111 美濃の軍勢を蹴散らしに行く
迎撃に向かう前に、美濃に不穏な動きがあったことを軍の誰かに知らせ、戦の準備をさせなければならない。
城の外に出ると、偶然にも築城の様子を見に来ていたチェリンを発見した。
「チェリン!美濃との国境に敵軍が集結中だ。大きな戦になる可能性があるので出陣の準備を任せる!私と小烏丸は三河の方達と一緒に別行動だ」
いきなりの戦争勃発に、チェリンが驚いている。
「まず私達が先に国境の様子を見に行く。皆を集合させたら、とりあえずは待機していてくれ。小烏丸が連絡を入れるので、動くのはそれからだ!」
「わかったわ!現在トラネコ城に行ってるカーラとカトレアはどうするの?」
「向こうで戦の準備をさせている所だ。トラネコ勢で美濃の軍勢を抑えつつ、ルーサイアからの援軍を待つ形となる」
「了解!こっちは任せといて!」
歩きだと、どんなに急いでも国境まで1週間以上かかるから、俺達だけで解決出来なかった場合にはすぐにでも軍を動かす必要があるだろう。
先行する俺達だけで蹴散らせれば楽なんだけど、今はまだ何とも言えんなあ。
三河勢と一緒に、美濃国境に向かってバイクで走り出した。
************************************************************
ルーサイアからミルドナーガまでは結構な距離があり、その日のうちに到着するのは到底不可能なので、途中で一泊してからまた美濃国境へと向かう。
一泊するのに清光さんが即席の家を建てたんだけど、アレは家じゃねえ。砦だ!
でも勿体ないので、砦はそのまま残してもらった。そのまま砦としても機能するし、国内を移動する時には寝泊まりも出来るという、素晴らしい宿泊施設だ!
よし!エルフ達を鍛えて、清光さんに近いレベルのチート部隊を作るぞー!
思った以上に道が悪くて全然スピードが出せなかったので。さらに道中でもう一泊し、ようやく美濃との国境に辿り着いた。
・・・・・
美濃との国境に到着し、国境を守るしては粗末すぎる壁に登ってみた。
ジャバルグもうちょい真面目にやれや!こんな壁じゃまったく役に立たねえぞ。
「もうかなり集まってるじゃねえか!ん-ーー、たぶん3000超えてんぞ?」
「全軍で一気に攻めて来るつもりですかね」
「奴らが怖気づいていたジャバルグを倒したのは我らだ。ジャバルグより強いとは思わないのだろうか?」
「まあ普通に考えたら、弱ってる今がチャンスってなるんでねえの?」
漁夫の利ってヤツだな。ミスフィートさんが言ってることにも一理あるけど、美濃は勝機と捉えたのだろうな。しかし残念ながら、そう簡単にはいかんのよね!
マジックバッグから拡声器を取り出した。
「とりあえず奴等に警告しますよ。聞くワケないから戦闘になるでしょうけど」
「それは何なのだ?」
「拡声器という魔道具です。声が大きく聞こえるのでたぶん奴等のボスのとこまで届くと思うんですけど、まだ実験前なんですよね、コレ」
「ハハッ、面白いモノを作ったな」
「いいなそれ!オレも欲しいぞ!」
「ちゃんと機能してくれたら、後で何個か作りましょうか?」
「頼んだ!」
・・・さて、なんて言おうかな?
「あー、テステス、只今マイクのテスト中。うおっほん!」
よし!ハウリングもしてないし、ちゃんと使えるようだ。
「そこに集まった美濃の諸君、直ちに解散しなさい。尾張近辺での不穏な動きは軍事行動と見做しますよ?5分以内に解散しないようならば、問答無用で攻撃を開始します」
まあ、こんなもんだろう。
「ぷっ!フハハハハハハハッ!なんだその警察口調は!」
「まあ、解散するとはとても思えんけどな」
「小烏丸!すごいじゃないかその魔道具!声が大きくて驚いたぞ!!」
「ビックリしたにゃ!」
それから5分待ったが、解散するつもりは一切無いようで、警告は無視された。
「ふむ、奴等は解散するつもりが無いみたいだぞ。どうする?」
「ならばもう、ビームライフルをぶち込むしかないでしょう」
「オレも追撃していいか?」
「あー、ならちょっと待ってろ。場をセッティングしてやる」
清光さんが前に出る。
「土壁!」
ズズズズズズ
うおっ!!
目の前に巨大な壁が出現した。
その長さは・・・、うん、長すぎて端が見えない。
「さあ、壁の上へ移動すっぞ」
「清光殿は無茶苦茶だな!」
「オレでもたまに驚くからな!」
「もうコレ、壁というか城壁クラスですよね?」
目の前に出来ている階段を使い、城壁の上に出た。
美濃の軍勢が慌てふためいて、こちらを指差している。
良い高さだ。これならとても狙いやすい。
ビームライフルを持ち、安全レバーを解除。威力を最大にセットする。
「チャンスは最大限に生かす、それが私の主義だ。・・・とっとと美濃に帰れ!」
お決まりの名セリフを言って今日のノルマを達成してから、ビームライフルのトリガーを引いた。
************************************************************
―――――美濃大名・リッチモンド視点―――――
『そこに集まった美濃の諸君。直ちに解散しなさい。尾張近辺での不穏な動きは軍事行動と見做しますよ?5分以内に解散しないようならば、問答無用で攻撃を開始します』
「リッチモンド様!尾張の者が何か言ってますが」
「聞こえとるわ!何だあの大きな声は!?」
「何か持っているので、魔道具じゃないでしょうか?」
「どっちにしろ無視だ!1、2、3、・・・たった6人で何が出来る!」
ふざけたことを抜かしおって!
見ればわかるだろう?この軍勢で尾張を蹂躙するんだよ!!
念の為、後3000の兵が到着してからだがな!
ズズズズズズ
「リッチモンド様!か、壁が!!突然目の前に、壁が出現しました!」
「はあ?・・・なっ、何だこの壁は!?」
「さっぱりわかりません!土魔法でしょうか?」
「そんな馬鹿な話があるか!一瞬でこのような壁が・・・、魔法なのか??」
「壁の上に先程の6人の姿が見えます!」
「なにッ!?ってことは奴等がこれをやったのか!?」
ビュオン
ドガアアアアアアアアン!!
突然壁が出現し、味方が慌てふためく中、爆音と共に視界が真っ白に染まった。




