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LASKA  作者: 朝舞
第二章 巫女からの依頼
20/55

レイの捜査

投稿後もあちこち改稿しているので、

読み返した方がいいかもしれません。




ラスカは今まで見た事を出来るだけ詳細に話した。別行動をしていた部分はそれぞれが補足しながらレイに説明する。


「キットとゴートは肥料を調べていたんだね。数の割には値段が高いけど、質がいいものとそうでないものでばらつきがあった。」

「そうだにゃ。ゴートが分類分けして、それぞれの数も記録していたにゃ。」


ゴートが取り出したメモを見ながら、レイも頷く。


「それから……昨夜、ケイシーさんは手がかりがないか捜索、ラスカはその間ケイシーの身代わりとして彼女の部屋のベッドの中にいた。


真夜中に窓から不審者が侵入してきたが返り討ちにした。


ケイシーさんは書斎の床下から例の肥料の取引に関する書類を発見、調度その時不審者と遭遇した。不審者は少なくとも二人で、どちらも顔を隠していた。」

「はい、それで当たっています。」


レイはうーんと首を捻ると、ラスカとケイシーを見た。


「なんでわざわざ夜に父親の書斎に忍びこむ必要があったの?」

「父はひどく動揺していたんだ。まともに話せないくらいにな。」

「顔も真っ青でしたし、盗賊がなんとか……って言ってましたから、ケイシーさんのことがとても心配だったんだと思います。」


レイはふーん……と気の抜けた返事を返しながらも、まだ何かを考えている。


「何で不審者は窓を開けて入ってこれたの?鍵をかけなかったとか?」

「ちゃんとかけていたはずだ。そういうことはきちんとするように、ずっと父から……」


レイの言葉に反論していたケイシーは、何かを思い出したのか言葉を切った。レイがすかさず彼女を見る。


「何かあった?」

「いや、父が鍵をかけ忘れるなんてなかったから。引き出しも開けっ放しだったし。つい、そこにあった日記も持ってきてしまった。」


ケイシーは鞄の中から本を取り出す。何気なく後ろのページの方からパラパラとめくり、驚いてぱたんっと閉じてしまった。


「どうしたんですか?」

「父の日記だと思ったが、違うみたいだ。筆跡が全然違う。」

「見せて。」


レイがケイシーの手元からさっとそれを取ると、前の方からパラパラとめくっていく。ラスカも隣から見ていると、最初は几帳面そうな文字が並んでいるが、だんだんと乱雑な、荒い文字に変わっていた。殴り書きされていて、何が書かれているのか分からない程だ。


「これ、オレが調べてみてもいい?」

「構わん。持っていてくれ。」


ケイシーが気味悪そうに本を見ながら言った時、表の方が騒がしくなってきた。


「ケイシー、いるか?教会から牧師様が来ているんだ!」

「ミハエル様が?」


ケイシーが報せに来た髭の親父に確認する。


「確かにミハエルだった。俺は目はいいんだ。何でも、ケイシーを教会に連れ帰ろうとしているようなんだが、お前、何かしでかしたんじゃねぇのか?」

「失礼な。私は何もしていない。」


ただいろいろと巻き込まれてはいるけれど、誰もそれは口にはしない。髭の親父は「本当か?」と念押しをしながらも、特に詮索をしたりはしなかった。


「まだやることがあるし、せめて村の人たちにあれを配ってまわらないと。ミハエル様は、今どこに?」

「領主様の屋敷だ。動くなら今のうちだぞ。」

「分かった。報告ありがとう、親父さん。」

「良いってことよ!頑張れよ!」


髭の親父が畑の方へと向かっていくのを見送りながら、ケイシーはラスカ達に目を向けた。


「このタイミングで教会から代表者が来るなんてな。絶対連れ帰らされる。」

「盗賊の事と不審者の事が伝わったのかにゃ?」

「ケイシーさんは領主の娘で、巫女見習いですからね。安全な場所に、と考えるのは自然なことです。」


一人だけ、レイが何かを考え込んでいたが、ふうっと息をつき顔を上げた。


「何かひっかかる気がするけど……とにかく、調査を続けよう。オレが肥料の取引先の商人から脅……じゃなくて、話を聞いてくるから。キットとゴートはこの依頼の最初の目的の達成を目指してみて。」

「あの畑の復活の方法を考えるんだにゃ?行くよ、ゴート。」


キットはゴートの手を引っ張りながら、さっそく畑の方へと向かっていく。


「ラスカはケイシーさんの配りものを手伝ってきてよ。用事が終わったら、教会まで護衛した方がいい。」


ここ数日、ケイシーは何者かに狙われている可能性が高い。安全な場所に行くまでは護衛する必要がありそうだった。


「私も注意するが……教会までよろしくな、ラスカ。」

「分かりました。」




ーーー




それぞれが役割を決め動き出してさらしばらく経った頃、老人の家に一人の男が訪ねてきた。老人は彼の顔を見ると、目を細めた。


「お久しぶりです。ケイシーはここに居ませんか。」

「居ったが、もう出たぞ。村人達に配りたいものがあると言っておったぞ。」

「そうですか。」


男の声のトーンがかすかに落ちたのを老人は見逃さなかった。老人は細いタレ目を大きくして、じっと男の顔を見つめる。


「せっかく来たんじゃ、入りなさい。」

「しかし……」

「なに、あの子は用を済ませるまで帰ろうとはせんよ。じきに来るじゃろうから待っておればよい。それに……ミハエル、目はぎらついてるし、やつれているようじゃ。詮索する気はないが、親子の会話くらいは、な?」

「……私もまだまだ父には敵わないようですね。」


ミハエルは気まずそうに苦笑いすると、老人と家の中に入っていった。




ーーー




「助けて、い、い命だけはっ……!」

「質問に答えてよ。」


ガクガクと震える小太りの中年男を前に、レイは内心ため息をついた。


ーー『裁きの力』をちょっと出しただけでこの反応とはね。


レイの力は人々から恐れられやすい。悪事に手を染めた者ほどその反応が顕著だ。


冷ややかな目のまま、今度は本当にため息をついた。些細な動作にも男がいちいちビクッとするので、仕方なく少しだけ力を弱めてやる。


「で、どうなの?不正はしたの、やったの?」


どちらも同じ意味でもはや選択する意味もないのだが、男はこくこくと頷いた。


「じゃあ、認めるんだね。でも、不正してることくらいはオレも分かってるから、詳しく話してよ。あと、嘘は通用しないから。もしその時は……」


男がへなへなと座り込み、その股間からシミが広がっていく。


ーーあ、うっかり力を出しすぎた。


レイの目が、強い、冷たい光を放っていた。目を閉じて一度深呼吸をしてから、再び男の方を見る。

あまりの恐怖に失神しているその姿があった。


「……。」

「……ぎゃあああっっ?!」


突き刺さるような視線に身の危険を感じて飛び起きる男に、レイはこめかみをおさえる。


「……早く話してよ。」


それからも男は恐怖とプレッシャーで失神と覚醒を繰り返していたが、レイはなんとか話を聞くことができた。

話を聞き終えたレイが厳しい表情をしているのを見て、男はオドオドとしている。


「あんたの話だと、あの土地の為に使うはずの金は、一部がそいつにまわっているということになる。」


レイはふと、ケイシーから預かった日記を取り出すと、ぶつぶつと呟きを漏らしながらページを捲っていく。


「ケイシーの周りでは、何か、動きがあったはず。……彼女が調査に乗り出したと知ったとしたら……。」


ラスカ達が領地を訪れる数日前の方から、歪んだ文字を読みといていく。レイが日記に集中している間に男がこっそりと逃げて行ったが、そんな事を気にしてはいられなかった。


ーーあの商人は後で捕まえればいいし。それより……


一連の事件に関連しているような記述がなかなか見つからない。日記の日付は、ラスカ達が領地を訪れた次の日……ラスカとケイシーが領主の屋敷を訪れた日になった。


『ケイシーが屋敷に帰ってきた。馬車の御者はあいつが言っていた人物とは特徴が違った。どういうことだ。きちんと任務を全うさせるために雇ったと言っていたはずなのに。でも、まあいい。念のためにあれを準備していたかいがあった。』


領主とは別の誰かが、ケイシーの馬車の御者を雇った。御者の任務といえば、一般的には安全に道中を進むことだろうが、雇った御者は最初とは違う別人で、途中で盗賊に襲われてしまった。


念のために『あれ』……ゴートのことだろうか。ゴートを付き添わせていたから、良かった………?


日が暮れ、辺りは暗くなり始めてきた。レイの鼻腔を、魔物の嫌な匂いがくすぐる。夜は、魔物が活発になりやすい。


レイは、ハッと日記を見た。今なら、あの文章から別の解釈ができた。


「やっぱり……彼はこの事件に関わっている。」



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