心を無くした天使の涙
ある所に、心をなくした天使が居ました。
心をなくした天使は、毎日毎日、何もない日々をただひたすらに過ごしていました。
天使には、何もありませんでした。
ある日、天使の元に悪魔が現れました。
悪魔はニヤニヤ笑いながら、天使の羽根を奪いました。
ですが、天使は何も言いませんでした。
何も言わず、奪われた羽根を見つめていました。
悪魔は何だか申し訳なくなって天使に聞きました。
「泣かないの?」
天使は、小さな声で言いました。
「泣けないの」
悪魔は、天使の傍に居る事にしました。
数日が経った頃、二人の元にとても美しい蝶が現れました。
蝶は笑いながら二人の周りをくるくる回り、悪魔の鼻へちょこん、と止まりました。
鼻に止まった蝶を振り払うと、蝶はまた笑って悪魔の周りをくるくる回りました。
悪魔がムキになって怒っていると、天使がクス、と笑いました。
悪魔はとっても驚いてそれでもとっても嬉しくて、一緒に笑いました。
また数日が経った頃、二人の元に青い鳥が現れました。
青い鳥は二人の傍に座り、とっても美しい歌を聴かせました。
すると天使は、とても目を見開いて、悪魔に一言言いました。
「驚いた」
悪魔はまた嬉しくなって、二人と一羽で、夕方過ぎまで歌いました。
その日の夜。天使は月を見ていました。
どうかしたの、と悪魔が聞くと、天使はとっても悲しい顔で言いました。
「怖いの。とても怖い。何故かは分からないけど」
悪魔は天使の頭を撫で、それから一晩中傍らで話をしてあげました。
その次の日の事です。二人の前に、神様が現れました。
神様はとても厳しい顔で天使に言いました。
「天使と悪魔が一緒に居るとはどういう事なのだ!」
「彼は、とても優しい方です」天使は、ガタガタと震えながら言いました。
「お前の羽根を奪ったのはコイツだ、それでもか!」「はい、優しい方です」
天使の言葉に、神様は激しく怒りました。
「お前は神を冒涜した!お前を死刑とする!」
神様はその大きな剣を振りかざしました。
「危ない!」
悪魔は大きく叫んで、天使を庇いました。
天使の目の前で、悪魔は、倒れました。
天使は冷たくなっていく悪魔を抱えました。
「どうして?」
こんな時でも、天使は泣けませんでした。
「どうして、死なないで」
天使は、泣けませんでした。
「私はあなたに沢山の物を貰った。私はまだ何も返せていない」
悲しいのに泣けないまま、天使は言い続けました。
苦しいのに泣けないまま、天使は言い続けました。
すると悪魔は、ふわりと笑いました。
「アンタと一緒に楽しく過ごした日々。これがアンタから貰ったお返しだよ」
そう言うと、目を閉じて、また笑って、そして二度と動きませんでした。
天使は、泣きました。
天使は、ずっとずっと泣き続けました。
天使は、涙が枯れるまで、ずっと泣き続けました。
課題用に執筆したものです。
タイトルがネタバレ。