「あ~~~怖かったああああ!でもすっごく爽快ね!!」
「・・・あ、みんな怪我とかないよな?」
「全然大丈夫っス!」
「上から水が流れてるし、ツルツルしてたから平気だったよ!」
「お尻も全然痛くなかったし、これなら大丈夫じゃない?」
「それなら良かった。じゃあこれでウォータースライダーは完成だな!」
それを聞いた3人はプールから出て、すぐまた階段を駆け上がって行った。
ザパーーーーン! ザブーーーーン! ザッパーーーーン!
・・・・・・これは良いモノだ。
ずっとプールの中から滑るのを見ているだけなのに、何度見ても飽きないのです。
というかですね、一瞬たりとも目が離せないっス!!
イカン、鼻血が・・・。
頑張って完成させて本当に良かった!感動した!俺、超グッジョブ!!




