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LASKA  作者: 朝舞
イベント〈ハロウィン〉
38/55

ハロウィン編

四章途中ですがイベント編です

「皆ぁ、ヘロウィンやらなぁい?」


マスターに呼ばれラスカ達が裏のギルドに集まると、彼はそう話を切り出した。


「ヘロウィンってにゃに?」


真っ先に興味を示したキットに、マスターは手にした本に目を通しながら説明する。


「ヘロウィンっていうのは、秋の収穫に感謝してお祝いしてねぇ、夜になるとぉ、ゴーストが来るんだってぇ。それで、『トリック・オア・トリート』って言ってぇ、お菓子をもらうみたいだよぉ。」


四人ははたと顔を見合わせる。


「お祝いをしたらゴーストが来て、お菓子をくれる?すっごく意味分かんないんだけど……。」

「新種の魔物か。すぐに討伐しよう。」

「討伐……ゴーストには、物理攻撃は効きませんよね?」

『るーが、じょうか、するー?』


相談を始めた彼らに、「それは無理だよぉ」とマスターが否定する。


「マスターの言う通りでございます。夜になり、お祝い……もとい、儀式で誘い出してからでないとーー」

「に、兄ちゃん、そういう意味じゃぁないよぉ?」

「さようでしたか。」


金髪の癖毛をクルクルと指先で弄りながら、苦笑いを浮かべて言う。


「これは、皆で仮装してぇ、お菓子を配ったりもらったりするイベントなんだよぉ。ということでぇ、各自でお菓子の準備と仮装してぇ、夜に集合ねぇ!」




ーーー




夜。

呼び鈴を鳴らすと、開けてくれたのはやはり兄さんだった。


「わぁ、お兄さんの仮装、似合っていますね。」

「本物の執事みたいだね。」


黒の燕尾服に身を包んだ兄さんが、にっこりと微笑む。


「ふふ、執事ではございませんよ?」

『あ!きゅーけつきー?』


よく見れば、口元から牙が覗いていた。


「マントは少々邪魔でしたので、外しているのです。皆様もよくお似合いですね。」


ラスカはドレスを、レイとルイはそれぞれ悪魔と天使の衣装を、ディークリフトは狼耳のカチューシャを無理やり着けさせられていた。いつも束ねている長い髪も下ろしているので、本来の耳が隠れ、狼耳が自然に生えているようだ。


「はぁ。あいつ、余計な事を……。」


これらを準備したのは、例のディークリフトの母である。「こんな楽しそうなイベント、参加しないと損ですのよ!」と、彼が外せないように奇妙な術まで施したそうだ。


「お待たせだにゃー」

「……」


医務室の方から、キットとゴートも来た。


「えっ?!傷……!」

「ミイラの仮装だにゃ!上手くできにゃくて、ゴートに手伝ってもらってたんだにゃ。」

「……」


問題はゴートの方なのだ。顔に生々しく大きな傷がはしり、皮膚と皮膚を細い金属の留め具が繋ぎ合わせている。皮膚の一部は鉄のようになっていた。


「ゴートのも仮装にゃんだにゃ。描いてあるだけだから大丈夫だにゃ!」

「……」


ゴートは頷き、傷の端の方を少し擦って見せる。確かに、傷がにじんで消えている。


「……本当、ですね。」


外見の割には手先が器用なようだ。


「皆揃ってるねぇ?……あぁっ!ディークリフトとかぶったぁっ!?」


マスターの頭にも狼耳が乗っていた。タレ目のせいか、普段の印象のせいか、ディークリフトと比べると、そこはかとなく弱そうではあるが。


「マスターも、似合ってると思うにゃあ。」

「えぇ。可愛らしいですよ。」

「リボンを着けるといいと思うにゃあ!」


狼男に対する言葉だろうか、とラスカとレイは考える。マスターも同じことを思ったようで、微妙な表情だ。


「え、二人ともぉ、それ誉めてるのぉ?」

「はい。」

「んにゃ。」


兄さんはお茶とお菓子を配りながら、キットはそれを食べながら答えた。


『おいしー!』


丸くてモチモチしたものが串に連なって刺さっているもの、白く柔らかい皮の中に甘い豆が詰まっているもの。兄さんの用意したお菓子はどれも見たことがないが、おいしかった。


「じゃあ、オレもお菓子を……」

「……あ!違うよぉ!」


皆と同じくお菓子を堪能していたマスターが、ハッとしてレイを止める。


「『トリック・オア・トリート』って言わないとぉ。『悪戯か、お菓子か』って意味でねぇ、お菓子をくれない人には悪戯するんだよぉ。」




☆★☆★




『ごーと、とりっく・おあ・とりーと!』

「……」


差し出されたのは、ドライフルーツ。お菓子かどうかは分からないが、甘いものではある。


『わーい!ありがとー!ごーとの、おいしいから。るー、だいすきー!』


ゴートは日頃からドライフルーツを作っては時々ルイにもあげていたようだ。


『ごーとも、とりっく・おあ・とりーと、いってー?』

「……」

『いってよー?』

「……」





「ほらほらーレイも言うんだにゃあ!」

「わ、わかった、わかった!トリック・オア・トリート!!」


キットに追いかけられていたレイはようやく解放され息をつく。お菓子を取り出そうとしたキットは、ペタペタと自分の身体をさわり、首を傾げた。


「……にゃい?!にゃくさにゃいように、袋に入れて首から下げていたんだけどにゃあ?」

「…………包帯の下に巻き込まれてるよ。」

「にゃんとっ!」


包帯から袋を引っ張り出すのを手伝い、レイがもらったものは。


「わしゃのおやつだったんだけど、あげるよにゃ!」

「あ、うん……」


手渡された干し肉に、曖昧な返事をするしかなかった。





「とりっく・にゃー・とりっく・にゃー!」


お菓子を出そうとしたマスターは、二の足を踏んだ。


「キットォ、それじゃあ悪戯しか選択肢がないじゃないかぁ。」

「んにゃ?わしゃあマスターに悪戯をしたらいいのかにゃ?」

「いや、そうじゃなくてねぇ、合言葉がねぇ」


勘違いを指摘しようとしたのだが、キットの行動の方が早かった。


「にゃははっ」

「え、え?キットォ?」


彼の動きはとても素早く、マスターが何をされたのか認識しないうちにその場を去ってしまった。


「……」


狼耳にリボンをつけられ、さらには両頬に三本ずつ髭を描かれたマスターがその場に取り残された。





『ますたー!』

「トリック・オア・トリート、です!」

「可愛い天使とお嬢さんだねぇ。」


にこにこと頷くマスターの耳と顔を見て、ルイとラスカは顔を見合わせる。


「マスターも、その、さっきより……」

『かわいくなってるー』

「えぇっ?!僕はいったい、何をされたんだぁい……?」


しょんぼりと落ち込むマスターだったが、すぐに明るい調子に戻り二人を見た。


「あっ、でもねぇ、可愛いになら悪戯されちゃうのもいいかもねぇ。」


そう言いパチリとウィンクして見せる。

彼の顔をじっと見て、なにやらうずうずしていたルイが、ぱっと顔を輝かせた。


『ますたー、しゃがんで、め、とじてー』

「いいよぉ」

『えいっ』


元気な声と共に、ルイが青年の首に飛びつくようにして両手をまわす。


「わわっ、ルイちゃん大胆だよぉっ」


そして、しゅるりと可愛らしいリボンを着けた。


「えぇっー?!」

『ちゃぴぃー!にあう、にあうー。』

「チャピィ……ふふっ」


リボンに書かれた名前と思われる文字を見て、ラスカは思わず笑ってしまった。


「チャピィ?ルイちゃん、僕の仮装はねぇ、狼なんだよぉ?犬じゃないんだよぉ?」

『えっ……』

「残念そうな顔しないでぇ。」





「賑やかだな。」

「ええ。」


ポツリと漏らしたディークリフトの言葉に、同じく席について様子を見ていた兄さんが頷く。


「ディークリフト様も楽しまれているようで何よりです。」


狼耳を見てそう言う兄さんに、彼は首を振る。


「これは呪いがかけられている。取れない。」

「おや、それは困りましたね。」


言いながら、狼耳が時折ピクピク動くのを、兄さんは言及することなく見つめていた。


ーー本物のはずないのですが……ちょっと触ってみたいような。





やがて皆テーブルに集まり、お菓子とお茶を飲みながら、遅くまでヘロウィンの夜を楽しんだのだった。

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