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LASKA  作者: 朝舞
第三章 手がかりを求めて
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世界の理

『さんせーい。ひとやすみー』


休憩の提案にルイがすぐに賛同する。


『おちゃ、もってくるー。』


そうレイに言うと、聖域への扉を開けて屋敷へと取りに行った。すぐにバスケットを抱えて戻ってきたので、三人で適当な場所に腰を下ろす。


「それで、普通の魔物とディークリフトさんが倒している魔物の違いってなんですか?」


一息ついた後、ラスカはそう切り出した。レイは茶菓子を食べながらちょっと考える素振りをする。


「大きな違いは、死骸が残るか残らないかだね。ディークリフトの倒している魔物は、浄化したら光になって消えちゃうでしょ?」

「そうですね。普通の魔物が動物という説明ができるなら、あれは当てはまりませんし。でも、動物でないなら、一体何なんですか?」

「うーん……そうだね……」


レイは言葉を切り、ふと考え込んだ。


「それを教えるには、この世界の理から話すことになるけど?」

「なんか、いきなり難しそうですね。」

「じゃ、やめとく?」

「……知りたいです!」


好奇心旺盛なラスカは、ここまできたら聞かずにはいられない。


「まず、この世界のあらゆるモノには、魂があるんだ。魂には二種類あって、清らかな白い魂と、歪んだ黒い魂がある。」


説明を始めるレイの隣で、ルイが白い砂をどこからか持ってきては地面に広げ始めた。


「……ルイ?」

『おてつだい、するー!』

「うん、頼むよ。……それで、ほとんどの魂は器……つまり、肉体に宿っているんだ。」


隣では、ルイがせっせとどこからか持ってきた空き瓶の中に白い砂を入れている。


白い砂が魂で、瓶が器……肉体のことのようだ。……多分。


「宿っている器が壊れるーーつまり、死ぬと魂は解放されて世界に還り、空になった器ーー死骸が残る。ほとんどの形あるモノ、動物とか植物なんかがこれに当てはまるね。」


ルイは瓶を倒して、中の白い砂を地面に広げた。


「それに対して、器を持たず、魂が塊となって存在するモノがある。魂が具現化している存在、とも言えるね。」


今度は砂を固めて団子状にしたものを置いていく。器を持たないが、魂で自らを形成している、ということだ。


「精霊、魔獣、妖精、神獣、魔神とかがそうだよ。言葉を持ち、人の姿に近い程力が強いと言われている。その中で、黒い魂が具現化した魔物をディークリフトは標的にしているんだ。普通の魔物と区別するために、人形ドールって呼んでいるよ。」


人形ドールと呼んでいるのは、強くなればなるほど人に似てくるから。最終的には全く見分けがつかなくなるほどかもしれないね、とレイは言う。


「あ、ちなみに、オレとルイも白い魂だけでできた存在なんだよ。」

「そう……なんですか?」

「だって、オレ、変身できるでしょ?定まった器を持たないから、自由に形成できるって訳。」

「なるほど……。」


分かったような分からないような……。


「分かりました。教えてくれてありがとうございます。」


まだまだ知らないことがたくさんある。魔物に対する考えも少し変わり、もっとこの世界の事を深く知りたいと、ラスカは思った。

まずは、伝説の種族『ラスカイア』のことから……。




ーーー




旅は順調に進んでいき、十数日が経っていた。辺りは草原が広がっており、このどこかに《草原の民》が暮らしているはずだ。冬が近づいている為王都は肌寒かったが、ここはそれほど寒くない。それどころか、日が出ている間はまだ暖かかった。


この日は、ディークリフトも同行していた。魔道具の鍵が完成したので、気晴らしに来ている。


穏やかなそよ風の中のんびりと進んでいると、ルイが一人違う方向へと歩き出す。レイがそれを見て、ルイの後に着いていくようにラスカに合図した。


「ルイは草原の民の居場所が分かるんですか?」

『わかんない。でも、あっち、だれかいる。』

「ルイには魂が見えるんだよ。オレには見えないけど。」

『でも、れい、どーるのにおい、わかる。』

「そうだね。オレは匂いで分かるんだった。」


そんなことを話していると、遠くに集落のようなものが見え始めた。あそこに、きっと草原の民が……


「止まれ。」


突然野太い声が聞こえ、四人は足を止める。近くの背の高い草むらの影から、一人の男が出てきて彼らの前に立ちはだかった。


「この先は通るな。」

「あの、草原の民の方ですか?実は、聞きたいことがあって来たんですけど……」

「なんだ。」

「空の民のこと何ですけど、どんな人なのか詳しく教」

「空姫様のことか?!」


ラスカの言葉を遮り、男がすごい剣幕で叫んだ。ルイがささっとレイの背中に隠れる。……かわいい。

ほのぼのとした気持ちになるラスカだったが、男の警戒心が強まっているのを感じ、彼に目を向けた。


「お前達が何者かは知らんが、この先を通す訳にはいかない。引き返すか、この草原を迂回して進め。」

「人の話を聞いているのか。俺達は、草原の民に話を聞きに来たんだ。集落に入れたくないならそれで構わないが、空の民の事を」

「お前達に話すことはない。空姫様の事をどこで知ったか知らんが、帰るんだな。」


ディークリフトでさえ言葉を遮られて、彼は不機嫌そうに男を睨む。

男はその視線をどう受け取ったのか、腰に下げていた剣を抜き四人に突きつけた。


「話の通じない奴らだ。仕方ない、実力行使でいく。」

「話が通じていないのはそっちでしょ?」


レイのぼやきを無視し、男は懐から笛を取り出すと強く吹いた。


ピイイイィィィィィィイイッッッ………!!!


『なんか、たくさんくるー。』


いくつもの人影がこちらへ向かってくるのを見て、ルイだけが呑気にそんな事を言った。


「「「はぁ……」」」


その他三人のため息と共に、草原を風が駆け抜けていった。




☆★☆★




見渡せば、すぐに何人もの男達に囲まれてしまっていた。


相手を子供と見ているからか、数人が剣を片手に威嚇をしているだけなのだが、誰も怯まないのをみて動揺している。

確かに、動じないレイとルイは端から見ると違和感しか感じない。見た目はまだ10歳くらいにしか見えないのだから。


「おじさん達、もうちょっと冷静になれないの?」


しまいには、レイに呆れられる始末。


「うるせぇ!痛い目に遭いたくなければ帰れ!」


最初にいた男が、剣を振って見せる。ディークリフトが「仕方ない」と呟いた。


「向こうがその気なら、こちらも実力行使でいく。」

「え……ちょっと、ディークリフトさんっ?!」


ラスカが止める間もなく、ディークリフトは氷の玉を男達のすぐ近くに放ってしまった。

レイが慌てて彼を見上げる。


「ディーク?牽制するだけだよね?大怪我とかさせないよね?」

「当たり前だ。怪我をさせない保証はないが。」

『うわぁ……おじさんたち、にげてー』


なんだか訳が分からなくなってきた。


「ちっ……魔法かっ」

「ならこっちも!翠のツル!」


男達に火をつけてしまったのか、相手も魔法を発動する。四人の足元から草が伸びてきて触手のようにうごめき始めた。


「鬱陶しい。」


ディークリフトが足に絡もうとするそれら全てをみるみるうちに氷づけにしていく。呆気にとられる男達を尻目に、ラスカが大剣を鞘から抜いた。


「凪ぎ払います!」


その声に、その他三人はサッと距離を取る。ラスカは腰を低くして、自分を中心に円を描くように剣を横に振るった。


ザンッッッッ!!!


その言葉通り、草が氷を破り再び動き出すより前に、それらは刈り取られてしまった。


「こいつら、ヤバイぞ!」


焦り声と共に、今度は少し離れた場所から草の葉が刃の如く飛んでくる。それは、今まで戦いを傍観していたレイとルイの方にも飛んでいく。

二人にまで攻撃をするつもりはなかったらしく、魔法を発動した男の顔に後悔の色が浮かんだ。


「……こっちにまでっ!」


レイが飛んでくる葉に向かって剣を突きつける。細い剣先から電光がはしり、葉を抹消していった。それだけでは防ぎきれなかった物がいくつかあったが、ディークリフトが素早く防護壁をつくり皆無傷で済んだ。


男達の目が畏怖の感情で染まり、なぜかラスカ達が悪役のような感じがして妙な気持ちになってしまった時、両者の間に割り込むようにして空から何かが落下してきた。






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