はじめまして
俺の名前は山代颯汰
俺には藤花という幼馴染がいる。
夜食を買いにコンビニに行って家に帰ってきたら藤花が玄関で寝ていた。
ん?なぜこいつが俺ん家の玄関で寝てんだ?
もしかして・・・いやいやそんなことはない
「おい起きろ、起きろ藤花」
「ん?」
「なななな、なんで颯汰がここにいるの?」
(俺が聞きたいんだが?)
ここは冷静に対処するとしよう。
「いや、ここは俺の家だ」
実際ここは俺の家ということを下駄箱の中の靴で確認済みだ。
そして、そのことを聞いてさっきの俺と同じことを思ったのか硬直してるし
「おい。大丈夫か?」
「はっ!」
気づいたみたいだ
まずはなんで玄関で寝てたのかを聞かないとだな
だが、その前に玄関からこいつを動かすのが先だな
「こんなところじゃなんだし俺の部屋で話を聞くから。立てるか?」
「うん大丈夫」
「で、なんで俺ん家の玄関で寝てたんだ?」
「えっと、よく思い出せないんだけど学校から帰るときに後ろから何かに襲われてそこから記憶がないんだよね」
後ろから何かに襲われて気づいたら俺ん家の玄関で寝ていたってわけか。
ん?でもなんで俺ん家の玄関で寝てたんだ?
そもそも藤花が襲われたのは道端なんだから道端か病院で寝てるのが普通なんじゃないか?
「そうか、それは大変だったな。もう時間も遅いし今日は泊っていくか?」
「ちょうど今日は妹も両親も旅行中で帰ってこないし」
この時間に家に帰らせるのは危ないしな。
「え?それって今夜颯汰と二人きりってこと?」
ここで動揺するのも無理はない。
幼馴染とはいえ高校生の男女なんだからな女一人で男の家に泊まると聞いたら驚くよな。
俺も同じ立場だったら悲鳴を上げているレベルだ。
「そうなるな。嫌なら無理しなくてもいいんだぞ、その時は家まで送っていくし」
「今日は泊っていくよ。今帰ってまた襲われても嫌だし」
「わかった」
ヤバイどうしよう。
その時のノリで「泊るか?」なんて言ったがこの後どうすればいいのか全く考えてなかった。
「夜ごはんは食うか?」
考えに考えた結果、夜ごはんにたどり着いたわけだ。
「食べる」
やっぱり襲われた後なわけだから少し元気がない。
「大したものじゃなくてすまんな」
と言いながら藤花の前にカレーを置く。
そしたら余程お腹が空いていたのか安心したのか藤花のお腹からは『キュルルルルル』と情けない音がしてきた
「しょ、しょうがないじゃん!お昼ご飯から何も食べてないんだから」
「俺はまだ何も言ってないぞ」
「う、うっさい!」
理不尽すぎないか?
俺何か悪いことでもしたのか?ただ単に藤花を助けて、ごはんを渡しただけだぞ?
むしろお礼を言われてもいいことだぞこれ。
だが俺ももう高校生だから理不尽なことにも臨機応変に対応しようじゃないか。
「それで藤花を襲ったやつの顔は見たのか?」
ここが原点であって一番重要なところだ。
それさえわかればこの事件?も解決に近づくんだがな。
「それがいきなり後ろからいきなり襲われたからよく見えてないの」
まぁそうなるよな。
「あ!でも翼みたいなのがあったような気がする!」
「翼?」
翼か・・・翼がある動物ってことなのか?
いや、でもカラスとか鳩がぶつかってきたぐらいじゃ人間は倒れないし、ましてや自分の体重より数倍重い人間を鳥が運べるわけがない。
「なんかコウモリみたいな翼が見えたのは覚えてるよ」
「コウモリみたいな翼?」
「そうだけど?」
コウモリでも人間を運ぶことはできない。だから鳥なはずがないんだけどな。
「疑うわけじゃないんだけど、本当に翼を見たのか?」
「うん」
コウモリみたいな翼を持っていてなおかつ人間を持ち上げて運ぶことができる力を持っている動物なんているわけがない・・・ん?いや、そんなわけがない一瞬吸血鬼のせいじゃないのかと考えてしまったが吸血鬼なんているわけがない
「風呂沸かしてあるから入るか?」
「入る」
「着替えは俺の服でもいいか?」
「大丈夫、じゃあ入ってくる」
「おう、いってら」
で、藤花を襲ったやつが誰なのかを考えないとな。
特徴といえばコウモリみたいな翼を持っていて人間を気絶させてそして運ぶことができる鳥いるわけがないのだからやはり吸血鬼と考えた方が妥当なわけなのだが、やはり吸血鬼がいるとは信じがたいのだがどうしてもそうじゃないと説明がつかない。
「だめだ、もうさっぱりわからん」
『ピンポーン』
誰だこんな時間に
「はいはーい」
ガチャリとドアを開けた先にはありえない人物がいた。
「夜分遅くにごめんなさい」
なぜありえないって?
それは、黒い翼が背中から生えているからだ。だがここで狼狽えてはいけない。あくまで冷静に対応しなければ。
「えっとどのようなご用件で?」
「この家の玄関に人間の女の子を置いて行ったの・・・」
やっぱり思った通りだ。
この少女が藤花を襲った犯人なのだ。
そして俺の思った通りこの少女は口元のキバや背中の翼から見てわかるように吸血鬼なのだ。
「えっと、なぜ藤花あ、いやその女をこの家の玄関に置いていったんですか?」
「どうしていいかわからなくて、とりあえずどこかに置いて行こうと思ったのですが、良い場所がなかったので近くにあった家につい・・・」
確かに家には不用心だが鍵をかけていなかった。
家に上げるのは少し怖いがこれを近所の人に見られる方がリスクが高い
「立ち話もなんですしどうぞ上がってくっださい」
「お邪魔します」
あ、背中の翼ってなくすことできるんだ。
そんな呑気なことを考えながらも後ろから襲われるかもしれないという恐怖はあったが変に意識するのはやめた。
「どうぞ」
と、言いながら紅茶を置いた。
「お気遣いありがとうございます」
それと同時に藤花が風呂から出てきた。
「え?颯汰この人は?」
藤花はここに自分を襲った犯人が居るとも思っていない。
「えっと、この人は」
「私から説明します。私の名前はシャーロットと言います。この辺に住んでいる吸血鬼です」
あ、自ら吸血鬼って名乗るんだ。
「吸血鬼ってことはもしかして私の血を吸うために襲ったの?」
「違うんです!私が家に帰ろうとしていた時に家の屋根から猫が急に飛び出してきたからそれに驚いて貴女にぶつかっちゃっただけなんです」
「ほぇ?」
俺は変な声を出してしまった。
だってあの恐ろしいと噂の吸血鬼が猫に驚いただけ?
「それだけですか?」
「それだけですけど?」
「なんだぁ恐ろしい人とかじゃなくてよかったよー」
「いや、十分吸血鬼ってだけで恐ろしいけどな」
「そうなんですか?吸血鬼は意外と温厚ですよ?たまに人間の血を吸うことはありますが、それは昔の話です」
「それは温厚なんですか?」
「まぁまぁそんなことは置いといて!こんなかわいい吸血鬼だよ?」
結構大事なことなのだが藤花にとっては『そんなこと』なんだな
「襲われたのは藤花なのにそれでいいのか?」
「可愛ければ問題ない!」
うわぁ、こいつマジかよ。
ポジティブなのか思考回路が狂ってるのか俺にはもうわからん。
「で、この吸血鬼をどうするんだ?」
「私の名前は吸血鬼じゃないです、ちゃんとシャーロットという名前があるんです」
「あ、シャーロットさんごめんなさい」
「そんな、さん付けで呼ばなくていいです。気安く接してください」
「ねぇねぇシャーロットはどこに住んでるの?」
そこ聞くのかよ!
普通一番最初に住んでるところ聞くか?
「私の住んでいるところですか?」
「そうそう!どこに住んでるの?」
「この家の隣です」
「えええええええええええ!?」
え?俺の家の隣?なんで今まで気づかなかったの?
「きゅっ、急にどうしたんですか?びっくりしましたよー」
「いや、俺この家に住んで14年だけど吸血鬼がいるなんて知らなかったから」
「知らないのも無理はないです。だっておとといここに引っ越してきたんですから」
おととい引っ越してきた人なんかいたのか。
今度かあさんに聞いてみるか。
「そうなんですか」
「そうなのです」
「「「・・・」」」
話すことがなくなって超気まずい!
「ねぇねぇ!シャーロットはいつもごはんとかどうしてるの?」
ここで藤花が俺も少し気になってたことを聞いてくれた。
「ごはんですか?ごはんは血ですよ」
あ、やっぱり血なんだ。
「やっぱり人間を襲って血を吸うんですか?」
「昔はそうしていたんですけど最近は世間の目のありますからamasonで注文しているんです」
なんて現代じみた方法なんだ。
俺の中の吸血鬼のイメージがすごい変わった。
「では、私は藤花さんの無事を見届けたのでこれで帰りますね」
「え〜もっと話したい〜」
「明日は学校休みだけどもう12時過ぎてるから寝るぞ」
「はぁ〜い」
藤花を襲った犯人が悪い奴じゃなくてよかったけど吸血鬼なのには驚いたな。
「藤花、お前は俺の部屋で寝ろ。俺はリビングで寝るから」
「わかった、じゃあおやすみ」
「ん、おやすみ」
なんだろう今日はいろいろなことがありすぎて疲れた。
寝る前に風呂に入らないとな
「はぁ、疲れたぁー」
「しっかし吸血鬼が実際にいるんだな」
「やば、もう1時半だ早く出て寝ないとな」
明日またシャーロットに話を聞いてみよう。
『ピピピピ』『ピピピピ』
「ん、?」
もう朝か、そういえば藤花は?
「おはよ。朝ごはん作っておいたよ」
「お邪魔しています」
「ありがとう・・・ってなんでシャーロットがここにいるの!?」
「私が呼んだんだよ」
いやいや、人の家に勝手に人というか吸血鬼かを招き入れるなよ。
「そうか、それでそのティーカップに入った赤いのって」
「血ですけど?」
「ですよねぇ」
「えっと、藤花さんでしたっけ?」
「なに?」
「昨日はその、えっと私のせいでごめんなさい!」
「もう気にしてないよ」
吸血鬼ってこんなにやさしいものなのか?
「その、お詫びなら私のできる範囲でならしますから」
「じゃあ私と友達になってよ!」
俺の考えの斜め上を行く回答だった。
「友達ですか?吸血鬼である私とですか?」
藤花の言ったことは俺と同じでシャーロットの考えの斜め上を言ったようだ。
「そうそう!シャーロットちゃんと友達になりたいの!」
「物好きなのか?お前は」
俺は反射的にそんなことを言ってしまった。
「いいですよ、もともとは私がしてしまったことですし」
「やったぁありがとうシャーロットちゃん!」
俺は藤花がそんなことをお願いしたものだから俺も吸血鬼のシャーロットと友達になった。
それから藤花を家に送った後に俺はもう一度シャーロットに話を聞くためにシャーロットの家に行った。
『ピンポーン』
「はい、どうかしましたか?隣に住んでいるえっと・・・」
そういえば名乗ってなかったな
「あ、颯汰です。」
「颯汰さんが私に何の御用ですか?」
「颯汰でいいですよ、お隣なのに挨拶をしてなかったなぁと思いまして」
「そういうことでしたか、気にすることはないですよ」
俺は何で最近引っ越してきた人に気づかなかったんだろう。
もしかしたら俺達以外のやつには見えないのだろうか?
「シャーロットはほかの人には見えないんですか?」
「いえ、普通に見えるんですけど、ただ単に私の影が薄いだけなんですよ」
あ、これ聞いちゃいけない奴だったのかな?
少ししょんぼりしちゃったし。
でも、シャーロットが引っ越してきたことに俺が気づかなかったことにもこれで納得がいった。
「私は影が薄いせいで二百年間誰にも気づいてもらえなかったんです」
「だから私に友達ができてうれしかったんです。出会い方はあんな感じでしたけどね」
二百年の間も誰も気づかれなかったのか。
あれ?二百年ってことはシャーロットは今何歳なんだ?
「二百年の間も誰にも気づかれなかったんですか?」
「そうなんです、だから少し寂しかったんです」
「俺達でよければ遊ぶ相手になりますよ」
そろそろ夏休みに入るから俺も暇だしな。
「ありがとうございます、すっごくうれしいです」
さっきまですごくしょんぼりしてたのにもう元気いっぱいって感じになってる
「友達なんて二百年前に一人いただけだったので」
「その一人って?」
「その子のことは思いだしたくないです」
相当その友達と嫌な思い出があったみたいだな。あんまり深くは掘り下げないようにしないとな。
「なんか、ごめんなさい」
「いえいえ、大丈夫です」
「私の方こそごめんなさい」
「それで、俺達そろそろ夏休みが始まるんで二百年ぶりに友達といっぱい遊びましょうよ!」
「え、いいんですか!」
うわぁ、何この笑顔超かわいいんだけどってそうじゃなくて!この夏休みシャーロットとどう過ごしていこうか。
「シャーロットは太陽の光とか大丈夫なの??」
「大丈夫ですよ」
大丈夫なんだ。
「太陽に当たったところが少し灰になるだけですから」
「大丈夫じゃないじゃないじゃん!」
灰になったら死ぬってことだろ?
じゃあ昼間遊ぶの無理じゃないのか?
「夕方になって太陽が隠れれば灰になった部分は治りますし、日傘をさせば問題はないんです」
夕方になったら治るとか言ってるけどそれはそれでホラーじゃねぇか?だって頭が太陽で灰になったら頭がない状態で動いてるってことじゃねぇか。
「吸血鬼ってそういうもんなの?」
「そういうものなのです」
『ブー』
ん?ポケットの中のスマホが振動した。
「もしもし?」
『あ、颯汰?』
「そうだけど?」
『ちょっとシャーロットちゃんと話ししたいんだけど』
「ああ、今俺の目の前にいるぞ」
『じゃあシャーロットちゃんに代わってもらってもいい?』
なんか話でもあんのかな?
「いいぞ」
「シャーロット、藤花が話したいって」
「もしもし?」
「そうですよ?」
「それさっき颯汰さんにも同じことを言われましたよ?」
なんの話をしてるんだ?
「わかりました」
『ピッ』
「何の話をしてたんだ?」
「えっと、『夏休み3人で遊ぼうよ』って」
藤花も俺と同じこと考えてたんだな。
「じゃあ、颯汰さんこれからもよろしくお願いしますね」
こうして俺と藤花は吸血鬼の少女?のシャーロットとの夏休みが始まるのだった。
吸血少女との日常#2へ続く
読んでくださった皆様ありがとうございます、作者の怜斗です。
この『吸血少女との日常』が初めての作品ですが、自分ではとても読んでいて面白い作品であると思っています。
この小説の執筆には私だけではなく、たくさんの人が「こうしたほうがいい」などの意見をくださって完成した小説です。
この小説を読んで『面白い』や『楽しい』と感じていただけると幸いです。
不定期になるとは思いますが、なるべく早く投稿することを目指しております。