第6話
(ん? 何だ? これって、あぁ、ティアナか)
フィルは意識が朦朧とする中、透き通るような歌声が聞こえ徐々に意識が覚醒し始めると、
「へぇ、これがティアナの能力なの?」
「あぁ、彼女の歌には治癒や様々な支援の力があるんだ。まぁ、フィルが言っていた事だけどな」
歌声の主はティアナであり、彼女の歌声を聞いてフィリアが驚きの声を上げるとジオは目の前でフィルの傷が癒されている姿に感心したように言うが仕組みは理解していないようでフィルが彼女の能力に気づいたと話す。
「……あぁ。歌の種類によって支援の能力も違うんだがそれの識別も本人はできてないようだけどな」
「フィ、フィルさん、大丈夫ですか!?」
フィルはまだ意識は覚醒しきってないためか頭を押さえながら寝かされていたソファーから上半身を起こすとティアナがフィルに気づき、歌を中断して彼に駆け寄り、
「あぁ……しかし、フィアには1撃を喰らったところとは違ってなぜか妙に頭が痛いんだが」
「キ、キノセイデスヨ。キット、フィアさんにぶっ飛ばされた時に頭をぶつけたんですよ」
「まぁ、気にするな。無事だったんだし、それより、ティアナさん、フィルの傷はまだ癒えてないみたいだから、続きを頼めるかい?」
「は、はい……」
「いや、必要ない……すべての生きとし生けるのもの神の祝福を傷を癒す奇跡を与えたまえ。ヒール」
フィルは頭が痛むようで頭をさすりながら言うとティアナはフィルから視線を逸らし、フィルはティアナが気絶した時に行った事を知らないため首を傾げるとジオは苦笑いを浮かべながらティアナにフィルの治療の続きを頼むとティアナは目を閉じて治癒の歌を再開させようとするがフィルは彼女の歌を静止すると魔法の詠唱を始めると彼の身体を温かい光が包み込んで行くが、
「ストップ、せっかくのティアナの歌なんだから、あんたのつまらない治癒魔法より、ティアナの歌の方が良いわよ」
「……邪魔をするな」
フィリアはティアナの歌声が気に入ったようでフィルの治癒魔法で一気に傷を治すよりはティアナの歌を聞いていたいと言ってフィルの治癒魔法を邪魔するがすでに詠唱は終えているため、フィルの傷は塞がって行く。
「もう。何してるのよ。もったいないわね」
「……もったいないじゃないだろ。ティアナの歌は確かに特殊な力なんだが……」
「何かあるのか?」
「まだ、何もはっきりしていないんです。能力の意味やその代償も」
フィルの身体の傷が完全に癒え、光が消えて行く様子にフィリアは不満げな表情をするとフィルは先ほどまで痛んでいた個所の状況を確認しながらティアナの歌声には何かあるのか、何かを説明しようとすると簡単にティアナにフィルの治療を頼んだためかジオは眉間にしわを寄せフィルに聞き返すとティアナは苦笑いを浮かべながら自分の能力については何もわかっていないと言うと、
「何もわかってないって事?」
「あぁ……以前、読んだ魔法書に『呪歌』についての記述を読んだ事はあるんだがその中には支援に関する呪歌は数多く存在していたが治癒に関するものは何1つとして記載されていなかったんだ」
「それは、ティアナの歌声が特殊って事?」
「だから、学園が特待生としてティアナを受け入れたんだ」
フィリアは首を傾げながら聞き返すとフィルはティアナの歌は呪歌に分類されるとは思うが自分の持っている知識の中でも彼女の能力は異質であると言い、その治癒の呪歌が国の人間でもないティアナを学園に招き入れた理由になっていると言う。