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LASKA  作者: 朝舞
第一章 はじまり
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初めての討伐

ラスカはギルドの仕組みと自分の実力を理解すべく、数日は依頼を受けて過ごすことにした。ギルドにはランクというものがある。依頼を達成するほど期待値をもらえて、一定の期待値を満たし、ギルドで月に一度開催されている試験に合格することで、ランクを上げることができる。


数をこなすだけでなく、実力をつけないとランクが上げられない仕組みなのだ。


ランクは六段階で、ギルドカードに記される星の数で決まる。最初は星無し、最上級は星五つだ。星無しでは薬草集め等だが、上位のランクになるほど難しい依頼を受けられるし、報酬も上がる。


ただ、星三つからは義務が増えるとかなんとかで、星二つまでにするように、とディークリフトから言われていた。


慣れない場所で一人、ディークリフトとレイとは別行動になるが、彼らにも仕事があるので仕方ない。


ランクを上げ、初めて会った魔物は、この世界でもポピュラーなぷよぷよとしたものだったが……


ぷしゅっ


剣を一振りすれば呆気なく倒せた。


他にも、一人で討伐できるほどの魔物は難なく倒せたので、ギルドが数人で討伐することを推薦している依頼に目を通す。


「お嬢さん、冒険者に憧れているのですかな?」


声をかけられ振り向くと、いかにも冒険者という感じの男性がラスカをじっと見ていた。


「あこがれているだけじゃないですよ。」


そう応え、ラスカは掌を男性に見せる。ラスカの掌から金色の文字が現れ、彼の前に並ぶ。ラスカが冒険者であることを示す文字の羅列を見て、男は感嘆の声を漏らす。


「ほう、冒険者でしたか。これは失礼しましたな。」


ほっほっほっ、とまるで老人のように笑う男性だが、彼はそれほど年老いていない。青年、とまではいかないが若々しいし、鍛え上げられた肉体が服の上からでも分かる。


「我輩はドラクレイオス。よろしくお願いしますぞ。」

「ラスカです。」


ガシッと握手すると、ドラクレイオスはにかっと笑った。


「ラスカ殿は、魔物討伐をしようとしているんですな?」

「はい。まだ、パーティーにさんかしていなくて。」

「では、我輩と組みますかな?」


ドラクレイオスがあっさりそう言うので、ラスカは何度か目をしばたかせた。今まで、他の冒険者にまともに取り合ってもらえなかったからだ。


「えっと、いいんですか?」

「なに、我輩とラスカ殿の仲ですからな。ラスカ殿は新米冒険者のようですからな、我輩がいろはを教えますぞ。」


ついさっき会ったばかりなのだが、そんなことを言っている。


こうして、ラスカはドラクレイオスとパーティーを組むことになった。




ーー




「ドラクさんは、ゆうめいじんなんですか?」


今、ラスカは彼と共に彼の仲間がいる場所へと向かっている。その道すがら、冒険者と思われる人達がドラクレイオスに尊敬の眼差しを送っているのだ。


「我輩は、有名ですかな?」

「あの、わたしがきいているんですけど。」

「ほっほっほっ、そうでしたな。しかし、なぜこうなっているのか我輩にも分かりませんな。」


ドラクレイオスもディークリフトと同じように、周りのことを気にしていないらしい。


「着きましたぞ。」


彼はそう言うと、町外れにぽつんと建っている小屋へと入っていく。そのとたん、中から二つの声が飛んでくる。


「ドラク、あんた今までどこにいたんだい?!」

「ドラクにぃ、エレンさんがご立腹っスよ。」


ラスカがドラクレイオスの後ろからひょこっと中を見てみると、そこにいた若い男女と目が合った。


「「えっ……」」

「あ……はじめまして。」

「二人共、紹介しますぞ。一緒にパーティーを組むラスカ殿ですぞ。」


ドラクレイオスの言葉に、二人はラスカをあらためて見る。


「マジっスか。」

「へえ、この子がね。」


少し驚いてはいるものの、彼を信頼しているのか、深くは追及しない。

女性の方がラスカを探るように見つめていたが、やがてニヤリと唇の端を上げた。赤褐色の波打つ髪が魅力的だ。目尻の尖った目が、獲物を見つけた獣のように輝きを放つ。


「ふっふっふっ……」

「こ、怖いっスよ、エレンさん。」

「あ?なんか言ったかい、スー?」

「ひぃぃぃぃっ?!」


スーと呼ばれた青年が、部屋の隅まで後ずさる。エレンと同じくらいの年だろう。茶色の前髪が目の方まで伸びていて、エレンとは違い気弱そうな印象を受ける。エレンはそれを一瞥すると、真っ直ぐラスカに向き直った。


「ラスカ、だっけ?あたしはエレン。弓使いだよ。

で、あっちで壁と仲良ししてんのがスーさ。」

「ちょっ、エレンさん?僕だって自分で自己紹介したいっス。」

「ちなみにスーって名前は、あいつが・・・っス、・・・っスって口癖だからスーなんだよ。」

「エレンさん、無視しないでくださいっス~。あ、でも今の紹介の仕方だときっと一発で名前覚えてもらえるっスね。さすがっス、エレンさん!」


スーは打たれづよい人のようだ。

彼もすぐにラスカの前に立つと、人懐っこそうな笑顔を浮かべる。


「よろしくっス、ラスカさん。僕は魔法使いで、サポート係をしているっス。」

「よろしくおねがいします、エレンさん、スーさん。」


今まで黙って三人の会話を見守っていたドラクレイオスは、ほっと胸を撫で下ろした。

エレンやスーがラスカを認めるか心配だったのだが、その心配は無用だったようだ。


「ラスカ殿はパーティーを組むのは初めてらしいですからな。二人共フォローするんですぞ。」

「もちろんさ。」

「頑張るっスよ。」



☆★☆★




四人は時間短縮のため、移動しながら話を進める。目的地は、王都の郊外に広がる森だ。

ドラクレイオス達のパーティーは、エレンが中距離から遠距離の攻撃、スーが回復や防御、ドラクレイオスは敵に合わせて戦闘スタイルを変えているらしい。ほとんど接近戦を担っている。ちなみに、素手だ。


「ところで、ラスカ殿はどうやって戦うんですかな?」

「え……ドラク、そんな大事なことも聞いていなかったのかい?」

「あり得ないっス。」

「ほっほっほっ……」


上下関係がよく分からない三人である。

ラスカは背中の荷をといて三人に見せた。三人共、中から取り出した巨大な剣を見て言葉を失っている。


「それ、ラスカさんの身長くらいあるっスよ……」

「さすがに驚いたね。」

「これで接近戦はラスカ殿に任せられそうですな。」


ドラクレイオスがほっほっほっ、と笑った時、ガサガサッ……と何かが四人の元へと近寄って来た。


森の中の茂みから四人の目の前に現れたのは、子供くらいの大きさの魔物の群れだった。二足歩行していて、身体は人に近い。

それが、七匹いる。


「……上っス!」


スーの言葉と同時に、木の上に潜んでいたらしい魔物が飛びかかってくる。どうやら八匹の群れだったようだ。


ヒュンッ


すでに弓を構えていたエレンが落ち着いた様子で矢をいる。矢は見事に命中し、地面に落ちた魔物にドラクレイオスが剣でとどめをさす。


それを皮切りに、戦闘が始まった。


「見ているんですぞ、ラスカ殿。」


ドラクレイオスは剣を片手に、魔物に斬りかかる。彼の攻撃が魔物の腕を切り落とし、怒り狂った相手が反撃してくる。


「ウォール!」


すかさずスーが壁を作り防御する。魔物が壁にぶつかったところに、エレンが矢を放った。今度は急所に当たったのか、すぐに動かなくなる。

これで、あと六匹。


ーーなるほど、エレンさんの攻撃は軌道を変えられないから……


エレンは魔物が避けられないと判断した時にだけ攻撃していた。魔物の動きを先読みする必要があるため、相手がジャンプした時の着地点か、攻撃の前後の一瞬の隙をついている。


その時、三匹の魔物達が標的をエレンとスーに切り替えた。スーがすぐにそのことに気がつき、彼女のもとへ駆け寄る。


「ちょっと、なんでスーまで来るのさ?」

「エレンさんを守っている時に僕が攻撃されるかもしれないからっス!まだ魔法の同時発動は無理っス!」


スーは自分とエレンを守るように壁を作る。その周りを、魔物達が攻撃し始めた。


「スー!これじゃ、いつまでたっても攻撃できないじゃないかい。」

「あ……そうっスね。」


ラスカは剣を抜くと、二人を囲む魔物に急接近する。一匹を二人から引き離すように切り飛ばし、すぐに離れる。

二匹の魔物はキッとラスカの方を向くと、同時に突進して来た。


「スーさん、いっぴきのまえにかべ。」

「?……了解っス!」


どんっと一匹が壁に当たっている間に、ラスカは突進してきたもう一匹の攻撃を避けながら目の前で剣を横に振る。魔物は突進を止められずに自ら刃に突っ込んだ。


壁にぶつかった一匹には矢が刺さっていたが、怪我をおった魔物はより凶暴になることを知っていたので、きっちり絶命させておく。


「ラスカ殿!」

「わかってます!」


ラスカは振り向きながら剣を横に一振り。背後にいた魔物が飛び上がったところに矢が刺さり、落ちてくるタイミングを見計らって下から勢いよく突いた。


「はーっ!」


剣が魔物を貫き、ぼとりと死骸が落ちる。

ドラクレイオスも二匹倒していたようなので、これでようやく八匹が全滅した。



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