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LASKA  作者: 朝舞
第三章 手がかりを求めて
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掴んだ手がかり

「本当に、貴方がたには感謝しておる。改めて礼を言うぞ。」


別れの時。長が何度めか分からないお辞儀をする。見送りに来た草原の民達からは、沢山のお土産を貰った。


レイとルイはとても可愛がられていた為、名残惜しそうにかわるがわる頭を撫でられていた。ディークリフトは、魔法を得意としている男達からいつか試合を、とせがまれている。いつも通り面倒くさそうな反応を見せる反面、まんざらでもない表情も見えた。


ラスカはというと……


「ラスカさん、今度は俺と手合わせを!」

「弟子になりてぇ。」

「剣神……剣聖…………」


ファン、というよりも、信者が増えていた。魔法よりも物理的な強さを追及している者が多いことは知っていた。だから好意的に思ってくれているのだろう。ただ、ちょっとアレな人もいるだけで、問題はない。


「ああぁぁ……渾身の一撃を受けてみたい……っ!」


…………問題は、ない。


「……ラスカ。」


頬をひきつらせていると、サーシュが駆けてきた。


「……ボクは、ここに……残る、けど……、聖獣様が、生まれて……心配が、なくなったら……その時は…………」


指先をいじりながら少しモジモジしていたが、その目には確かな意志があった。


「……その時は……一緒に、いい?……ボク、リークリフトみたいに……魔法、上手になりたい。……強く、なりたい……!……できることなら、力になる……から……」

「そうか。」


ディークリフトは短くそう答える。


「いいだろう。煌とも話がしたい。」


サーシュはぱあっと目を輝かせると、柔らかく微笑んだ。


「ありがとう……!」

「この地をたつ時は、アレスティア王国の王都にあるギルドへ行けばいい。」

「……うん。」


頷いたところで、その瞳の色が変化する。煌だ。

深い色の瞳がディークリフトを見据え、引き締まった表情で口を開いた。


「『鍵』は汝に預けた。あれを調べれば、奴らについて何か分かるかも知れぬ。……頼んだぞ、『大いなる意思の子』。」

「……ディークリフトだ。妙な呼び方をするな。」


迷惑だ、と言わんばかりのディークリフトに、煌は荘厳な雰囲気を纏ったまま笑みを浮かべた。その笑みが消えたとき、同時に煌の気配も消える。


「……じゃあ……またね……」


手を振るサーシュの後方から、冬の気配が濃くなった冷たい風が吹いた。


ーー御厚恩、拝謝ス。


その中には……聖獣の温かい魂もあるような気がした。




ーーー




「これが、『鍵』。」


聖域にある、屋敷の一室。研究室として使っている部屋で、ディークリフトとレイは掌に収まるほどの黒くて丸い石を眺めている。調べた結果、とんでもない効果があることが判明した。


その効果は、魂を増幅させるというもの。黒い魂を簡単に具現化……つまり、器を持たない魔物……人形ドール化させるというものだった。


煌は、数年前に、謎の黒マントの人物が集落を襲った、と話していた。その時に聖獣が戦い、奴を撃退させた。だが、その日を境に聖獣の様子がおかしくなっていった……。


「……なるほどね。その黒マントと戦った時に、この石を植え付けられたってわけだ。」


ディークリフトの側で今まで黙っていたレイがポツリと呟く。


「聖獣は白い魂でできた白神獣だっただろう。これは白い魂を黒くさせるのか。」

「それは違うよ、ディーク。確かに白神獣は白い魂でできているけど、全部じゃない。ちょっとは黒い魂も入っているんだよ。この世界のモノには白い魂と黒い魂の両方が必ずある。


多分、黒マントと対峙した時、聖獣は怒っていた。いつもは見えない黒い魂が表に現れていたんだね。そこに、これを使われた。」


レイが石を指の先で軽く弾く。カランッと乾いた音で転がるそれは、今では力を失っていて使い物にはならない。


「怒りはこれによって増幅して、やがて理性も失ってしまう。」

「あの時の牧師と酷似しているな。」


あの時の牧師、とはミハエルのことだ。以前、巫女からの依頼で処罰を受けた一人。たしか、人形ドールに操られていたが……


「あの人形はあいつを操っていたというより、あいつ自身が生み出したモノだったということか。」


ディークリフトは、机に置いてあった瓶を手に取る。中には、石とよく似た材質の小さな欠片が入っている。ミハエルの時に発見したモノだ。その他にも、ごく稀にこの欠片を残す人形ドールがいた。


なぜ欠片なのか、というと倒すときに砕けてしまっていたからだ。石がどこにあるのか分からないし、案外脆く壊れやすい。


だから今回、欠片ではなく石が手にはいったのは良かった。貴重な資料となる。


「問題は、この石を使ったと思われる黒マントだね。」

「わざわざ黒い魂に植え付けているんだ。目的は、人形ドールの大量生産だろ。」


そんなことをしてやりそうな事といえば……


「……世界を滅亡。良くて征服とかかな?」


さらっとそんな事をいうレイ。

見た目が可愛らしい少年なだけに、余計にそんな言葉が似合わない。


「……滅亡、か。」


それは困る。


「その黒マントを潰す。」

「ん?うん、その方がいいと思うけど……珍しいね、ディークが自分から世界を救うなんて。」

「世界を救うとは、一言も言っていないが。」

「え……?違うの?」


首を傾げるレイに、ディークリフトは人差し指を立てる。


「いいか、人形ドールは何もしなくても生まれるモノだ。へたに増やして品質を落とされても困る。」

「あぁ、そっちなんだ。」


レイが納得……そして呆れながら頷いた。


ディークリフトは、人形ドールを喰わなければいけない。正確には、人形ドールを浄化して、その魂の一部を取り込まなければいけない。

この黒い石で人形ドール化したモノの魂でも喰うことはできるが、どうせなら純粋なモノがいい。


そして、ディークリフトは大量生産された人形ドールは質が落ちると考えている。


人形ドールに質があるのかどうかは知らないが。




ーー奴らを狩って、魂をもらい……完成させなければ。


ディークリフトは自分の掌を見つめ、ぐっと握りしめた。


誰にも邪魔はさせない。


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