118 プール
女性達がどんどん大浴場に入って来て、みんなで大騒ぎしている。
・・・中に俺がいるにも関わらずだ!
女性の裸を見て鼻血を流していた頃が懐かしいよ・・・。
今は少し慣れてしまって、こんな状況でも普通にプールの水の監視中。
―――そして、少年は大人になる。
つい、どこかで聞いたようなフレーズが頭に浮かんでしまったぞ。
さて、そろそろ十分な水が溜まったな。後はお湯を足して、冷たすぎないくらいの温度にすれば完成だ。
ゾウさんの頭を叩いて水生成機をストップし、ライオンの頭を叩いてお湯生成機を起動させる。他の人達にも視覚で簡単にわかるように、浴槽と一緒にしたのだ。
ってか何で俺は、ゾウだけ『さん』付けなんだろう?まあいいか。
「ねえ小烏丸!こっちはお風呂とは違うの?湯気が出てないよ」
ん?フィオリーナか。
「こっちはプールだぞ。水だけじゃ冷たいから、お湯を入れて少し温くしてる所だ」
「んーーー?こんなに大量の水なんて、何に使うの??」
「あー、プールの存在を知らなかったか!えーとな、簡単に説明すると、ただ泳いだりして遊ぶ所だな・・・。あ、そうだ!面白い物があるから貸してやろう」
マジックバッグから浮き輪を取り出した。
ぴゅーぴゅー息を入れて膨らませる。
「よし完成!」
「これは何?」
「水に浮くだけのモノだな。なのにコレが意外と楽しいんだよ!」
プールの温度が良い感じになったので、お湯を止めてからドバーッとかき混ぜ、浮き輪をプールに浮かせた。
「水だから少し冷たいけど、とりあえずプールを体験してみるといいぞ!そして浮き輪に掴まれば、きっとすぐにでも楽しさがわかるんじゃないかな?」
ドボーーン!
冷たいと言っているのに、なんという思い切りの良さ。
さすがウチの女性達は根性が違うな。
「つめたーい!そして想像してたよりも深かったーーーーー!」
「プールの底に足はつくと思うけど、あの浮き輪に掴まってみな」
フィオリーナが浮き輪に抱きついた。
「あはははははは!おもしろーい!!」
「だろ?浮き輪によじ登って真ん中の穴にお尻を入れると。プカプカ浮きながら進んだり出来るんだぞ」
彼女が言われた通り、浮き輪によじ登ってプールに浮いた。
「おおーーーーーーーっ!これすっごく楽しいかも!!」
ふむ、女の子が1人でプール遊びする姿を見るのも乙ですなあ・・・。
しかし大浴場には、面白い遊びをスルーするなんて有り得ない三人組がいた。
「あーーーっ!!フィオリーナが面白そうなことしてるっス!!」
「え?なに??」
「ああ!この広い浴槽も気になってたのよね!」
大浴場にルーシーの大声が轟いたので、他の人達もプールに興味を持ったようだ。
「こっちのは浴槽じゃなくてプールっていうんだ。少し温くはしてあるけど、ほとんど水だからな?・・・んで、プールってのは、ただ泳いだりして遊ぶ所だぞ」
浮き輪はもう一つあるんで、それを取り出して膨らませる。
「あーっはっはっはっはっは!」
ドボーーーン!
「ケホッ、ケホッ、誰よ!後ろから押したのは!?」
「フィオリーナだけずるい!わたしにも使わせてーーー!」
「おーい!浮き輪はもう一つあるからコレを使え!行くぞーーー!」
フリスビーのように、浮き輪をプール中央に飛ばした。
「「わーーーーーーーーーーーっ!」」
三馬鹿だけじゃなく、何人もの女の子が浮き輪に群がり大はしゃぎしている。
しかしまあ、プールではしゃぐ女の子達を見てると、ほっこりしますなあ~。
・・・全員素っ裸だが。
ぷるんぷるん揺れるのを眺めていたら鼻血が出て来た。
ハッ!?これはけしからんですよ!
後ろを向いて首の後ろをトントンしてたら、ミスフィートさんが大浴場に入って来るのが見えた。
「小烏丸っ!凄いじゃないか!とうとう城の大浴場が完成したんだなっ!」
「あっ、ミスフィートさん!さっき完成したばかりなんですよ」
「ん?皆が遊んでいるそっちの広い所も浴槽か?湯気が出ていないようだが」
「いえ、そっちはプールです。少しぬるま湯にはしていますが、ほとんど水なので少し冷たいですよ。んでプールってのは、泳いだり遊んだりする所です」
裸のミスフィートさんが目の前まで来たので、鼻血の勢いが倍増した。
「ほーーー!清光殿はこんな物まで用意してくれていたのか!」
「あの短期間でここまで細かく作りあげた実力と構成力、流石ですよね~」
彼女がプールに気を取られている隙に、ササッと布の切れ端を鼻に詰める。
「小烏丸は服を着たままだが、体を洗わないのか?」
「俺は風呂に入りに来たんじゃなくて、魔道具の動作確認をしてたんですよ。そしたらみんな入って来てしまってですね、まあ、今はこんな状況になってます。俺もプールで泳ぎたい気持ちはありますけど、もっと人がいない時にでも・・・」
でもプールって大浴場にしかないんだよな~。泳げるタイミングなんてあるのか?
いや、それ以前にココってもう女風呂状態じゃん。男の俺はどうすりゃいいんだ?
「気にすることはあるまい!さあ、服を脱いでくるのだ!」
「うぇえええええっ!?いや、そうは言ってもですね!あの中に入って見苦しいモノを晒すワケには・・・」
あの楽園で一人ブランブランさせながら泳ぐのは、さすがの俺でも抵抗がある。海パンなんて持ってないしなあ。ああ、別に普通のパンツでも問題はないのか。
ん~、少し泳ごうかな・・・?
「そうですね、折角なので少し泳いで来ますか!」
脱衣所に移動して、パンツ以外全て脱いだ。
そしてプールに向かおうとすると、ミスフィートさんに捕まった。
「体を洗ってからじゃなきゃダメだろう!それになぜパンツを履いている?」
「えーーーーーーっ!?プールって、そんな仕来りあったっけ??」
「さあこっちに来るのだ。久しぶりに私が洗ってやろう!ほらパンツを脱いで!」
「いや、ちょっと待って、あ~~~れ~~~!!」
・・・・・
洗い場でミスフィートさんにピッカピカに丸洗いされた。
でもたしかにプールも湯船と一緒で、体を洗ってからじゃなきゃダメよな。
もうやけくそで彼女の体も洗ってあげてから、ようやくプールの使用許可が出た。
ザブーーーン!
「おっ!冷たすぎもせず、なかなか良い温度じゃないですか」
「なるほど、プールってこんな感じなのか!」
プールの長さは大体25メートルって所かな?丁度いい距離だ。
ほとんどの人が泳いだ経験など無いみたいなので、みんなに色々な泳ぎ方を教えたりしながら、俺も隅っこの方で水泳を満喫した。
・・・正直めっちゃ楽しかった。とだけ言っておく。
ココを真の楽園にする為、小型ウォータースライダーの製作を決意したのだった。
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