ユニの思い
更新は、大体週一くらいになりそうです。
ユニには、知らない『自分』の記憶があった。
それはユニが『ユニ』になる前のもので、おそらく前世の記憶というものなのだろうと思われる。
ユニは、前世で交通事故で死んだ。
享年30歳。ごく一般的なサラリーマンで、結婚はしていなかった。
ただ、離れて暮らしていた父と母の仲は凍っていて、よく喧嘩していた。
当然、そんな両親なので親から子への愛情はほとんどもらえなかった。
兄弟も居なかったため、頼れる人も居ず、軽い人間不振だった。
その日は悪友と飲みに行って愚痴に付き合っている内にかなり酔ってしまい、帰り道の途中で通る十字路で横から猛スピードで突っ込んで来た自動車に跳ねられて、そこで記憶は止まっているのでおそらく即死したのだろう。
そして、気がついたら鬱蒼とした森の中で、白い額から角が生えている綺麗な馬、前世の国日本で言うところの一角獣のような生き物がユニを見下ろしていた。
状況がわからなくて、動揺の余り硬直してしまっていたら、その一角獣が心配そうに話しかけてきた。と言っても直接口で話すのではなく頭に直接言葉を伝える『念話』でだが。
《ぼうや、どうしたの?体が痛いの?》
よく状況はわからないが、わかっていることもあった。
自分は、どうやら色は違えど一角獣であるということ。(自分がぼうやと言われた時にチラッと自分の体を見たら、蹄と艶やかな馬の毛並みが見えた)
目の前の、よく見たら衰弱している白い一角獣は、自分の母であるらしいこと。
あとは、一角獣の体に本能としてある知識があり、その一つでこの母は、一角獣は生まれたらすぐに意識がはっきりして拙くとも念話が出来るのに、何のアクションもない自分を心配しているということだ。
ならば、衰弱しているのが心配であるし、何か話さなくては。
《大丈夫。母様》
《そう?…うっ、》
母は、少し自分が念話をしたことでほっとした様子だったが、すぐに苦しそうに息を詰まらせ、ゼイゼイいうと、地面に倒れ込んでしまった。
《母様!?どうしたの》
《う…ごめんなさい、ぼうや。母はもう持たないみたいです。ひとりにしてしまう母を許して…》
さっきよりさらに動揺してきて、母の言葉に恐怖が込み上げてくる。
この母はもう亡くなるのが、一角獣の相手の魔力を感じる能力でわかってしまい、母のただでさえ少なくなっていた魔力が消えていくのがわかった。
《母様!》
《ぼうや…よく聞いて。あなたは、同族を頼ることは難しいでしょう。あなたは、美しいけれど、漆黒の毛並みだから。だから、あなたが生きるために、食べられる植物や木の実の知識を、渡します》
そう言うと、母は自身の角に光を灯らせて、ユニの角にそれを渡した。
そうすることで、知らない知識が入ってくる。
森の食べ物や、最低限の危険の知識も入ってきた。
その中のもので、白や薄い灰色が一角獣の毛並みの色としては一般的で、黒い毛並みの一角獣――ユニは、忌まれる存在であることもわかった。
それらの知識が全て入ると、母は最後の力を振り絞るように話してくる。
《ぼうや…可愛いぼうや。母はあなたが心配です。でも、もう側にはいられません…だから、せめて最後に、あなたの名前を伝えます。――ユニ。あなたは、ユニ。意味は、感謝。あなだが生まれて、母は嬉しい。生まれて来てくれてありがとう…私のユニ…》
そう言うと、母は力尽きて、動かなくなった。
自分は…ユニは、この母との記憶は、今会話した分しかない。
ユニを産んで、母はすぐに死んだ。
でも、母がユニを愛してくれていたのは、充分わかった。
前世の親からは愛してもらえなかったから、余計にそれは感じられた。
たから、母の死が、悲しくて悲しくてしようがなかった。
どうやら事故死した後に一角獣としての生を受けたらしいユニは、普通の赤子のように生理的な産声で泣くのではなく、母の死が原因で大声をあげて泣いた。
それから数年間は、母のくれた知識だけでユニは生きた。
母の心配したように、同族はユニを忌み子と呼び、冷たかった。
そして、一角獣は他の生き物と馴れ合う種族でもなかったので、ユニは孤独だった。
でも、母が愛してくれたことが、ユニを生かしていた。
そんなある日、ユニは偶然森の中でも気性が荒く、狂暴なムーンベアの群れに遭ってしまい、必死に逃げたが敵も足が早く、全身に怪我をしてしまった。
それでもなんとか逃げ切り、息も絶え絶えな時になっていた時だった。
シャンランとニールに出会ったのは。
始め、ユニは怪我で弱っていたため、どこか落ち着ける場所を探してさ迷っていた。すると何か気配がしたので無意識にそちらへ向かって歩いて、気配が目前まで来たところで力尽き、気絶してしてしまった。
次に目が覚めると、小さな人の子が二人、難しい顔をして何かを話し合っていた。
そういえぱ、ユニはかなりの怪我をしていたはずなのに、手当てをされている。
しかも、口の中に苦い薬草特有の味がして、自分で食べた記憶が無いので、誰かが食べさせてくれたとしか考えられない。
同族ではないと思う。ユニは忌まれているから。
他の森の生き物も、知能が高い生き物はあまりいないし、交流も無いので違うと思う。
だとしたら、可能性としては目の前の二人が一番高い。というか、それしかないとだろう。
でも、ユニの中の常識や知識が、人の子がわざわざ一角獣を助けるメリットはないと告げていた。
一角獣の体のあらゆるパーツは薬になったり魔力を利用出来たりという理由から狙われやすい。
独りで生きてきたユニは人間に出会ったのはこれが初めてだが、昔は特に人間に一角獣は乱獲されたりしていたようなので、本能的な警戒心がある。
一角獣の体が目当てなら、むしろ死体の方が捕らえるのが楽だし、本当にユニを助けた理由がわからない。
前世の日本でなら、平和な世界だったのでただお人好しなんだなで済んだかもしれない。
でもこの世界は少なくとも、ユニの知識の範囲では優しくない。
なので、警戒をしながら二人の人間に話しかけた。
《…誰?》
そうして振り返った二人は驚いた後に、安堵の表情を浮かべていた。
まず、相手に気付かれないように、内心でかなりユニは驚いた。
寝起きの頭がはっきりしてきて、二人の子供の異質さが伝わってきたからだ。
とくに顕著なのが、長い光で金にも見える茶の髪の少女だ。
綺麗な青い瞳に、前世でも見たことがないような作り物めいた美貌にも驚いたが、相手の魔力をかなりの精度で感じることの出来るユニは、同族の一角獣よりも遥かに高く、純度の高い魔力の残しが少女にあることに驚いた。神がかっている、という表現が当てはまるようなものだったのだ。
残し、と言う理由は、上手く言えないが、さっきまでは使っていた力の名残をまとわっているのうな感じで、現在の少女こらはその残し意外の魔力は生き物が最低限持っているものしか感じられない。
それと、その隣にいる黒に近い茶髪にユニと同じ黒い瞳の少年は、一見ただのけっこう整った子に見えるのだが、よく魔力を感じようとすると、何かを秘めているような、封じているような気配がするのだ。それも、おそらくかなりの力を。
とにかく、そんな二人が居たので、人間だということも手伝ってかなりユニは警戒した。
いやだこの二人、チートっぽい。なんて冗談ではなく真剣に思うくらい、警戒した。
しかし、側に来ないで欲しいというユニの思いが伝わったのか、二人の子供は離れたところから丁寧に経緯を説明してくれた。
やっぱりというか、怪我の手当ては二人かしてくれたようだ。
子供は女の子がシャンラン、男の子がニールと言うらしく、小さな子供の割には賢そうだった。
シャンランとニールいわく、ユニのことはこれから二人が預かり、気を使ってか、多分忌み子とか迷信とか他の一角獣が言ってたのを省略して説明してくれた。(途中、一瞬悲しそうな顔をしていた)
話を聞いている内に、態度や表情、あとは感じる魔力やらでこの二人はもしかしたら信じられるかもしれないと思った。
二人には、悪意が感じられない。ユニは伊達に忌まれてきていないので、そういった感情に敏感だった。
なので話が終わったら、素直にわかったと頷いた。
《ユニ、群れに居ても迷惑しかかけれない。だから、人の子は気にくわないけど、あなた達に着いていく》
言い方が悪いのは勘弁して欲しいと思った。独りだとどうしても心が捻れてしまう。
そう思っていると少女、シャンランが顔を歪ませて突然ユニを抱き締めてきた。
びっくりした。悪意には慣れていても、こういったことには慣れていなかった。
生まれて来てから、母にさえすぐに亡くなってしまったために、抱き締められたことはなかった。
さらに、本能が人への警戒心を出して、すぐに振りほどこうとしたが、少女は根気強く、優しく頭を撫でてくれた。
それが温かくて、なんだか心が締め付けられて、一滴の涙を流してしまった。
ああ、自分は愛情に飢えていたのかもしれないと、感じた。
しばらくそうしていて、もういいよ、と離してもらってから、今後の事を話し合った。
話していると、やっぱり人間は怖いやつもいるんだな、と思った。
しかも黒い一角獣は特に捕まると大変なようだ。
正直コレクトされたくないし、研究もされたないので、しっかり隠れる必要がありそうだ。
その時、一角獣の知識で、人は魔力が見えない場合が多いと思い出した。
二人に確認すると、少なくともこの辺りでは見える人は居ないらしい。
ならば、見た目だけでも変えたらいいのではないだろうか?
そう思って、ユニは人型に姿を変えた。
それから時が経ち、シャンランは12歳、ニールは11歳になった。(ユニは8~10歳くらい)
ユニは孤児院で、沢山の愛情をもらえた。
シャンランは大好きになったし、ニールは本能的に男なのでシャンランよりは好きになれないけど、友達になれたと思う。
皆、優しかった。
表には出さないけど、幸せな日々だ。
そんなある日、シャンランとニールから、真剣な顔で話しかけられた。
その前の日に、感じたことのない魔力が来たのを感じていたのでその事かなと思っていたら、とんでもないことを言われた。
昨日、フードを被った女性が来たこと。
神話のこと、転生した神のこと。
そして、これからのこと。
それを聞いて、ユニはすぐに協力すると決めた。
そう言うと、二人はありがとうと、無理はしないでねと言ってきた。
大切な二人だ。困っているなら力になりたい。
二人のためなら、協力は惜しまないつもりだ。
ユニは、話が終わると、これからの魔力の訓練をもっと頑張ることを決意した。




