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太陽と19の巨人   作者: 満足気
4/6

イルディゴ暦 200年と21日 2

私たちはそれから語らった。

語らったというのは、本当に正しいのかはわからない。

彼らは言葉を理解しようと、私と親密になろうとしてたことは感じられた。

私が言葉を発する度、彼らは耳をそばだてるようにして真剣に聞き取ろうとしていた。

そして、必ず言葉を真似し、繰り返していた。

「お?」

一方の巨人が空を見た。

私ともう一方の巨人も、同様にそうした。

空に黄金の輝きがふたつ現れた。

一方は太陽だったが、隣のひとつは何ともつかなかった。

私たちはしばらくその光を見ていた。

いや、みていたのはおそらく私一人だったのだろうが。

輝きは一瞬だけ光を失い、それから今度はさらに大きく、きらめいた。

異様な轟音が響き、私の体は割れるかと思われた。そして巨人の一人が、灰色の目をしたほうが、私に覆いかぶさってきた。

ぶす、ぶすと液体を含んだ音が私の耳に入ってきた。私の視界は巨人に阻まれほとんどなかったが、かろうじて見えた足元に空の色よりも濃い、ラピスラズリのような青色の液体が流れ、広がりつつあった。

 

 巨人が立ち上がり、断続的にうめき声らしき音を立てながら私に背を向けた。その白く、なめらかな肌の背から青い液体が流れ出ていた。

 巨人は、私を明らかにかばっていたのだ。何が起きたのかはわからないが、彼は身を呈して私を傷つけまいとした。

「アイン!」

もう一方の巨人が叫んだ。アイン、と記したがこれはそう聞こえたままを記している。

そちらの巨人も、体は傷つき青い血を流していた。

巨人たちが向いた視線の先を追うと、先日彼らがいたらしい箱に似たものが落ちており、そこから這い出したものがあった。

 巨人だった。腰よりも下は銀色の光沢がある毛に覆われており、上半身はなめらかな肌だけだった。

遠目だったので詳しくはわからないが、新たな巨人は目を見張ったようだった。

「アイン」

彼は先に金色の髪の巨人が言った音とほとんど同じ発声をして、一歩ずつ恐る恐るといった体で近づいてきた。

「クート」

と灰色の目の巨人がつぶやくように言った。近づいてくる巨人から視線は逸らさなかった。

ここで突然、灰色の目の巨人が突然崩れ落ちた。同時に私へ青色の雨が注いだ。

「デプス、ベリヲ!」

銀の巨人が空を見上げ、金の髪の巨人を指さしながら叫んだ。その瞬間、銀の巨人に灰の巨人が掴みかかった。灰の巨人の左肩に孔が開いて青い血が噴き出していたが、彼は神の怒りのような勢いで突撃した。

銀の巨人は仰向けに打ち倒され、灰の巨人に体の上にへ乗られる形となり、更に一方的に、殴られ始めた。

 私の前のそれを呆然と見ていると、今度は左で巨人の叫びらしき音がし、見ると金色の髪の巨人が巨大な槍のような長物で、いつの間にか現れていた新たな巨人の胸を貫いていた。声はその新しい巨人のものだった。新しい巨人はすでに青い血にまみれ、どのような姿かは判別できなかった。

 「デプス!」

そのように銀の巨人が殴られる合間に叫んだ。もう顔は彼ら二人の青い血でわからなかったが、銀の巨人は叫んだあと猛然と灰の巨人の左肩へ掴みかかった。

 「「アアアアアアアアアアアアアアアア!!」」

と、彼らは大地が震えるような絶叫をし、互いに動いた。

 銀の巨人の腕は灰の巨人の孔の開いた左肩をとらえ、血を絞り出すようにしていた。

しかし灰の巨人が右のこぶしで銀の巨人の顎を殴って、ゴリと怖気立つ音が鳴ると、左肩に伸びていた右腕がだらりと垂れさがり、地に落ちた。

 灰の巨人はしばらく巨人の死体の上に座ったままだったが、やがて崩れ落ちた。

 どちらも死んだ、ようだった。


 私はその後浴びた血も落とさずにこれを刻んだ。

 生き残った金の髪の巨人は歩き去って行った。


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