第58話
「準備は良いな。始めるぞ」
「は、はい」
ジオとフィリアの小競り合いが終わるとフィルは魔獣を呼び出そうと魔法の詠唱を開始する。
「ティアナ、あんまり気を張らなくて良いって、あんまり強いようだったら、フィルも数を調整するとかするでしょ」
「そう言う事だ」
「……失敗したな」
ジオとフィリアはティアナを落ち着かせようと声をかけるがその時にフィルの口から『失敗』と言う不吉な言葉が漏れる。
「フィ、フィルさん、失敗ってなんですか!?」
「ん? 少しずつ、召喚して行こうと思ったんだが、どうやらいくつか連動していたみたいでな。まぁ、直ぐに気づいたから、全部、召喚される事はないがな」
「……いきなりかなりの数が召喚されるわけね」
「そう言う事だ」
ティアナはフィルの言葉に慌てて聞き返すがフィルは落ち着いた様子で自分の失敗を話すと上空には10個の魔法陣が浮かび上がり、
「レベル的にはどんな感じだ?」
「魔法陣を見る限り、上位種2匹、中位種3匹、下位種5匹と言った感じだろう。まぁ、上位種は直ぐに出て来れないからな。下位種から駆逐して行けば問題ない」
「面倒だな」
ジオはフィルの失敗を責める事なく、フィルに魔獣の強さを確認するとフィルは浮かび上がっている魔法陣から呼び出される魔獣を予想しているようである。
「まぁ、一先ずは下位種から狩って行くか? フィア、行けるな?」
「当然、フィル、あんた、ティアナをしっかり守りなさいよ」
「別に上位種を言っても大した相手ではないだろ」
ジオとフィリアは魔法陣から小さな魔獣が出始めてきたのを見てフィルにティアナを任せて駆け出して行き、フィアは上位種の魔獣2匹程度では相手でもないと思っているようで表情を変える事はない。
「あ、あの。フィルさん、2人は大丈夫なんですか?」
「問題ない。下位種や中位種なら、俺達が何かをする必要もないしな。ただ」
「ただ?」
「少しくらいは時間を稼ぐか……」
ティアナは駆け出して行った2人を心配するようにフィルに聞くとフィルは上位種以外は2人が止められる事はないと言い切るが何かやる事があるようで目を閉じ、魔法の詠唱を開始し始め、フィルの身体は魔力が集まっているのか身体は青白い光をまとい始める。
「フィルさん?」
「……黙っていろ。上位種が魔法陣から出てくる時間をずらすだけだ。2匹同時に相手をするのは少し骨が折れるからな」
「そ、そんな事ができるんですか? って、そんな事が出来るなら、一旦、全部戻してください!!」
「何を言ってる。結局、全部、どうにかしないといけないんだ。戻す意味がないだろ」
「……本当に大丈夫なのかな?」
フィルは召喚の魔法陣の発動を送らせると言い、ティアナは体勢を整えるのに魔獣召喚を止めるように言うがフィルは落ち着いた様子で魔法の詠唱を続けて行き、ティアナは不安なようで大きくため息を吐くが、
「ジオ、どっちが多くの魔獣を倒すかで勝負よ!!」
「……いや、そう言う事を言っているヒマがあるなら、手を動かせよ」
「……」
前線で戦っているジオとフィリアには緊張感はなく、ティアナは顔を引きつらせる。