第12話 思い出の場所
目的の駅で電車を降りて、5分程歩いただろうか。
薄暗い空間から大音量で音が溢れてくる建物の前に、僕たちは到着した。
「ゲームセンター、だよね?こ、ここであってるの?」
「うわあ久しぶり、まだあってよかったわ」
一華の目の輝きから察すると、生前の思い出の場所はここで合っているらしい。
プリクラかUFOキャッチャーが目当てかと思っていたら、一華はそれらに目もくれずどんどん奥へ進んでいった。
見失わないように後を追いかけ、たどり着いた場所はより一層の音と光で圧倒してくるコーナーだった。
「知らないのも増えてるし、バージョンアップもしてる……あ、あのシリーズは無くなっちゃったんだ、残念」
「一華さん、ここって」
「あ、いやこれはその……一人で出来て、門限までの限られた時間に遊べる場所を探して辿り着いた結論でね、女子っぽくないのは分かってるんだけど、音ゲーって楽しいのよ!?」
焦って弁明する一華の言葉にあった通り、この場所にあるのは音楽に合わせてボタンを叩く、リズムゲームだ。
かなり種類が豊富で、タッチパネル操作だったり踊りを判定するゲームもある。
「一華さんゲーマーだったのか」
「一通りかじってはいたわ……なんか急に恥ずかしくなってきた!変だよね、女子なのにゲームでわくわくしちゃうなんて」
「確かに意外だったけど変では無いよ、むしろ嬉しいって思ってる、ほら」
僕は財布から一枚のカードを取り出して見せた。それは、アーケードゲーム全般のプレイデータを保存するカードである。もちろん音ゲーの記録も保存可能だ。
「僕も基本一人でよくやってたし、気持ちわかるよ」
「真大も音ゲーやってるの!?」
「うん、だから嬉しいんだ、まさか一華さんと音ゲーできるなんて思わなかった!」
「私も……やったことあるなら話が早いわ、真大のメイン機種から勝負しましょ!」
「余裕だなあ、オッケー、ついてきて!」
趣味が同じであったことにお互い興奮を隠しきれず、足早に筐体の前へ向かった。
二時間後、たっぷり音ゲーを満喫した僕らは店を出て、近くのベンチに座った。
大音量の空間から解放されて、落ち着いたような寂しいような不思議な気持ちになった。
「はー、腕が痛い!つかれたー」
「一華さんはぶっ続けでやってたもんね。休憩挟んだ僕もへとへとだよ」
お互いに得意な機種をプレーした後、一華は「どうせなら全部やりたい!」と言い出し店にあった音ゲーをすべてプレイしてまわったのだ。
「対戦出来ないやつまでやっちゃってごめんね、途中店にいなかった気がするけど退屈だった……?」
「いやいや、あの時はちょっと買い物してて」
「そうなの?何買ったの?」
「え、その、ちょっとね」
一華が一人で音ゲーをしている時は休憩がてら後ろで手さばきを見ていたりしたのだが、少しだけゲーセンを出て隣の店で買い物をしていた。
一華に詳しく説明することはできないので、誤魔化すために慌てて話題を変えた。
「それより、滅茶苦茶音ゲーうまかったね、最初にやったのとか本当に初見なの?」
「あのタッチパネルと手を振り上げる奴?だって私が生きてた時には無かった機種だもの」
一華の誘いに乗り、僕が一番やっていてそれなりに自信のあった機種を最初にプレーしたのだが、3曲目にはもうほぼ同じスコアを出されてしまった。他の機種では手も足もでないくらい、一華は音ゲーが上手だったのだ。
「遠出はできなかったから大会には出られなかったんだけど、ネット中継で見てて『この人なら勝てそう』て思うことはよくあったわ」
「ええ、隠れランカーだったの……」
ありえない話ではない。そう納得してしまうくらいの実力だった。メインでプレイしていたらしいタッチパネルのゲームなんて片手でありえない量のノーツを捌いていたし。
「どうせなら次は、隠れじゃなく正々堂々と勝負してみたいわね」
「一華さんなら無双できたりして……え?次?」
僕はその言葉に耳を疑った。
次。来世で、ということだろう。しかし、一華は生まれ変わるのを拒否して死神になったはずだ。もう一度同じ人生を繰り返すかも知れないから。大人が怖いという大きなトラウマがあるから。
「次……できたら楽しいかも知れないわね……」
なのにそんな言葉を口にしたということは、一華の中で何かが変わってきている可能性がある。
もしも一華が少しでも生き返りたいと思い始めたなら、僕にとっては願ってもない話だ。時間を共に過ごすたびに、一日じゃ足りないと感じていた。
もっと一華と一緒にいたい。それこそ来世でも。
「い、一華さん!」
気持ちが抑えきれず、僕は一華に話しかけた。
「何?また突拍子もないこと言うんじゃないでしょうね」
その言葉に少したじろぎ、冷静になってみる。周りを見渡すと、ここは人が多かった。これからしようとする話には向いていない。
「あの……もう少し静かな場所で話さない?」
本当はここで「言いたいことがある」と付け加えるべきなんだろうけど、恥ずかしくて言えなかった。
「いいわよ、ちょっと人通り多いものね」
適した場所が無いかスマホで調べると、近くに公園を発見した。自分が死んだのも公園だったので何となく嫌ではあったが、他に見つからず、遠くへ移動するのは緊張で気が持たないので仕方なくそこへ行くことにした。
先程購入した、カバンの中にあるものをちらりと確認し、気を引き締めて歩き始めた。
前半、思いっきり作者の趣味を詰め込んでしまいました。
音ゲー楽しいですよ!!(謎の宣伝)




