もう一人の吸血鬼
俺と藤花はこの夏休みシャーロットと過ごすことを決めた。
「俺ん家に藤花が来るみたいだからシャーロットも来るか?」
「いいのですか?」
「家族はまだ帰ってこないし大丈夫だよ」
どうせ藤花のことだから夏休みにどこに行くとかをシャーロットと話し合いたいのだろう。
「おっ邪魔しま~す」
「藤花か、会うのは昨日ぶりだな」
インターホンも鳴らさずにいきなりドアを開けて入ってくるのを見るとさすが藤花って感じがするな。
「藤花、お前なぁ幼馴染だが『親しき中にも礼儀あり』だ、インターホンくらい鳴らせ」
「別にいいじゃん。不用心に家の鍵を開けておくのがいけないんだよ」
それを言われるとぐうの音も出ないな。
「ま、まぁそのことはもういい。藤花はシャーロットに何か話したいって言ってたけど何を話したいんだ?」
俺の予想は夏休み何するかだと思われる。
「えっとねぇ~」
「シャーロットちゃんって名前いい名前だけど長いじゃん?」
「だからシャーロットちゃんの愛称をつけて短くして言いやすくしたいなって思ったの」
藤花は何でいつも俺の予想の斜め上を行くことを言うんだ?
「私の愛称ですか?」
あれ?なんかシャーロットは嬉しそうだ。
「で、どんな愛称を付けるんだ?」
「『シャロ』なんて言うのはどうかな?」
「『シャロ』か・・・いいんじゃないか?」
「シャロちゃんどうかな?」
「シャロですか、はじめて愛称なんて付けてもらったから少し変な感じがしますけど、シャロっていう愛称気に入りました!」
「よかった~」
「話すことはそれだけなのか?」
「これだけじゃないよ!」
次こそは夏休みどこ行くかだな。
「夏休みどこに行く?」
よかったやっと俺の予想が当たった。
って、俺は一体何をしてるんだ。
「山とかどうだ?海だと太陽の光でシャロが灰になっちまうし」
「山ですか、もしかして近くにあるあの山ですか?」
「そのつもりだけど?」
「それなら私は遠慮したいです」
「どうしてだ?」
「あの山には夜になると浮遊する少女が出ると噂がつい二日前になって出てきているのです」
え、シャロって吸血鬼なのにお化け怖いの?
しかもその浮遊する少女って夜散歩してるシャロのことじゃないのか?
「じゃあどこにしようか」
「私は海でも大丈夫ですよ?」
「でも太陽に当たったら灰になるんじゃないのか?」
「大丈夫です、このようにダイバーの恰好をすれば直射日光なんて怖くはないです!」
と、言いながらどこからともなくウェットスーツを出してきた。
「カッコイイ!」
「それは却下だな。そんなの着て海水浴場行ったら目立ちすぎる」
山も海もダメとなるとどこい行けばいいのかわからんな。
「じゃあ夏祭りなんてどうだ?夏祭りなら夜だし」
我ながらいい案だと思う。
「夏祭りいいね、行こう!」
「私も行ってみたいです」
「決定だな」
「じゃあ明後日の16時に俺ん家の前に集合な」
「りょうか~い」「わかりました」
「じゃあ藤花もそれでいいな?」
「うん!久しぶりに浴衣を着ようかな!」
「お、夏祭りっぽくていいんじゃないか?」
「ゆかたって何ですか?」
シャロは浴衣のことを知らないのか。
もともと海外にでも住んでたのかな?でも、シャロは流暢な日本語を話してるけど詳しくはわからないんだな。
「お祭りとか花火大会・縁日・盆踊りのみたいな夏の行事で着るオシャレ着だよ!」
なんだ?藤花浴衣に関して無駄に詳しくないか?
しかもウィキに書いてあることと同じだ。
「じゃあ明日浴衣を買いに行くか」
「いいですね!私も一度買い物に行きたいと思っていたんです」
「藤花もくるか?」
「あったりまえじゃん!」
「じゃあ決まりだな」
「わかりました」「わかったー」
「じゃあまた明日」
さて、明日どうすっかな。
『ピンポーン』
ん?藤花かシャロか?
「はいはい」
「Kann ich eine Sekunde mit Ihnen sprechen?」
ん?吸血鬼みたいだ。だけど話してる言葉は日本語じゃない、だけど英語でもない何語だ?
「すいません何言ってるのかわからないんですけど」
「Ich suche einen Vampir namens Charlotte.」
『シャーロッテ』?『シャーロット』のことか?それならシャロを呼べばいいのか?
一応英語で「ちょっと待ってください」って言っておこう。
「ジャ、Just wait please.」
多分これで通じたはずだ。多分!確証はない!
『ピンポーン』
『なんですか?』
「シャロちょっと来てくれ。俺ん家にまた吸血鬼が来てるんだ」
『え?吸血鬼がですか?』
「そうなんだ」
『少し待っていてください、今行きますので』
「どこにいるんですか?その吸血鬼というのは」
ちゃんと日傘を差すあたりやはり吸血鬼なんだな
「こいつだ」
「Charlotte!」
(シャーロット!)
「Lina」
(リナ)
「Warum ist Lina hier?」
(なぜリナがここに?)
「Ich bin aus Deutschland gekommen,um Charlotte zu treffen!」
(私はシャーロットに会うためにドイツから来たのよ!)
「Ich wollte dich nicht sehen, wenn ich konntoe」
(私はできれば会いたくなかったです)
この二人は何を話してるんだ?
何語をしゃべってるかもさっぱりわからんな。
「シャロ、この吸血鬼はなんて言ってるんだ?」
「えっと、なぜかはわかりませんが私に会いにわざわざドイツから来たらしいです」
ドイツということはさっきのはドイツ語か。
「えっと、この吸血鬼はシャロの友達?」
「友達じゃないです」
「でも、シャロに会いに来たんだろ?」
あ、もしかして昨日言ってた『思い出したくない友達』なのかな?
「Charlotte Wovon redest du?」
(シャーロット、何を話しているの?)
「Nichts」
(なんでもないです)
「Sie konnen kein Japanisch sprechen?」
(日本語で話すことはできないのですか?)
「日本語が話せないか聞いてみました」
「そうか、それでなんだって?」
「まぁそんなに急がないでくださいよ」
「Deutsch,Englisch,Rumanisch,ich kann.」
(ドイツ語、英語、ルーマニア語ならできるわよ)
「ドイツ語、英語、ルーマニア語なら話せるみたいです」
「じゃあ日本語は話せないのか」
「そうみたいですね」
「颯汰さんはドイツ語か英語、ルーマニア語は話せないのですか?」
そこら辺にいる高校生がドイツ語とかができると思ってるのか?
「ドイツ語とルーマニア語なんてもってのほか英語すら片言で話すのが精一杯だよ」
「では、できるだけ英語でお願いします。リナには日本語を学ぶように言っておきますから」
「わかった」
そう簡単に日本語は話せるようにはなれないと思うけどな。
だって日本語は世界の中の言語で最凶難易度って言われてるからな。
「えっと、My name is Sota.Nice to meet you.」
(俺の名前は颯汰だ。よろしく。)
「Nice to meet you too Sota. My name is Lina.」
(私こそよろしく。私の名前はリナよ)
「Lina is a good name.」
(リナか、いい名前だね)
「Thank you.」
(ありがとう)
そうだ!
「なぁシャロ」
「なんですか?」
「リナも祭りに連れて行かないか?」
「それはいいと思いますが、藤花さんに説明しなくてもいいのですか?」
「大丈夫もうラインで了承は取ってある」
「仕事が早いですね」
「お遅いよりいいだろ」
「そうですね」
「じゃあシャロ、リナに祭りの事と明日の買い物の事を説明してくれ」
「わかりました」
「Ich werde morgen Yukata fur das Festiv al kaufen,aber wird es kommen?」
(明日はお祭りのために浴衣を買うつもりなのですが、来ますか?)
「Ich weis es nicht gut, aber ich werde zusammen gehen」
(よくわからないけど、一緒にいくわ)
「行くらしいです」
「わかった、通訳ありがとなシャロ」
「お安い御用です!」
「じゃあまた明日なシャロ」
「また明日です」
「Wo wohnst du?」
(そういえばどこに住んでるんですか?)
「Ich habe noch kein Haus」
(家はまだないわ)
「Lebst du zusammen,bis du ein Haus findest?」
(家が見つかるまで一緒に暮らしますか?)
「Ist das ok?」
(いいの?)
「Ich habe nichts dagegen」
(かまいませんよ)
「Vielen Dank, Sharo」
(ありがと、シャロ)
『ピピピピ、ピピピピ』
まさか今日もシャロがいるわけないよな。
「お邪魔しています」
「Ich store.」
(お邪魔してるわ)
「なんでいるんだよ」
「す、すいません!ですが、日本人はみんなでご飯を食べるんですよね?」
「いや、そうなんだけど・・・」
「まぁいいや、今日は浴衣を買いに行くんだぞ、準備はしてるか?」
「ちゃんとUVカットの服を用意していますよ」
「UVカットって日焼けを防止するやつだから吸血鬼も消えなくて済むのか」
「そうなんですよ!いろいろ試行錯誤した結果UVカットが太陽の光を防いでくれることに最近気づいたんです!」
すっごい元気に説明してきた。
「UVカットの服を着ると灰にならないのか?」
「着てる所は灰にならないんです」
吸血鬼ってそんな感じの対策で日光から身を守るのか。
「もし着てないところが太陽の光に当たったら・・・」
「灰になりますね、もし頭だけが光に当たったら首なしですねw」
笑い事じゃないんだけどな、普通にホラーだから
「じゃあ、朝ご飯食べるか」
「パンを焼いておきましたよ」
「あぁ、ありがとう」
「どういたしましてです」
「そういえば、リナはどんな感じだ?」
「リナは自分の家が見つかるまで私の家に住むそうですよ」
「そうか、それなら安心だな」
「じゃあ朝ご飯も食い終わったし藤花を呼ぶか」
「そうしましょう」
『おい、藤花起きてるか?』
『起きてるよー』
『今日は浴衣買いに行くんだぞ』
『ちゃんと覚えてますよーだ』
『わかった、じゃあ俺ん家に集合な』
『はいはーい』
「颯汰さんも着替えてくるといいですよ」
「そうするよ」
藤花たちと夏祭りとか何このリア充イベント初めてなんだけど。
ついに俺にも青い春が来ちゃうのか?今年こそは来ちゃうのか!?
『ピンポーン』
お、藤花か随分と早いな。
「はいは~い」
「おっはよ~」
「朝っぱらから元気だな藤花は」
「当たり前じゃん!だって今日はシャロちゃんとリナちゃんと浴衣買いに行くんだから!」
「あぁそうだ、藤花にはまだリナを詳しく紹介してなかったな、リビングにいるから来てくれ」
「わかった」
「おはようございます藤花さん」
「Schon dich kennenzulernen,Sophi」
(はじめまして、私リナと言うわ)
「ねぇシャロ、リナが何言ってるかわからないんだけど・・・」
「あ、通訳しますね、えっと『はじめまして、私リナ』と言っています」
「ねぇシャロ、『はじめまして、私は藤花』ってリナに伝えて」
「わかりました」
「Schon dich kennenzulernen,toka」
「おい藤花、リナは一応英語も通じるぞ」
「そうなの?でも私も英語そんなにできないんだよね」
「大丈夫だ片言でも一応通じたから」
「藤花さん、リナが『これから仲良くしようね』だそうです」
「Nice to meet you too」
(こちらこそよろしくね)
「それじゃあ揃ったことだしショッピングモールに行くか!」
「そうだね!」「そうですね」「Das ist richtig」
「太陽の光大丈夫?」
「日傘があるから問題ないです」
「Is Lina the first summer festival?」
(リナは夏祭りは初めてか?)
「I have seen festivals in Germany, butthis is my first time in Japan」
(祭りと言うやつは昔ドイツで見たことはあるけど、日本の祭りは初めてよ)
「Okay than you can wearing and enjoy Japanese festival. You will be fun」
(じゃあ浴衣を着て日本の祭りを存分に楽しむといいよ)
「Ok I do」
(そうするわ)
30分くらいで大型ショッピングモールに着いた。
「ここがショッピングモールですか、意外と大きいんですね」
シャロはいつもAmasonで買い物してるからショッピングモールを知らないのか。
「シャロちゃん、リナちゃん!はやくはやく!」
「藤花、そんなにはしゃいでこけんなよ~」
「だいじょうぶ~」
「Sota is hard」
(颯汰は大変ね)
「I agree」
(そうだな)
「浴衣売り場は2階だよ!」
「これが浴衣ですか、事前にウィキで調べてはいましたが実物はやはり違いますね」
「Charlotte! Yukata ist sus!」
(シャーロット!浴衣ってかわいいわね!)
「Das ist richtig.」
(そうですね)
「じゃあどれがいいか選ぶよ~!」
吸血少女との日常#3へ続く
吸血少女との日常#2を読んでいただきありがとうございます。
怜斗です。
今回の『もう一人の吸血鬼』では『リナ』という吸血鬼が出てきますが、リナは基本的にドイツ語を話しますが最初の設定ではリナはルーマニア語を話す予定でした。
ルーマニア語にしなかった(できなかった)理由はグーグル翻訳が対応していないという簡単な理由です。
それで急遽ドイツ語に変えました。
ところどころ英語も出てきますが、それは留学生の友人に手伝っていただきました。
ただの雑談でごめんなさいw
次回はついに浴衣選びです!
本当は挿絵があるほうがいいんですけどねw
それではまた#3でお会いしましょう。