第66話
「ああ、個人的にはいくつか試したい魔法もあるんだが、実りの時期も考えると時間もかけてられないからな」
「ティアナの村の事もあるからな」
フィルは時間をかけていられないと話すと魔法の詠唱を始め出すとフィルの身体の周りには魔力が集まり始める。
「それだけじゃないがな」
「フィル、大がかりな魔法っぽいけど、魔力は足りるの? ティアナの支援はいらないの?」
「そ、そうです。あ、あの。私も歌います」
フィルのまとう魔力の高まりにフィリアはティアナの呪歌を使う必要性を聞き、ティアナは呪歌を歌い出そうとするが、
「……必要ない。ティアナの呪歌は対象を決める事ができないからな。魔光石の魔力にも影響が出る」
「そ、そうでした」
「それに必要なら、こいつらに魔力を貸して貰えば良い」
フィルはティアナの行動を静止し、ティアナは慌てて両手で口を押さえる姿にフィルは、くすりと笑うとフィルの声に反応するように空中に小さな光の球が舞う。
「フィルさん、これって」
「解放した精霊達が力を貸してくれてるって事か?」
「……そう言う事だ、ティアナ、呪歌を歌う必要はない心を落ち着けて精霊達の声を聞け」
魔光石に捕えられていた精霊達は仲間達の解放のために力を貸そうとしているようであり、フィルは精霊達から魔法使いであるティアナに何かを教えようと声をかけ、
「は、はい」
「ねえ。ジオ、精霊の声って聞こえる?」
「少しはな。俺はお前と違って少しは魔法を使えるからな」
「な、何よ。それくらい、私にだって……」
ティアナは大きく頷くとフィルの言う通りに落ち着こうと大きく深呼吸をし、心を落ち着け始めようとする姿にフィリアは精霊の声など聞けるのかとジオの腕を小突くとジオは苦笑いを浮かべ、フィリアは自分だけ精霊の声が聞こえないためか意地になったようでティアナのマネをしようとするが、
「……無理だろうな」
「……フィアに心を落ち着けるなんて無理だろ」
フィルとジオはフィリアには無理だと言い切り、
「あんた達、その言い方は何よ!! 絶対に精霊の声を聞いてやるわ」
「……この時点でティアナと違うな」
「あぁ」
フィリアは2人の言葉が頭にきたようで2人を指差して吠える隣りでティアナは集中し始めてきているのか、フィリアの声は耳に届いていないようであり、
「……やっぱり、魔法の方が才能がありそうだな」
「失われし治癒の呪歌を歌う者か」
「失われし? お前、ティアナの呪歌の事を知ってるのか?」
ジオはティアナの魔法の才能に感心したように頷いた時、フィルは小さな声でつぶやき、ジオはその言葉が聞こえたようでフィルに声を開ける。
「少しだけだ。呪歌に関する書物は少なくてな。調べきれていない。それより、そろそろ、放れてくれ」
「あぁ。フィア、無駄な事をしてないで下がるぞ」
フィルはこれ以上は話す事はないと言いたげにジオに放れるように言うとジオはフィリアに声をかけ、
「無駄って何よ!!」
「良いから、下がるぞ。ティアナも」
「は、はい」
3人はフィルから距離を取るように後ろに下がる。