108 尾張へ到着
ミスフィートさんなんだが、・・・ちょっと凄すぎねえか?
今日初めてバイクに乗った人が、もう50kmくらいの速度で走ってる。
レベルが高いから恐怖心が薄いのかもしれんけど、どう見ても絶対普通じゃないと思う。俺が最初バイクに乗った時なんて、緊張でプルプルしてたハズだ。
ミスフィートさんの成長の速さのお陰で、予定より早くトロンゾンに到着した。
街の宿屋に予約を取り、レベッカさんに挨拶に行った後、近くに美味い店があるとかで、夕食はそこで食べることになった。
・・・・・
「いやー、それにしてもミスフィートさん、バイクの運転に慣れるのむっちゃ早くない?」
「オレなんか最初乗った時、かなりヘナチョコだったぞ!アニキにレースを申し込まれたけど断った記憶がある」
「いや、皆について行くのがやっとだったぞ?」
「俺から見ても上手かった。毎日乗れば相当な乗り手に育つだろう」
なんかもう教えるまでもなく、俺より上手くなる気がしてならない。
食事が来たので食べてみる。
「確かに美味いですね!」
「美味いにゃ!」
「だろう?」
三河は料理も育ってるんだな。
尾張がここまで成長するのに、一体どれほどかかることやら。
食事が美味しいので話も弾む。
「三河の国は平和ですけど、尾張といい他国といい、なんで無茶苦茶荒んでるんスかね?最強の者が国を支配する構造ってなあ・・・」
「あー、それな。たぶんだがレベルのせいだと思うぞ」
「レベル?」
「戦をして気付いたと思うが、人を殺した時にレベルが上がらなかったか?」
「・・・ああ!上がりました」
「それだ。すなわち、人を殺すとどんどん強くなるんだよ」
「!!」
「神様も脇が甘いというか、これって殺しを推奨してるようなもんだろ」
すげー納得いった。殺せば殺すほど強くなる世界。
そして行きつく先は、最強が支配する国。
強くなるには、より強い者を倒せばいい。
弱ければ殺される。故に戦いが終わらない。
「非常に納得がいきました。平和を目指すのがどれほど難しいのかも」
結局は、最強の者が国を纏めるしかないような気がする。
平和を目指すにも、必要なのはやはり力なのだ。
幸せになるには最強の人物に仕えること。
ただし、ジャバルグみたいのに支配されたらそれもアウト。
俺は明確な敵がいたのもあって、皆に武器を与えることで軍のパワーアップを図った。しかしその武器を自分に向けられる可能性までを考慮していなかったな。
でもそれはもう手遅れか。どっちみち他国から尾張を守るには軍の強化が必要なのだから、そこを今更後悔しても無意味だろう。
内部からの崩壊を防ぐためには、単純な話で、最強で居続ければいい。
ただし、俺やミスフィートさんに届き得るオリハルコン製の刀は、与える人物の本質を見極めての上で尚、条件を厳しく設定して渡す必要があるだろう。
共に苦境を乗り切った気心の知れた古参の女性達には、そう目くじらを立てる必要はないかもしれんけどね。
それと、清光さんや虎徹さんに最強の武器を渡すことになってるけど、脅威になることを恐れて約束を反故にするってのもビビりすぎで論外だよな。
恩人を裏切るようなことをやりだしたら、権力を手にしたモノの末路に向かって一直線だ。
この三河を見てもわかるが、もし彼らが全国統一した場合、きっと素晴らしい世界が誕生すると思われる。当然尾張もそうするつもりだが、とにかく自分本位な者を国の支配者にしちゃイカンってこった。
おっと思考の渦に飲まれてしまった。もう考えるのはやめよう。
夕食後、宿に戻って一泊し、尾張に向かって出発した。
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「ミスフィートさん、ココです!俺と彼らが出会った場所!」
ちょっと道を外れてしまうけど、あの草原に寄ってみたのだ。
「なんでこんな場所にいたのだ??」
ミスフィートさんの質問に虎徹さんが答える。
「ああ、そん時オレらはジャバルグの偵察に行こうとしてたんだ。小烏丸と話してるうちに、取りやめになったけどな」
「あれから3年近く経ったが、結局小烏丸が望んだ通りになったな」
「道筋を作ってくれたのはお二人だ。本当に感謝しています」
ここで二人に出会わなかったら、俺は未だに森の中でゴブリンを叩いてただろうな。もしくは、もうとっくに死んでいるのかだ。
「さて、此処まで来たってことはもう尾張に入ったってことだ。ルーサイアってのは一番近い街だったよな?」
「もうすぐそこです。でも期待はしないで下さいね。つい最近までジャバルグが支配していた街なんで、マジで廃墟だらけですよ」
清光さんが、ふぅ、とため息を漏らした。
「大名が腐ってる国は民が哀れだな。尾張が良い国になることを期待しよう」
「頑張りますよ。美濃と伊勢がちょっかい出して来なければいいんですけどね」
「一発ガツンとかませて、ビビらせるしかあるまい」
「まあ、来たらそうするつもりです」
来たらマジで死ぬほど後悔させてやるからな!せっかく手に入れた平和を、他国に邪魔なんかさせねえよ。
そして長い旅を終え、ようやくルーサイアに帰って来ることができた。
三河の大名を連れて来たって言ったら、みんなクッソ驚くに違いない。




