椅子取りゲーム
お話を書き終えてから小説という分類でいいか迷いましたが、一応小説として投稿させていただきます。
さぁ、みなさん、これから始まるゲームは誰もが一度はやったことのある簡単なゲームです。
「椅子取りゲーム」
ルールは簡単。
音楽がかかっている間は円形に並べられた椅子のまわりを歩きながら回り、音楽が止まった瞬間から椅子に座ってもらい、見事椅子に座れたら次のゲームに残れます。
椅子はみなさんの人数よりも少なくしてあります。
椅子に座れなかったらそこで終了、ゲームオーバーとなります。
人数が減ればもちろん椅子の数も減らされていきますのでお気を付けください。
ルールはわかりましたか?
それでは始めさせていただきます。
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俺は今まで何をしてきたのだろうか…
当たり前のように学校に通い、当たり前のように進学し、当たり前のように就職した。
…まるでそれ以外に道がなかったかの如く。
もしかしたら道はそれしかないと思い込もうとしていたのかもしれない。
そりゃあ小さい頃には人並に夢もあったさ。
野球選手、パイロット、宇宙飛行士…
みんなが憧れる職業に憧れてた時もあった。
そんなものはただの夢物語でしかないとも知らずに。
いや、夢は夢であるからこそよかったのかもしれない。
夢を「それは夢だ」と気づいた時に夢は終わるのだから。
今までの人生で一番大きな転機。
学生から社会人へ。
就職すれば何かが開けると思ってた。
自分の人生が大幅に変わっていくと思っていた。
学生のときにはわからなかったけど、結局大学までの努力(勉強)ってのは就職する為の努力とイコールに近いものがある。
でも社会人って何だ?
夢も希望もない就職をした俺には仕事にお金以外の価値を見出す事が出来ない。
そのお金だってやってられないくらい税金で引かれてしまう。
仕事なんて売れるはずのない物をパフォーマンスのため売りに行くふりをする毎日。
偶然売れればいいが、売れなければ何も考えてない上司からの叱責が入る。
一言目にはあといくら売れる?
二言目にはいつまでに結果出せる?
最後には根性論。
こんなことをして何になるというのだ。
俺は偉くなんてなりたくない。
普通の収入で普通の暮らしが出来ればいい。
こんな苦しい思いをしてこれからどんどん狭くなっていく「出世」という道を進んで行きたくない…
俺は仕事から逃げた。
人間不思議なもので仕事でも何でも一旦ダメだと思うと今まで普通に出来ていたことでも出来なくなってしまう。
頭というか精神というか、体全体で「それ」を拒否してしまうのだ。
仕事を辞めた俺には何もない。
夢もなければ希望もない。
お金もなければ趣味もない。
ただ毎日を漠然と過ごす日々。
でも、そんな毎日の中、自分でやってみたいことが見つかった。
自分自身で本当にやってみたいことにチャレンジするのは人生で初めてかもしれない。
初めて胸躍る気持ちで就職活動が出来ている…
そんな気持ちも一週間ともたなかった。
世の中そんな甘いものではなかった。
終わってみれば手元に残るのは一通の封書だけ。
あぁ、俺は負けたんだ。
人生の節目節目の椅子取りゲームに。
俺は何もわかっちゃいなかった。
椅子取りゲームで一番重要なのは何だ?
もちろん最後に椅子に座れるかどうかだ。
しかしそれは結果論でしかない。
椅子に座れるかどうかを左右するのは音楽がかかっている最中。
そう、椅子の周りをみんなで回っている時だ。
その時に頭のいい奴は音楽が終わった瞬間からどう動いてどう自分の椅子を確保するか考えて歩いている。
音楽がかかっている最中、何も考えずにただ漠然と椅子の周りを歩いていた俺が座れる席なんてもうないのだ。
ちなみに初投稿作品となります。今後は長編の話も書いていければと思っております。ご感想・ご意見等ございましたら是非お願いいたします。