第63話
「ち、違うんですか?」
「……違う。だいたい、いや、説明は今度だ」
「フィルさん、今、どうせ、私は理解できないと思って止めましたね」
ティアナはフィルの様子に遠慮がちに聞くとフィルは説明を始めようとするが、今日までの流れで説明するだけ無駄と判断したようで説明を取りやめる。
「……良いから、黙っていろ。黙っていないなら、もっと近くで見てくるか?」
「え、遠慮します」
フィルはこの場で待っているのも飽きたようでドラゴンとの戦闘を近くで見てくるかと聞くがティアナは大きく首を横に振り、
「だいたい。ドラゴン相手に私みたいなのが行っても足を引っ張るだけじゃないですか」
「それは行ってみないとわからないだろ」
「わかります。無理なものは無理です!? ま、待ってください!? 引っ張らないでください!?」
「何事も経験だ。行くぞ。ここでなれておけば、ちょっとした事で動じなくなる」
フィルはティアナの経験になると言ってティアナを引きずって歩きだし、ティアナは首を振っているが抵抗むなしく引きずられて行く。
「ん? フィルに……生まれたての小鹿?」
「確かに足が震えてるからな」
ジオがドラゴンの尾をかわして地面に着地するとドラゴンに怯えているティアナの震えように首を傾げ、フィルはジオの例えに納得したようで頷くが、
「ちょ、ちょっと、ジオさん、こんなところで遊んでて!?」
「大丈夫、大丈夫」
ティアナは続けてジオに向かってドラゴンの尾が襲ってくる様子に顔面を蒼白にして死んだと思ったようで顔を伏せるがジオは気にした様子もなく笑った時、ドラゴンの悲鳴とともに何もなかったはずの空間でドラゴンの尾が弾かれる。
「相変わらずの防御魔法だな」
「いや、俺の魔法じゃない。あれの影響だ」
「あれか……効果を知ったら、フィアがうるさくないか?」
「知らん」
ジオはフィルの防御魔法の効果は絶大だと言うがフィルはティアナが首にかけている首飾りを指差し、首飾りの効果だと話すが、
「な、何があったんですか? な、何で、何とも無いんですか?」
「いや、それの効果みたいだぞ」
「これ? ……本当ですか? ど、どんなマジックアイテムなんですか!?」
「最初から、言ってるだろ。攻撃を防ぐと」
ティアナはドラゴンの声が響きはしたものの攻撃を受けなかった事を理解できないようで遠慮がちに2人に聞くとフィルとジオは彼女の首飾りを指差し、ティアナは想像からかなり吹っ飛んだ防御力に顔を引きつらせる。
「それで、こんな近くまできて、あれか? ドラゴンへのドキドキを恋愛感情へ替える吊橋効果? 必要ない。必要ない。すでにティアナは」
「ジ、ジオさん、何を言うんですか!?」
ジオはティアナをからかい始めるとティアナは顔を真っ赤にして慌て、ジオはその様子に苦笑いを浮かべると、
「ティアナ、首飾りの威力もわかったわけだし、安心して見てな。フィル、援護をよろしく」
「あぁ……」
ジオはドラゴンと戦ってくると言い、地面を蹴って駆け出し、フィルは魔法の詠唱を始める。