104 三河の城
三河で動物乗り物を買い、城を目指して移動中。
「あはははははははっ!!」
初めての体験でミスフィートさんが無茶苦茶楽しそうに笑っているのを、俺は微笑ましく眺めていた。
しかしそんな楽しそうな姿を横目で見ながら、ふと我に返った。そして恥ずかしさでいっぱいになる。なぜ俺はこんな大事なことに気が付かなかったのだろう?
想像してみろ。デパートの屋上で、動物の乗り物で遊んでいる赤い流星を!!
周りからどう見えているかってのを完全に失念していた。
こんな姿、絶対にファンに見られるわけにはいかねえぞ・・・。
ハァ・・・、まあ気にするのはやめよう。これで城まで行かなきゃならんのだし。
ちなみにミスフィートさんは、白いウサギを選択した。
だが真っ白ではなく、思った以上にリアルなウサギだ。これを塗った製作者のセンスはかなりのレベルと言っていい。
ひょっとして、レベッカさんが自ら手掛けたんだろうかね?
んでもって俺の愛機はパンダちゃんだ。
やっぱ乗るならパンダだよな!?最初見た時からコイツに心を奪われてしまった。
・・・ん?この頭にある出っ張りはなんだ?
押してみる。
うにょうにょうにょうにょ
「うおおおおおおおおおおおお!!」
「なっ!?なんだその速さは!するいぞ!!」
まさかの加速装置か!?
もう一度押すと元に戻った。
パンダちゃん号を停止して、ミスフィートさんが追いつくのを待つ。
「小烏丸っ!今のはなんだ!?」
「頭に出っ張りがありますよね?それを押したら加速しました」
「んー、頭の出っ張り?ああ、これか!」
うにょうにょうにょうにょ
「おおおおおおーーーーっ!!」
ミスフィートさんが加速したので慌てて追いかける。
「待てーい、ルパーーーン!」
「あーーっはっはっはっはっは!!」
そんなこんなで、思った以上の速度で城へ近づいて行った。
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「あれか!?大きそうな街が見えるぞ」
「おおーーー、やっと着いた!」
最初の街を出てから3日、ようやく三河の首都に到着した。
ずっと加速状態で来たのに、到着するまでにこれだけかかってしまったのだ。
歩きだったら大変だったなこりゃ。
門番に事情を説明し、通してもらう。
「いやはや、素晴らしい街ですね~」
「尾張とは全然違うな!」
首都トラネコもそれなりに栄えてはいたが、こっちの世界の範疇だった。
だが三河は、文明が1ランクどころか3ランクほど違う。
こんなのを見てしまうと、今すぐ尾張を作り変えたくてしょうがない気分になる。
たぶんミスフィートさんも、俺と同じことを考えているに違いない。
うにょうにょと街の中を進んで行くと、デカい城が見えて来た。
「アレが三河の城なのか!」
「凄まじいな・・・。キミの知り合いは何者なのだ?」
「んーー、一般人とはまず常識が違いますね。とにかく頭の中が別世界なので、想像を超えた発展をしているのも全然不思議ではないです」
「尾張もこのような美しい国に出来るだろうか?」
「出来ます。俺の頭の中にも別世界が見えていますから。それにミスフィートさんも現在、別世界を見ているのです。後は帰ってからそれを再現するだけ」
先は長いけどな。時間さえあればやれる自信はあるぞ!
時間も遅かったので、宿で一泊してからまた城へ向かった。
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城門前にいた兵士に説明をし、しばらく待っていると、見知った人がやって来た。
「おお、赤い流星にゃ!」
「お久しぶりです、ニーニャさん」
「久しぶりにゃ!えーとこちらがミスフィート殿にゃ?」
「尾張大名ミスフィートだ。宜しく頼む」
「宜しくにゃ!んじゃ城のにゃかへ案内するから、ついて来るにゃ!」
ニーニャさんに連れられて城の中へ入って行った。
「これは凄いな・・・・・・」
「悲しいかな、こんなのを見てしまうと、トラネコ城がちゃっちく感じますね」
なんかもう、大きさも違うし美しさも桁違いだ。
「ココにゃ」
ニーニャさんが大きな扉を開けると、そこは大広間だった。
奥には玉座があり、清光さんが座っているのが見えた。
横には中二病チックな虎徹さんも立っている。
「来たか!久しぶりだな、小烏丸!」
清光さんが立ち上がって、こっちに向かって歩いて来た。
いやいやいや、そこで話をするんじゃないんかーい!
「お久しぶりです!」
「いや~、懐かしいな!その姿」
「虎徹さんも元気そうですね」
「で、そちらの美しい女性がミスフィート殿だな?」
「尾張大名ミスフィートだ。招待して頂き感謝する!」
「三河大名の清光だ。遠くまでわざわざ来てもらって、こちらこそ感謝する」
「虎徹だ。小烏丸から聞いていたんで、会うのを楽しみにしてた。よろしく!」
いやー、ホントに懐かしい。とはいえ、あれから1年も経ってないけどさ。
色々ありすぎて、10年くらい会ってなかった気分だよ。
「尾張からの旅は結構大変だったろう。とりあえず大事な話をするのにココじゃ落ち着かんから、場所を変えよう」
「最初に玉座の間に案内されるのは、外交の基本って感じですか?」
「俺も少しくらい見栄を張りたい時があるんだよ!凄いだろ?この玉座」
「確かに美しくも荘厳ですね。いかにも、王様!って感じがします」
「ハハハッ!まあ滅多に座らないんだけどな!じゃあついて来てくれ」
そして来客用の部屋へと移動し、同盟の話し合いが始まった。




